第三十九話 美味と票
魔物の肉。それは今まで臭みが独特で料理には不向きとされ、誰も手をつけてこなかった。
しかし、エリザベスはその理屈をまるで普通かのように壊し、料理界に新たな光を生み出したのだ。
「「「「う、美味ぁぁぁ」」」」 「ムシャムシャ」
四人は同時に歓声を上げた。
「魔物がこんなに美味しいなんて……流石エリィ私は信じてたよ!」
「いや、さっき、めっちゃ疑っていたじゃん……」
「ん? 何かな?」
「い、いや別に……」
これ以上言ったらハーレム計画をバラすぞとでも言うような表情で微笑んでいたから口を閉じた。
「本当に驚いたわ。正直、成美さん料理を味わった後は勝ちは成美さんと思っていたけどこっちも引けを取らないわ」
「ムシャムシャ」
「当然ですわ、私が料理で引けを取るなんてありえませんわ」
そして二人の料理をじっくり味わった後、審査にうつろうとしていた。
「それでは、審査を始める、五人の票のうちやり多く票を獲得した方が勝ちだ」
「「はい」」
エリザベスと成美は緊張した表情を浮かべ、静かに待った。
「それでは結果を発表する」
審査員の一人である俺もみんなが誰に入れたのかは分からず、一体どっちが勝つのか緊張していた。
「はぁ〜、なんか審査員なのにこっちまで緊張するね」
「あ、ああそうだな」
「それでは一票目、エリザベス」
エリザベスは少し喜びの表情を浮かべすぐに次の票へ意識を向けた。
「まだまだ結果は分からないわね」
さり気なく成美を安心させようとセーラが言った。
「そうだな、最速で分かるパターンとしては三票連続で来た時だけだしな」
「それでは二票目、エリザベス」
!? お、おいおいこんな連続できたら緊張をほぐそうと言ったことが逆効果じゃねえか!
そう思っているとセーラが頭を叩いた。
「バカっ、もっと他に言い方ならいくらでもあったでしょ!」
そうセーラとショウが小声で言っていると
「大丈夫ですよ、セーラさん、まだ勝負はわかりません。これから三票連続で逆転勝ちも十分ありえますから」
そうだった、こういう正念場に成美は強いのだ、図太い根性と閃きによりいつも感心していたのを忘れていた。
そして運命の三票目、ここでエリザベスにでれば勝ち、成美にとってはここは何としてでも票を獲得したい。
「三票目……、成美」
自分の名前が言われると一瞬落ち着く表情を見せたが、すぐに気を張り直したい。それもそうだ、次の票、そしてその次の票も連続で自分の名前が書かれていないといけないのだ。
「ふぅ」
兄としてはエリザベスの三連続獲得であっさり負けると言うのは避けたい。
「四票目……、成美!」
「おぉ、二体二だ、すごい接戦だな」
「やりますわね、料理対決でこの私から二票も取るなんて」
「こっちこそ、ここまで料理ができるなんて思っていなかったわ」
「けれど、悪あがきもここまでのようね、次の票は私が貰いますわ」
「次も私よ」
「では最後の一票は……」
最後の一票は……?
みんなが唾液を飲み込む。
「……」
「アリシア校長……?」
「んん? ああ悪い寝てた」
「……」
「では最後の一票は……」
一票は……
「「ゴクリ」」
今度はエリザベスと成美が唾液を飲み込む。
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