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第十話  失敗と可能性

「次、ショウ! 期待しているぞ」


「ショウ、頑張って!」


「ま、まぁ、頑張りなさい」


 やめてぇ! そんなにフラグを立てないで!


「は、はい」


「まずはこの水晶に手をかざしてくれ、そうしたら自分が何の魔法が使えるかが分かる。」


 た、頼むーーー! どうかすごい魔法が使えてくれ! そうじゃないと俺の人生お先真っ暗だ……


「じゃあ、触れます……」


 ビビりながらも水晶に触れると水晶から辺りを覆うほどの眩しいほどの輝きが発せられた。 


「おお、この輝きは! 光属性の適正の証だ」


 光? え、光って確か結構いい部類に入ってたよな? 教科書によればほとんどの人が火、水、雷のどれかに属していてその一段階上が光と闇、さらに上が重力だった気がする。


クラス「なんだいまの輝きすげえ!」 「アイラの重力よりかはワンランクさがるけど今の輝きは尋常じゃねえぞ!」


 ど、どうやらクラスの雰囲気は保たれたようだ……ありがとう神様


「では次は実際に使ってみよう、光の初級魔法ライトを使ってみてくれ。」


 ライト、目くらましの魔法か。それくらいなら


「聖なる光の化身よ、我に悪を断ち切る光を、ライト!」


 ……静寂の中、風が吹き抜けていった。


「あ、あれ? ライト!」


 ……


「ラ、ライト! ライト! ライト!」


 ……


「すいません、できません……」


「ええええええええ!?」 「ライトって初級魔法だよな?」 「う、うん。確か初歩中の初歩」


 クラス中が信じられない、これくらいもできないなんてチェリーなんじゃないの? みたいな声が聞こえてくる気がする。


ステイン「ま、まあショウはこっちにきたばっかりだしそういうこともあるさ、じゃあ次!」


 これでクラスの雰囲気は微妙になった……ありがとう神様、俺はチェリーです。


アイラ「ドンマイ!」


エリザベス「次頑張ればいいだけのことですわ」


 エリザベスまでも妙に優しい、これは相当なのか……


「あ、ありがとう。次は……がんばり……ます」


 やばい、なんか目から涎が……


 泣きそうになる自分を必死に抑えた。


 そして授業が終わり、帰り支度をしていると先生が近づいてきた。


「すまんショウちょっと来てくれ。」


「は、はい」


 はぁ……終わった。俺の異世界ライフはこんな序盤に終わるのか、もっと楽しみたかったな……


 まぁ、そうだよな、運よく試験がなかったんだもん。本来ならもっと早く俺の実力が分かり、異世界ライフは終わっていたんだ。そう思うと神様にも感謝……なんて思えねえわボケェェェェェ!! 何のために異世界に来たと思ってんだ、ああ? これなら異世界に転移させてんじゃねえよ、ああ? 


 と、心の中で神様の顔面にアンパンをぶちまけながら訪ねる。


「先生、どこへ行くんですか?」


「武器庫だ。」


「武器庫……ですか?」


「ちょっとさっきのお前を見て前に一度呼んだことがある本を思い出したんだがな……、ここだ。」


 錆びれたドアを鉄が擦れる音を出しながら開けるとそこには無数の武器が置いてあった。


「すごいですね、この数」


 モーニングスター、薙刀、ロングソードざっと見ただけでも100を超える様々な武器があるのが分かる。


「それで本の話なんだが、ある異世界転生者が水晶で魔法適正を調べたところその人には炎属性のとても高い適正値があることがわかったんだ。それも水晶が燃えるほどの。」


「なるほど……それはとてつもないですね、でも突然どうしたんですか?」


 

「ああ、しかしその人は魔法の初級、フレイムすら使えなかったそうだ。彼は悲嘆に暮れて街を彷徨っているとある剣が目に映って離れなかったらしい。」


「剣?」


「彼はその剣に惹かれ、すぐさま購入したそうだ。そのすぐ後だ、一人の魔法剣士が魔王を倒し英雄になったとされている。」


「それって!?」


 すると先生は、四角い眼鏡を得意げに指で押し上げ、眼鏡流奥義「カチャ」をし、ニヤリと笑った。


「ああ」


 そんなことってあるか? それはあくまでも本の世界での話だろう。もし本の世界が異世界人の力についての説明書だとしてもそんな話聞いたこともないぞ。


「でもそれは本の中の話では?」


「だとしてもこのまま何もしないで魔法使えないまま過ごすのは嫌だろ?」


 確かに、このまま魔法を使えないで魔法祭で足手まといになんかなったとしたら……、想像するだけでもゾッとする。


「確かに、魔法が使えないのは嫌ですね」


「だろ? それに魔法祭に勝って他の偉そうな職員にギャフンと言わせたいしな……」


 …………そっちが……本命だな……


「どうだ? なにかピンとくるようなものはパッと見てあったか?」


 そんなこと急に言われても特に気になるものなんてない。


「いえ、特には」


「そうか、なら明日からでも午後の魔法訓練の時間を使ってこっちに専念するか」


「え、いいんですか?」


「ああ、このままできないことを永遠にやってても無駄だしな、可能性のあることをやった方がいい」


 そしてまた先生は奥義を繰り出した。


 俺はなぜかその眼鏡カチャをはじめてカッコよく見えた。


俺が前の世界の学校で分からないことがあって先生に聞いても同じことを繰り返すことしかしなかった。そうじゃない、それが分からないからもっと違う言い方で教えてほしかった。勿論、先生の方もそれは分かっていただろう……しかし彼は四十人近くいる教室で俺のためだけに教えてくれるような優しい先生ではなかった。


 彼は一人より他の三十九人を優先する人だった。


考えてみれば当然だ、クラスで仲間外れにされ、いじめられていた俺のことをスルーするような学校だ、わざわざ俺一人に教えてくれる人がいるはずがない。


 しかし、彼は、ステイン先生は違ったのだ。


 クラスの人数は多少、少なくはなったものの、魔法には危険がとともなう、周りを常に警戒し、万が一に備え、クラスのみんなに教える。それはとても大変なことだ、俺みたいな魔法が使えない生徒なんて見ていないものだと思っていた。なのに彼は俺が魔法を使えないことに落ち込んでいるのを見抜き、どうすれば良いかと考え、俺に特別な措置を取ってくれたのだ。


 その時俺は思った、「そうか先生は俺なんかのためにこんなに熱心に考えてくれていたんだ」と。


 そう思うと先ほどとは違う、なにか心が温まるような涙が溢れ出していた。


「ど、どうした!? な、何か嫌な事を言ってしまったか!?」


「い、いえ、こんなに俺の事を見てくれている人ははじめてで……ただ、ただ嬉しくて……」


「そ、そうか? 困ったことがあったら迷わず先生に言うんだぞ? 生徒を見るのは教師としては当然のことだからな」


 そんなこと言うなよ……全く……


「はい、先生が男じゃなかったら惚れているところですよ」


 そう言うと先生の顔が青くなり始めた。


「え!! いや、俺は教師だし、お前は男だろ? な? だからそういうのは……」


「だから、男じゃなかったらっていってるじゃないですか、プッ」


「そ、そうだよな、あ、あはははは」


 この先生を尊敬しよう。この人が困ったことがあったら助けてあげたい、俺はそう思った。


 そしてしばらく二人は笑い、俺は武器を探し始めた。


 こうして俺の武器庫生活は始まった……


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