第二十四話 心配と涙
俺、アリシア校長、セーラの三人で朝食を食べるという良く分からない光景が目の前に広がる。
「姉さんそれとって」
「ん~」
食器という楽器をナイフとフォークで音楽を奏でているのを聞いているような静けさだ。
「あの、これからどうするんですか?」
「どうするって?」
「俺狙われているわけだし、このまま普通に学校通っていていいのかなって……」
「ああ、それなら心配ない。」
眠そうだったアリシア校長が真剣な表情で口を開いた、この人は重要なこととなると性格が変わるようだ。
「心配ないってどういうことですっか?」
「昨日の一件であの殺人鬼の逃亡方法がわかったからな、この都市の国家魔術師が光属性の結界を張って影に潜れないようにしているんだ」
「ショウのお手柄よ」
「そ、それじゃあ、もう急いで特訓しなくてもいいという……」
「それとこれとは話が違うわよ」
「え?」
「だって影にもぐれないだけでこの都市にいるのは確かだもの、あなた一人なら影に潜る必要もなく殺せるわ。だからあなたは一刻もはやく強くならなきゃいけないの」
なんか最近露骨に弱い弱いって言われている気がする……
「そ、そうだね」
「まぁ、とはいっても警戒度も高くなっていて、影に潜れない状態で闇雲に来るようなことはしないだろう」
「姉さん! 甘やかさないでショウは命を狙われているのよ? あの時のように油断されては困るの!」
もっともでごわす……本当にさーせん。
「あまり言いすぎてもショウの自信がなくなってしまうぞ?」
「それは!……」
そして何か言おうとしていたことを口にだすのをやめ、俺の方を見つめた。
「あ、あの」
「もう学校に行くわ、訓練忘れずに来なさい」
すると俺の言葉を遮るように顔をそむけ行ってしまった。
「気にしないでくれ、ただお前のことを心配しているだけなんだよ」
「そ、そうですか、でもなんでそこまで心配してくれるんですか? いくら依頼されたとしてもあそこまでしてもらう義理も何もないですし……」
『セーラは幼い頃大切な人を亡くしているんだ』
学校に着き、出席をとっている最中朝聞いたセーラの過去についての話が頭から離れなかった。
「……ウ、……ョウ、ショウ!」
「え? あ、はい」
先生に呼ばれ我に返った、どうやらそのことばかり考えていて周りのことが全然見えていないらしい
「例の事があったから仕方ないがこういう時こそしっかりしないとだめだぞ?」
こんな時にもステイン先生は俺の事を気遣ってくれる。
「ショウ大丈夫~?」
「なにか心配なら私たちが力になりましょうか?」
アイラとエリザベスが心配そうにこちらを見つめる。
「い、いやただ最近色々な事があったなぁ~ってボーっとしてただけだよ」
(なんだ~、意外とショウくんってのんびり屋さんなんだね)(心配して損したぜー)
ふと涙がこぼれ落ちそうになった。気づくとクラスのみんなが俺のことを心配そうに見ていたのだ。
今までクラスとは上辺だけの関係、嫌なものだと認識していたが、このクラスの人たちは本当に俺なんかのことを心配してくれる。そのことにただただ嬉しくてたまらないからだ。
「あはは、心配させてごめん」
零れ落ちそうになる涙を必死にこらえ笑顔で答えた。
(まったくだぜーほんとに)(ねー)
クラス中がさっきまでの雰囲気とは違い笑いであふれた、その笑いに紛れ心配そうに見つめる瞳があった。




