第十四話 遊びと刑
「今のものすごい光何!? ものすごくピカっってなってたけど」
武器庫に戻るとちょうど光が消え、アイラ達が武器庫にやってきた。
「目、目がぁぁぁぁぁぁ」
どうやらサングラスの効果はなかったようだ。
ステインは目をおさえて身もだえている。
「い、いや遂に武器を見つけて魔法を使ってみたんだけど……」
「え? それじゃ今の光ショウがだしたの!? あんな光の量初めて見たよ」
「確かに私も初めて見ましたわ、先程まで魔法が一切使えなかったものがしたことには思えませんわ」
流石に信じられないようだ……、ならば
「信じられないなら見せてあげましょう、俺の魔法を!」
「え? いや、別に信じてないわけではないですわっ」
もう遅い!
俺は落ちた武器を拾い上げ、素早く詠唱した。
再び武器庫一帯を光が包み込みアイラ達の目をくらませた。
「「め、目がぁぁぁぁぁぁ」」
「ふっ、どうです? 俺の魔法は、すごいでしょ?」
おっといけない、魔法ができた嬉しさからついはしゃいでしまった。
二人とも目をおさえながら身もだえている。
「それにしてもあれは夢……、ではないよな、てことはかなりやばい状況じゃ……」
神の言うことが本当ならこうしている間にも俺を殺す機会をうかがっているのかもしれない。
考えるだけでゾッとする。
何か対策を考えなければいけない、相手は何百年は生きているのだろう。
そんなのに正々堂々やっても勝てるはずもない、というか正面から来るのかも怪しい。
「ええ、そうですわね、ショウは今とても危険な状態にあると思いますわ……さっさと逃げることをお勧めしますわ」
「え? ちょ、エリザベス……様?」
「逃がさないけどね……」
アイラとエリザベスがどっかのヤンデレキャラのような顔をしてこちらに迫ってくる。
後ろに下がるも壁にぶつかった。
ジリジリと逃げ場を塞ぐように距離を詰めてくる二人。
「ひっ!」
「理を司るものよ! 内に眠る力を以って愚者を縛る鎖を与えたまえ! グラビティ!」
逃げようとした瞬間、アイラの重力魔法が炸裂した。
うつ伏せに地面に押さえつけられる。
身動き一つとれない。
そう、これこそが重力魔法の最大の利点、相手を拘束して動けないところに最大魔法をぶつける必勝法だ。アイラが自慢げに色々語っていたのを散々聞かされたから覚えている。
やばい、殺される……
「ごごごごご、ごめんなさい! 今のは調子に乗りすぎました、反省してます許してください!」
「もう遅いですわ、駄犬にはお仕置きが必要ですわね」
「そうだね、心の広い僕でも今のは流石に怒っちゃったよ……」
「あ、あの、ちょ、やめ、目が怖いよ? 二人とも……」
「「黙りなさい!」」
すると二人は脇に手を滑り込ませ、くすぐり始めた。
「あは、あははははは、ちょっ、二人ともやめて、くすぐったいからっ!」
「罰として君には1時間くすぐりの刑を味わってもらうよ」
「い、一時間!? そ、そんなの死んじゃ、ぷふふ、あはははは」
「そうですわね、一回死んだ方がよろしくては?」
「そ、そんな! ぶははははは、やめ……」
ーーーーー1時間後-----
「ふう、これくらいで勘弁してやるか」
「………………」
まさか本当に一時間もやるとは……
二人は殺意のこもった目で丸一時間休むことなくくすぐり続けた。
もう……調子に乗るのは止めよう。
そして二人は何事もなかったかのように翡翠色の剣を拾い上げ、話し始めた。
「それにしても剣一つ見つけただけでここまで違うなんて驚きですわ」
「そうだね~、それにあの光の量はすごいよ」
「まさに私が読んだ本の通りだ!」
ステインは自慢げに腕を組み、そしていつも通りの眼鏡カチャを発動した。
先ほど地面にコロコロ転がっていたのが幻かのようだ。
「先生! 居たんだ!」
「…………」
可哀そうなことにステインは認識されていなかった。
ステインは俯いた。目には涙が滲んでいた。
気にしないで先生! 俺だけは先生のカッコいい所を知っているから! 元気出して!
「私も気づきませんでしたわ」
やめて! これ以上いじめるのはやめて!
追い打ちをかけるようにエリザベスが放った言葉、先生の胸に剣が突き刺さる。
「この短剣は一体なんですの?」
「ん? ああ、それはとある迷宮の最深部で土台に突き刺さっていたのを付加武器だと思って持って帰ってきたものだ。しかし持って帰ってきたはいいが、切れ味は悪いわ、たいした効果もなくて武器庫に放り込まれて埋もれていたというわけさ」
「付加武器……確か、ダンジョンで手に入る奴だよね?」
「ええ、そうね」
ーーーー
この世界には付加武器というものがあるらしい。
ダンジョン内には魔力の元となる魔粒子が溢れているらしく、それが魔物の力を増幅させたり、武器や防具などに新たな効果を与えることがるという。
地上で遭遇する魔物とダンジョン内の魔物は同じ魔物でも圧倒的にダンジョン内の魔物の方が強いらしい。
これによって、とあるサイクルが出来ていると授業で言っていた。
強い魔物は勿論倒すと経験値やいい素材を沢山落とす、それに釣られて冒険者が富や名声を求めて集まってくる、予想以上に魔物が強く、命を落とすものが出てくる、そして冒険者が身に着けていた防具や武器に魔粒子が長い年月を経て蓄積され、新たな効果が付与される、そしてまた冒険者がやってくる。
このサイクルが繰り返され、百年以上ダンジョン内で埋もれていた武器や防具には伝説級のスキルが付加されることがあるらしい。
だが、伝説級のアイテムがあるということは誰にもそのアイテムを持ち帰ることができなかった。すなわち、誰もそこにいる魔物に勝つことができなかったということだ、そういう魔物のことを冒険者の間では『レッドモンスター』や『レッド』と呼ばれ恐れられている。
つまり、伝説級のアイテムを手に入れるにはレッド……いわゆるボスモンスターを倒さなければいけないというこどだ。
まぁ、たまに本当に見つけられなかったというだけで、魔物もいないところで伝説級のアイテムが手に入るということもあるらしい。
ーーー
「まさか効果がないと思っていた武器が人を選ぶ武器だったなんてね」
「こうしてはいられない! このことでまた新しい事実が発見できたぞ! 報告書にまとめなくては。では失礼するよ!」
するとステインは大急ぎで飛び出していった。
「行っちゃいましたわね」
「だね~」
「「…………」」
「それよりも……これどうしますの?」
「どうしよう……」
そこには先ほど調子に乗ったものの残骸が転がっていた。