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極振り好きがテイマーを選んだ場合  作者: ろいらん
第4章「ローツ攻略編」
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第八十四話「落下」

『キーキャァーっ!』

「るっせえ! こっち来んなよ!」


 皆さん、こんにちは。こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。

 俺は今、絶賛崖……いや、壁から転落中です。しかも、大量の鳥さん達に襲われながら。


 自分で言ってて意味分かんねえな。どういう状況だよ、これ。


『ラピス! ハーピーだっけか!? どんだけついて来てる!?』

「三体です」


 三体か! なら、魔法で迎撃するか!?

 だが、それもマズい。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.27)

 HP  1000/1000

 MP  889/5980

 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 MPが少なすぎる! 少しは回復したようだが、これだけじゃ出来ることは限られてしまう。

 しかも、三体を相手にしていればすぐに地面に激突だ。

 今から背後を向いて迎撃なんてしていたら背中からダイナミック着地間違いなし。一瞬で自室のベッドに死に戻りだろう。


 そもそも、崖の上に広がる地面へ着地しようとしてたのに二十メートル落下してることは大丈夫なのか、俺!?

 バスケットボール大のラピスじゃさすがに不安すぎるぞ!

 ハーピーはとりあえず、二の次だ!

 まずは、安全に着地することを考えろ!


 腕や足を目一杯に伸ばし、風の抵抗を出来るだけ受ける。

 ハーピーとの距離は詰まって行くが、羽ばたく音も聞こえている。自由落下よりも速く追い付かれることはないだろう。

 今は、出来るだけ時間を稼ぐ……!


ご主人様(マスター)、地上との衝突まで残り僅かです。ワタシを下敷きに』

「その必要はない! そろそろ、五秒だ!」


 風を全身に受け、羽ばたく音にも警戒しながら簡易ステータスを見つめ続ける。

 そして、《MP自然回復》によってMPが二パーセント、今の俺のMP量なら回復値は百十九!


 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.27)

 HP  1000/1000

 MP  1008/5980

 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 よし、MPが四桁だ!

 これで、できることは増えた。

 あとは、時間と気力との戦いだ!


「《リコール》っ!」

『お、やっと呼んだのか。遅かったじゃねえか……って、おい!? なんで落ちてんだよ!? 着地はどうした! てか、なんか追ってきてんぞっ! どういう状況だよ、これはよぉ!?』


 うぁ、トパーズの声が頭に響く。システム的に。

 くそ、負けるな、俺。MP切れが辛いのは知ってる! だが、何かに吸われた訳でもない。耐えろ!

 トパーズは巻き添えにするために呼んだんじゃねえだろ!


「ぐ、ぅ、……トパーズ」

『旦那! これは一体、何がどうなって』

「蹴れ! 頼む! 今すぐにだ!」


 トパーズの足は俺の左横腹に当てる。

 ラピスはもう壁の方向にはいない。自分の意思で地面側で衝撃を吸収しようと移動してくれている。


 だが、落下する時は登る時よりもよっぽど余裕があるらしい。

 恐怖はあるが、三半規管にダメージがある訳でもない。

 俺の右側に壁があることは確認済みだ。その方向に向かって、トパーズの《跳躍》を受ける!


『あー、ったくよぉ! 後でしっかり説明してもらっから覚悟しとけよ、旦那ぁっ!』

「うごぇっ」


 またしても、腰骨が……っ!

 だが、これで俺に横向きの力が加わった。

 間に合うか……!?


 ……変化は一瞬だった。


「お? 風が止んだ?」

『落下します。衝撃に備えてください』

「え、ちょ、ま、うおおおお!?」


 推定、地上四メートルからの落下。

 二十メートルに比べれば可愛いもんだが、実際四メートルの高さに立てば足が(すく)む。


 ここから飛び降りるなんて躊躇してしまうが、俺には落ちる以外の動きは許されていないらしい。

 静止していた身体がゆっくりと落下を始め、すぐに地面が迫ってくる!


 だが、俺には頼れる仲間が張り付いていた。

 正座スタイルで膝から落ちていった俺の足は青いスライムによって包まれている。


 結果、俺の足が折れることも、地面から跳ねることもなく。

 ぴちゃん、と衝撃を全て殺して見事に正座で着地した俺だけが残った。


 ……うわあ、なんだこの、来るはずだったものに身構えてたら来なかった気持ち悪い感じ。

 しゃっくりが出そうで出なかった時の感覚に似てるな。


「って、んなこと言ってる場合じゃない!」

ご主人様(マスター)、ご無事ですか』

「ああ、ラピスのおかげで助かった! だが、全部の危機が過ぎ去った訳じゃないぞ」


 MP回復薬を取り出して即座に割る。

 MPは六百回復したが、それだけじゃ足りない!

