第四話 異世界と狩り
「行先とあなたの能力、目的はこちらできめさせていただきます」
「え?」
??????????
「ど、どういうことですか? それはこっちが決められるんじゃないんですか?」
「ふふ、安心してください。使えない能力とかにしたりはしませんから」
いや笑いごとじゃねえだろ爺、こちとらなんのために異世界に来たがってたと思ってんだ。
「い、いやいやいやそういうことじゃなくて……」
「そうですねぇ、実はこちらの不手際で本当は17歳でこちらに来てもらうはずだったのですが、バイトの子がミスをしてしまいまして……1年後にあなたをとばすことにしてしまったんです。」
は? バイト? なにここいつからコンビニになったっけ?
「とはいっても適正年齢を過ぎてしまったのならこちらとしても規則がありますのであなたの異世界行きは無かった事にしようと思ったのですが、神があまりにも落ち込むあなたを見て特例で18歳のあなたをこちらに招いたというわけです。分かったら神の御慈悲に感謝してさっさといけや」
いやそっちのミスだから当たり前じゃね? ていうか最後らへんめっちゃ口悪かった気がするんだけど!? ……とはいっても折角異世界に行けるチャンスだしな…………悪いようにはしないって言ってくれてることだから別にいいか。
「分かりました。本当に悪いようにはしないんですね?」
「はいぃ! ではよい異世界ライフを~」
「え、これだけ?もう?」
「はい、どうかお達者で」
するとまた白い光があたりを包み込んだ。
「死にはしないですよ、多分・・」
小声で小太りの爺がなにか言っていたように見えたけど分からなかった。
そこで意識は途絶えた。
「兄ちゃん! 兄ちゃん!」
なんかまた違うおっさんの声が聞こえる……………今日はおっさんデーか何かなのか?
「ここは?」
肩を揺さぶられながら目を覚ますと見知らぬおっさんと二人きりだった。
「酒場だよ、ほらさっさと起きて帰ってくれ、もう店じまいだよ」
そう言いながらテーブルを拭き出した。
酒場? そうか俺異世界に来たんだっけ、でもなんで酒場? そういえば目的も聞いてないし……
「あの、ここはなんて言う国なんですか?」
「あ? あんたまさか転移者か?」
「え、あ、はいそうですけど」
普通に転移者とかいうワード出てきたな、やっぱりあのハ〇ーワークにもあんなに人がいっぱいいたから転移とかは当たり前なのだろうか。
「ここでは転移者は普通なんですか?」
「ああ、まあたまにいるな、異世界から来たっていう奴が後になって英雄になったりすることも多いいしな、こっちとしても困りごとを解決してくれるからもっと来てほしいくらいだがな、ハッハッハ」
そ、そうなのか。
そうだ! 金! まずはこの国のお金を手に入れないとな
「あの~、俺この国のお金とか何も持たされないで転移させられたんですけど、なにか簡単に手に入れる方法とかないですか?」
「そりゃあ困ったな、そうだなぁ~簡単に手に入れられるといえばやっぱり剣闘武会だな」
酒場のおっちゃんは腕を組みしばらく考え、話し始めた。
「剣闘武会?」
「ああ、剣闘武会ってのはその名の通り剣技や武技を競い合う大会だ。優勝者は一生遊んで暮らせえる程の大金を得ることができる」
そんなの戦い初心者の俺がでたら一瞬でつぶされるわ!
「戦いの経験無いのでもっと簡単なのをお願いします……」
「んだよ女々しいな、あんた本当に異世界からきたのか? 異世界から来た奴らはみんな最初から飛びぬけた力を持ってると聞いたんだがな」
んなこと言われても何も説明されてないし、もし力があると信じてでてみて『ありませんでした』じゃすまないだろ。
「そうだなあ、国を出てすぐそこらへんなら低級モンスターがいるからそいつを倒しまくれば1日で10日暮らせるほどにはなると思うが……」
おっ最初からそれを言わないなんて意外と意地悪さんなんだなぁ~おっさん。
低級モンスターくらいなら今の俺でも流石に狩れるはずだ、よし決めたモンスターを狩ろう。レッツ一狩りだ。
「じゃあモンスター狩ってきます! 国からでるにはどういけばいいですか?」
「あ、ああ国からでるにはここを出て右にまっすぐいけば出られるが……」
「そうですか! 色々お世話になりました。早速行ってきます!」
「お、おおい! 武器は? 夜は魔物が集団で動いてるから行くなら朝のほうが……」
おっさんに礼を言うと俺は飛び出した。
異世界にこれたのがうれしかったのか、おっさんがまだ何か言っているのを聞かずに行ってしまった。
この忠告が俺の運命を左右するとは露知らず、俺は街を駆け抜けた。
……………
「何も考えないで、門から出て近くにあった森の中に入ってきてしまったが……考えてみると俺武器持ってないし、帰ろうと思っても道がわからなくなってしまった……」
泣きたい、異世界ライフがようやく始まると思ったら夜の森で武器も持たずに迷子とか……
「と、とりあえずそこらへんの木の棒でも拾っ」
『ガサ』
草むらから何か聞こえた。
「モ、モモモモンスターか!?」
暗闇に目を凝らすとそこにはウサギが一匹、草を食べていた。
「な、なんだよウサギかよ~、これなら木の棒でも十分倒せるじゃん」
そっと近づいて木の棒を振りかざして殴りつけた。ウサギ型のモンスターは甲高い鳴き声を上げて絶命した。
少し可哀そうではあるが、生きるためだ。
ごめんな。
すると目の前に銅貨一枚がどこからともなく落ち、目の前に数字が浮かび上がった。
「なんだ? この数字、経験値か………か?」
そしてもう一つ。左上のほうにショウと表示されていることに気がついた。
「こんなふうに入手できるのか、ん? ショウ? これが俺の名前か? ていうか名前まで決められてるんだな……まあいいけど」
すると後ろから草むらが揺れる音が聞こえた。
「おっ、もう一体か」
音のする方向に振り向き、木の棒を構える。
左の方からも草むらが揺れる音がした。
「も、もう一体か」
どちらにも反応できるよう、二つの音の発生源と自分とで三角形になる位置に立ち、構えた。
すると右のほうからも草むらが揺れた。
「え?」
よく見ると赤く光るたくさんのものがこちらに向いている。そのうちの一匹と目が合うと甲高い鳴き声を上げ一斉に襲い掛かってきた。
「ぎやあああああああああああああああ」
俺は自分でも驚くくらい甲高い声で、女の子のような奇声をあげて全速力で走りだした。




