第十七話 護衛と稽古
昨日の件、先生に報告するべきなのか? いやでもそれでは俺とエリザベスが一つ屋根の下で夜を過ごしたことが……、別に何かあったわけではないけど、いやあったにはあったんだけど! そういうあったじゃない。
取り合えず昨日のことは伏せておくことにしよう。そう思い席に座り授業の準備をしようとしていたところに先生がやってきた。
「ショウちょっと校長室まで来てくれないか?」
「あ、はい」
なんだろう……
先生が校長室のドアをノックし開けるとアリシア校長が机に足をのせてくつろいでいる。
「おお、来たか! 待っていたぞ。」
「校長生徒の前で怠けすぎです! すこしは威厳というものを……」
「んも~、うっさいな~、わかりましたよきちんとすればいいんでしょ、はいはい」
「あなたって人は……」
大人なのか子供なのかわからなくなるなこの人……
「で、登校して早々にお前を呼び出した理由が、心当たりがあるんじゃないのか?」
!!! まさか昨日エリザベスの部屋で一晩過ごしたことを知っているだと……?
「ななな、なんのことでしょう、別に昨日誰のところで一晩過ごしたとかじゃないですよ?」
「? 何の話だ? 私はこの手紙について話しているんだが」
「手紙?」
「ああ、なにやら昨日お前は襲われたそうじゃないか」
ああ、なんだそっちか、ビビらせやがって……
「て、なんでそれを……」
「だから手紙と言ってるだろうこのアホちんが!」
アホちん……
「犯人から再戦のお知らせだな、どれどれ」
『お前ら4人の命は頂く。』
「これでこれでどうして俺が昨日襲われたことが分かったんですか?」
「この学校で四人というのは異世界人の数しかない、あとこの辺りで禍々しい魔力を感じてな、その方角を調べたところお前の魔力反応があるところだったってわけさ。」
「なるほど」
「ま、まってください、そんな誰からかもわからない手紙の言葉を鵜呑みにしたんですか!?」
ステイン先生が信じられないという形相で校長に聞いた。
「まあな、これは各魔法学校の校長だけしか知らされていない話なんだが、たびたび異世界人が殺されるという事件が起きているらしい。しかも予告をしたうえで。」
つまりはどんな対策をしても無駄だったと
「そんな」
「どうやら一番最初のターゲットはショウ、お前みたいだな」
なんでぇぇ、俺まだ異世界来て少ししかたってないのに俺の命を摘みに来るなんてどんな野郎だよ、いややろうではないか……
「で、対策はどうするんですか? 校長まさかそのまま放置なんてことはないでしょうね?」
「おお! たまには察しがいいじゃないかステイン先生」
「「え?」」
俺とステイン先生は何を言ってるんだこいつという驚きで言葉が出なかった。
「だって他の学校が色々な対策をしても無駄だったのに今更うちが何をしようと時間と労力が無駄だろう」
「しかし、なにもしなければいずれショウは!」
「殺人鬼は放棄するといったが、ショウに何もしないとは言っていない。」
ステイン先生が必死になってくれてるのと対照的にアリシア校長はかったるそうに椅子に寄り掛かった。
「では何を……」
「ショウには私の妹に護衛兼先生になってもらう、私の妹は魔法の戦闘に関してはこの学校で一番だ。」
「妹さんがこの学校に通っているんですか?」
「ああ、実力は折り紙付きだ。」
「しかしそれだけでは……」
確かにやや手抜き感はある
「まあ、心配するな。最悪殺されたとしても奥の手がある。」
「奥の手とは……?」
「な・い・し・ょ」
こいつ……
「ふざけてる場合では!」
「ふざけておらん、生徒の命がかかっているんだ私は大真面目だ」
そういうといつも気怠そうな顔が先ほどとはくらべものにならないほど真剣な顔になっている。ステイン先生もその気迫に押されこれ以上何も言えないようだ。
「分かりました、でその稽古はいつからですか?」
「分からん」
「ええ? 分からないって大丈夫なんですか」
「あ、ああ、今日中にはやると言っていたから大丈夫だろう」
「は、はあ」
はあ、結局女の子が一人護衛って大丈夫に思えないんだけど……
教室に戻ると人込みができている、なにかと思っていたらアイラが駆け寄ってきた。
「何の話だったの~?」
「ああ、まあ色々だ、それよりこの人込みは?」
「あ、ショウに用があるみたいだよ?」
「俺に?」
ということは校長が言っていた妹さんか?
「あ、こっち来た」