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第二話  別れと案内センター

「ほら、あんた達もう行くわよ~」


「ほら、行くぞー」

「あ、ちょっとまだ話は終わってないんだけど? ねぇ!」


 これ以上この話をするのも面倒だし……………無視だ無視、うんそうしよう。



「母さん今日のご飯なに~?」

「ちょっ、無視?もう知らない!」

「あんたも妹いじめるのも大概にしなさいよー」

「は~い」

「い、いじめられてなんかないもん! あたしがいじめてたんだから!」



 駐車場にむかうためエレベーターのボタンを押すと間髪入れずにすぐに開いた。



「来るの早いな」



 何の違和感もなくエレベーターに乗り込み、慣れた手つきで屋上へのボタンを押すと金属が擦れあう音をげながらドアが閉まった。



「そういえばあんた入学式の日はいつなの?」

「4月6日」

「そういうのはもっと早く言いなさいよ」

「だって聞かれなかったし・・・」


「そういうのは聞かれる前に言うものなのよ!お兄ちゃんはばかだねー」



 ち、さっきまでトマトみたいに顔赤くしてたくせに、まぁ可愛いから許すしてやろう。



「ん?」



 ふと足元を見ると床の模様が紫に光ったような気がした



「今なんか光った?」

「別に何も光らなかったわよ?」


「なにお兄ちゃんまさかまだ異世界にいけるとか思ってるの?残念、異世界適正年齢はもうとっくに過ぎたんだから諦めなよー」


「いや、冗談とかじゃなくて・・・」


 辺りを見てみるとその魔法陣らしきものはエレベーター全体に刻まれているのがわかる。



 よく見ないと薄くて気がつかないほどだが、確かにそこに描かれている。



「ほら、よく見るとこの中全部に描かれてる」

「あら、本当ねずいぶん変な模様ね」

「いや、これ模様じゃ」



 エレベーターもさっきから三階から動いてない。


 すると魔法陣らしきものが急に深みを帯びた紫色に光りだした。



「きゃ」

「ちょっとなによこれ!」



 その瞬間。


 エレベーター中に広がった魔法陣らしきものが、一気に足元に集まりだした。


 そして俺は、地面からゆっくりと足が離れ、宙に浮かび始めた。


「お兄ちゃん!?」

「あ、安心しろ成美これは異世界召喚かもしれん」


「そんなの分かんないじゃない!第一異世界適正年齢は17歳まででしょ?お兄ちゃんはもう18でしょ!」



 成美はただ事ではない雰囲気を察知し、今にも泣きだしそうな顔をしている。


 全く……お兄ちゃん大好きかよ……


 お互い様か。



「大丈夫だって、ただちょっと浮いただけだろ?な?」


「このっ、息子を話しなさい!」


 母が俺を助けるため、俺に触れようとした瞬間、まるで侵入者を排除するかのように透明の壁が現れ、母を弾き飛ばした。



「っつ」


 弾かれた衝撃で頭を打ち、母は気を失った。



「お母さん!」



「お、落ち着け成美、軽い脳震盪だろう、でもここから解放されたら念のため救急車をっ」


「そんなのわかってる! 人の心配より自分の心配しなよ! これからどうなるのかわからないんだよ? なんでそんなに落ち着いていられるの!?」



 そう言われると何でだろう、妙に落ち着いている。


 寧ろこの状況にワクワクしている自分いる。


 なぜだ?


 理由は簡単だ俺が望んできたからだ。


 毎日毎日願ってきたことだからだ。



「なんでだろうな、多分これは俺が望んだことだからかも知れない」

「え?」



 成美は訳が分からないという顔でこちらを見ている。

 俺もこの気持ちが何なのか分からない。

 けれど、気づくと俺はこの感情を成美に説明しようとした。



「俺はどこかこの世界をつまらないと感じていたんだ、例のことがあって以来、俺は他人と関わることを極力さけてきた。多分怖かったんだと思う、他人と関わってまた傷つくのが。」


「ならここでかえていけばいいじゃない! お兄ちゃんのためなら私もてつだ」



「これは俺一人で克服しなきゃ意味がない気がするんだ。それに、もし頼ってしまったら妹依存症になっちゃうかもしれないしな」



 俺はあくまで成美に心配させないように冗談交じりで、その中に本音を混ぜて言い聞かせた。



「私は……!」


 妹は何やら複雑な顔をして口を噤んだ。

 やはり不安なのだろう。



「きっとこれは神様が与えてくれたチャンスなんだよ、だから応援してくれ、俺も異世界でがんばるからさ」



 成美を心配させないために、長い間したことがなかった笑顔をして答えた。



「……くから」

「?」

「あたしも絶対そっちに行くから!」

「ん?」


 どうしてこの流れでそうなった!? 涙ながらに送り出す流れじゃない!?



 成美はそっぽ向いた。



「お兄ちゃん一人じゃ奴隷にでもされてそうで心配だし」



 奴隷って・・・



「いやでも俺がいけたからお前もいけるとは……」

「つべこべ言わない! それが異世界に行く条件だから!」


 誰にに似て強情なのか・・・


「分かったよ」

「約束よ!」

「ああ、せいぜい死なないように待ってるよ」


 光が俺の決心を待っていたかのように強さを増していく。


「そろそろみたいだな、母さんによろしくな」

「おにいちゃっ」



 成美の最後の言葉の途中で成美と成美の声が途絶えた、成美だけではない、母さんや周りの景色すらも全てプツリと消えた。


 異世界に飛ばされたのだろう。

 全く……最後の言葉くらい聞かせろよ……





ーーーーーー





 真っ白だ。



 なにも見えない。



 今自分が目を開けているのかそれすらもわからない。


 意識までも薄れてきた、本当に異世界に行けるのか不安に思えてきた。


「おれ大丈夫かな」


意識が途絶えた。




ーーーーーー





???「くださーい」


「なんだ?なんか声が聞こえるぞ、眩しっ!」


 ゆっくり目が慣れるように開けるとそこは


???「異世界転移希望者はこちらに一列にお並びくださーい」


???「異世界転生者希望はこちらでーす」


「なんだこれぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 眼前に広がっていたのはハ〇ーワークにも似た風景だった






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