 だが、回復薬にもクールタイムは存在する。再使用するまでに時間がかかるのだ。


 現在のMPは七百二十七。

 あと、十五秒は耐える必要がある!


「そら、鳥人間のお出ましだ」

ご主人様(マスター)、あの種族名はハーピーです』


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 ハーピー Lv.34

 △△△△△△△△△△△△


 一体を注視したら、ウィンドウが表示された。

 レベルたっけえな。さすが、まだ誰も到達していない最前線。


 だが、あのハーピーとかいう敵モブもそう簡単に俺達を上空から襲うことはできないはずだ。

 何しろ、今俺達は侵入不可区域から落下してきたばかり。頭上には何人(なんぴと)たりとも入ることの許されない領域が存在しているのだ。


 トパーズに壁側へ蹴ってもらったのはこの、侵入不可区域へ突入するためだった。

 この区域へ入ったものがあれば、その運動を強制的にゼロにする。その仕様を逆手に取ったのだ。

 これで、二十メートルの高さから落下していた速度もゼロになるって寸法よ。


 脱出方法はあんまり考えていなかったが、どうやら静止した場所から真下へ吐き出すように落とされるらしい。

 侵入不可区域へ入ったモブは朽ちるのを待つだけ。なんてことになれば、壁にモブが張り付きまくっているはず。

 脱出できると思ってはいたが、何とかなってよかった。


 で、無事着陸した後は。


『キィーシャー』

『ピキャーっ』

『……きー』


 ハーピー三体との戦闘ですか。

 なんか一体やる気なさそうなやついるんだけど、帰ってもいいんだよ?


 とまあ、そんなことを願ったところで叶うはずもなく。三体のハーピーは四メートル以下にまで高度を下げると一斉に襲いかかってきた!


「もうちょっと時間を稼ぎたかったが、仕方ない! 《火球》《風種》!」


 威力も規模もスピードも弄っていないデフォルトの火球。まあ、普通に撃っても機動力のある飛行モブに当たるはずがない。

 だが、このゲームは色んなとこがリアルだ。異世界がどうとか信じてしまいそうになるくらいには現実世界と酷似している。


 鳥って風を掴んで飛んでるらしいじゃん?

 その風が乱れたらどうなるだろうね?


 火球を避けようとしたハーピーの周りに魔法で生み出した風を発生させる。

 人間の腕と足が鳥のようになった魔物ハーピーも普通に考えれば飛べるはずもなく、きっと魔法だのなんだの使ってるんだろうが、やはり風ありきの魔法だったようだ。


 体勢が崩れ、それを持ち直そうとしたところで動きが止まる。

 よし、これでクリーンヒットだろ! 装備によって底上げされたINT(知力値)の魔法を食らいやがれ!


『ピキャ!?』

「なっ! 火球が消えた!?」

『……くぁー』


 どうやら、あのやる気の無さそうなハーピーが何かしたようだ。

 だが、それに対して助けられた方はよく分かっていなさそうだな。別の攻撃と勘違いしたのか? 急に辺りを警戒し始めた。

 時間を稼ぎたいこっちとしては大助かりだな。


ご主人様(マスター)、もう一体来ます』

「大丈夫。準備は出来てるさ。ラピス頼んだぞ!」


 二つに《分裂》したラピスの片方に取り出しておいた液体を流し込む。

 迫ってきたハーピーは……って結構怖いな!?

 人間大の鳥の脚ってだけでも迫力あるのに、大きな羽も動かし続けて威圧感が半端ない。

 捕食されるネズミってこんな気分なのかねー。まあ、黙って捕食される気なんてさらさらねえけど。


 俺を蹴ろうとした脚は片方のラピスで防御。そして、もう片方は投げ……ようと思ったが風圧が凄いっ!

 振り落とされるかもしれないが、蹴ってきた脚にくっつけよう!


 一通りの攻防を経て、何とか第一ラウンドが終了。

 だが、俺もただただ迎撃していたってだけじゃない。

 壁側へ逃げながら目を付けていた岩が転がってる場所へ転がり込む。


 さーてと、右手を岩に乗せ、ハーピーの一体へ狙いを定める。

 あれから十五秒は経ってるよな。


「《リコール》」

『おう、旦那。やっぱ、思った通り面白そうなことやってんじゃねえか』

「あぁ……すまんな、さっきの説明は後回しだ」


 岩に乗せた右腕にトパーズを呼ぶ。

 MP切れによる頭痛を(こら)え、頼もしいフワフワの背中が見えることに少し安堵したところで。


 さあ、反撃の第二ラウンドと行こうか。

けものフレンズの最終回よかったですね。

二次創作でも書いてみようかな。

計画のみになるかもしれませんが。

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