第二十二話 油断と撃退
「ギリギリ間に合ったかな」
「アイラ? な、なんでここに……」
「あなたの泊まっているところで何か問題が起こったと騒ぎになっていましたのよ」
「それでエリザベスが僕に相談してきたから一緒に行っちゃおう! みたいな?」
「行っちゃおうって……でも助かったよ」
アイラ達が来なかったら短剣が顔面に突き刺さっていただろう。
三人がここに助けに来てくれたことに感動していると殺人鬼がそのすきを狙って動こうとした。
「そうはさせませんわ! この前はよくも私を操ってくれましたわね」
そう言うとエリザベスが炎でこちら側にこれないように壁を作った。
「っ!!」
その熱さに流石にこっちにまではこれないようだ
「みんな学校で学ぶ意味あるの……?」
魔法初心者でもこの三人がどれほどすごいかは分かる。
「えへへ~、そうかなぁ~」
(ここに殺人鬼が現れたと通報を受けてきた警備隊だ! 大丈夫か!)
そこに警備隊も到着し、形勢は完全に逆転している、流石に俺たち四人と警備隊相手では勝機はあるまい。
「観念しておとなしく投降しなさい、逃げ場はないわよ!」
セーラの言葉に殺人鬼は悔しそうな表情をしている。
「お前は絶対に殺す、近いうちにだ」
「あなた現状が理解できていないのかしら、ここから逃げられるとでも思って?」
エリザベスが炎の壁を縮めていく。
「どうしてそこまで……」
殺意を込めた眼差しは今までに感じたことのない重さだ、同じ世界から来た人とは到底思えない。
「景道……」
聞こえるか聞こえないかくらいの声量で魔法を唱えると足元が地面に吸い込まれていく。
「え?」
「まさか、影魔法!? エリザベスさん!」
「分かってますわ!」
エリザベスが炎の壁を急いで閉じようとするが影に溶け込むスピードのほうがはやく姿を消してしまった。
「逃しましたわ!」
「まさかよりにもよって影魔法だなんて……捕まらないわけね」
「どういうこと?」
「影魔法は極めると影に溶け込むことができるんだよ~、しかもそれに対抗する手段が光魔法を極めないといけないの」
「一応今日はもう襲ってくることはないと思うけど気は抜かないでね」
「は、はい」
よりにもよって俺を殺しに来る奴が影魔法でどこでも自由に忍びこめるなんて……
「あなたの光魔法はすごいけどまだ足りないの。だからもう少し極めれば寝るときとかに光魔法で部屋をずっと照らしとけば心配することはなくなるわ」
「それじゃあ眩しくて俺も寝れなくないですか?」
「光魔法を使うものは光に耐性を持っているの、だから昼寝するくらいの明るさになるわ、フラッシュを使ったときにあなただけ目は痛くならなかったでしょ?」
「確かに……」
「あなた今まで気づいていなかったの? もしかしてあまり頭がよろしくないんじゃないですの?」
ほっとけ!
「そういえば、こんなに大騒ぎしたのに宿屋のおっちゃんとかが一向に来ないな……もしかして殺されて!?」
「はげたおっさんなら来る途中床で気絶してたよ」
よかった……泊まらせてもらってるのに俺のせいで死んだなんていったら申し訳なさすぎる。
それから警備隊に事情を説明し、一時間位してやっと解放され現在は今日の俺の泊まるところについて話し合っている。
「ショウの泊まるところどうしようか~」
「もう宿屋はどこも部屋は埋まっているでしょうし……」
「エリザベスのところにまた泊まらせてあげれば? 一回泊まったこともあるし勝手とか分かるだろうし」
「いいですけれど……」
この前のことを気にしているのか気が進まなそうにしている
「女の子が男の子と一つ屋根の下なんてダメに決まってるでしょ!?」
セーラが顔を真っ赤にして全力で止めに入った。
「どうしたの? セーラさん顔真っ赤だよ?」
「べ、べつに真っ赤じゃないわよ?」
「ではショウの泊まるところはどうしますか? 野宿という手もありますが……」
「それは流石に……」
「一応狙われてるしね~」
「なら私のところに来るといい!」
突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた
「(校長)(姉さん)!?」
そこにいたのは真紅の髪を束ねクマのパジャマをきたアリシア校長だった。
「なんで姉さんがここに! それにその格好!」
「ああ、泊まっているところがどこかのお馬鹿さんたちに壊されたと聞いてね」
「「うっ」」
確かに……セーラが床に大きな穴をあけ、エリザベスが炎で焼き尽くした、彼女たちが来なかったら死んでいたが彼女たちが来たせいで壊れたのも事実だ。
「ではいくぞ、ショウ」
そう言うと腕を首に回し強引に連れてこうとする
「ちょ、ちょちょ待ってください」
「ん? なんだ恥ずかしいのか、もう既にお前の体は隅々まで見てるんだ気にするな」
「「「隅々まで!?」」」
やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!




