第十八話「装備」
本日更新2話目です。
前話「青薔薇」を、まだ読んでいない方は、そちらを先にお読み頂けると嬉しいです。
異世界転生/転移の文芸・SF・その他部門の日間ランキングで1位を頂いたことと、
PV(アクセス数)が10万越えを達成したことを記念して、本日10月18日は16時と21時に小説を更新しています。
読者の皆様、本当にありがとうございます!
これからも、「極振り好きがテイマーを選んだ場合」をよろしくお願いしますっ!
エリー達、青薔薇のギルメンと別れた俺達は、ソファで人に埋もれてた繭を拾って、オッドボールに戻ってきた。
その時に一波乱あったんだが、これは割愛。近い内、話すことになるんじゃねえかな。多分。
んで、打倒“森林の大狼”に向けて早速レベル上げに行こうと思ったんだが。
前も言ったけど、俺ら、初期装備なんだよね。冒険者の服(上下)、アクセサリなし、武器も初心者シリーズ。
ユズとケンはβ特典でそれぞれ、武器とアクセを持ってはいる。でもやっぱ、強化できるところはしたい訳ですよ。
そんな訳で、今、繭に俺達の装備を作って貰っている。即席らしいから効果は期待するなと言われたが、微かな数字でも底上げされるなら損はないだろ。
待っている間、三人でゴミ屋敷と化した店の中を掃除してたんだが、もうちょいで終わりそうだ。
繭も、そんなに時間は掛からないと言ってたし、そろそろ出来上がるんじゃねえかな。
「……お待たせ」
「そらきた。お疲れ、繭。で、どうだったよ?」
「お疲れ様。あら、意外と普通な見た目ね」
「……急いで、作ったから。効果も、外面も、あまり弄れなかった」
「あ、ちょっと待って! ここの掃除だけ終わらせるから! お店の外も掃除したかったのにぃー!」
窓の枠を、綿棒で擦っているケンが叫ぶ。
いるよなー。掃除し始めたら夢中になるやつ。
ありがたいのはそうなんだが、団体行動は心掛けようぜ。
繭の作った装備は“ザ・既製品”って感じだな。こんな時でもないと、繭が作るとは思えないものだ。
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旅人の服 防具(上半身)
丈夫な布で作った動きやすい服。
VIT +1
DEX +1
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旅人の服 防具(下半身)
丈夫な布で作った動きやすい服。
VIT +1
DEX +1
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旅人の靴 防具(足)
丈夫で動きやすい靴。
DEX +1
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ミサンガ アクセサリ(腕)
切れると願いが叶うという。
一定確率で消滅。
回避率上昇【極微小】
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銅の指輪 アクセサリ(指)
銅で作られた指輪。
体力が上がる。
HP +50
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それぞれ三つずつ。いや、銅の指輪だけは二つだな。
だが、底上げにはなる。ありがたく頂いておこう。
「まあ、無いよりはマシね。ミサンガは回避率上昇効果付きだし、もしかしたら役に立つかも?」
「上昇幅は【極微小】かあ。相手の攻撃が当たってもダメージを受けなくなるとかなのかな? 確率は余り期待できそうにないね」
「……仕方ない。経験値稼ぎだと、割り切って、スキルで作った。効果が弱いのは、当たり前」
「銅の指輪が二つなのは何でだ?」
「テイクには、これ」
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銀の指輪 アクセサリ(指)
銀で作られた指輪。
魔力量が上がる。
MP +5
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おお! MPが上がってる!
「テイクは、HPがいらない。だから、こっち」
「これ、他にないのか!? 指輪は一人二つまで付けれんだろ? もう一個!」
「……無理。鉱石の、在庫がない。西の洞窟には、戦闘しない程度の、入り口までしか、行ってない」
「そこの棚にあるアクセサリはどうなのよ。造形も凝ってるし、いい効果があるんじゃない?」
「……あれは、素材集めに行く前、とりあえずとして、作った。色んなものを混ぜて、形だけ、整えたから、むしろマイナス」
「うわ、見てくれだけってことね。それなら、レベル上げついでに鉱石とかも採掘して来ましょうか」
「ん。頼んだ。あと、これ」
繭が虚空から取り出したのは、細長い緑の物体。
VRだとアイテムボックスの謎仕様が目に見えてしまうから最初は驚くんだよな。
流石に慣れたけど。
で、何を取り出したんだ?
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ツタの鞭 武器《鞭》
ツタで作られた鞭。
持ちやすいよう、加工されている。
ATK +5
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……うむ、ツタだな。見紛うことなきツタだ。
ま、これで、とりあえずは初心者の鞭を卒業した訳だが、プラス値はATKか。
ちょっとは、鞭で戦ってみようかね?
「……ケンの武器は、メイス。でも、鉱石や木材が必要。今は無理だった」
「そっか、分かった。その素材を持ってくればいいんだね」
「……ユズは、今作れる剣で、マッドトパーズより、強いものは、ない。だから、今の剣を、強化していく予定」
「了解。もっと強い武器が作れるようになったら、マッドトパーズを素材にすればいいのかしら?」
「そのつもり。多分、水属性が、付与される」
「ってことは、向かう場所として西の洞窟と東の森があるってことなんだが」
西の洞窟は大量の鉱石が必要、東の森は主に木材が必要。
となると、洞窟に二人、森に一人って配当が妥当か。
テイマーがパーティを組めば経験値が大幅に減ることを考えれば……。
「森にテイク。洞窟に僕とユズだね」
「そうなるわな」
「ああ、トパーズちゃん! 少しの間だけどお別れなんて!」
『…………』
「後ろ向いたぞ」
「ユズ何かしたの?」
「冷たいよ、トパーズちゃん!」
「いいから、さっさと装備変えて行くぞ。ん? そういや、この服布で出来てるよな」
「それがどうかしたの?」
「いや、繭ってそんなスキル持ってなかった気が……」
前に送って貰ったものを見てみる。
うん、やっぱ、《鍛治》、《細工》、《彫金》だけだよな。
服を作るようなスキルではないはずなんだが。
「ふ。そこに、気が付くとは、さすが、テイク」
「なに!? まさか、繭、お前……!」
「その、まさか……!」
「な、なんだってー」
「テイク、どゆこと?」
「分からん。ノってただけだ」
「簡単なこと。私のレベルが、銅と、銀の、指輪を作って、Lv.5に上がった。それで、スキルポイントが、貰えたから」
「《裁縫》スキルを取得した、と」
スキルポイントには使い方が二種類あり、一つは俺もしている、既にあるスキルの強化。もう一つは、新しいスキルの取得だ。
戦闘職プレイヤーは、新しい技を取得したり、有利に事を進めるためにスキル強化をすることが多いが、生産職プレイヤーは違う。
生産方法にも二種類あり、スキルを使って素材さえあれば短時間で完成させられるものと、リアルのように手間暇掛けてオンリーワンの作品を作り出すものがある。
もちろん、後者の方法でもスキルの恩恵はあるが、Lv.1でもそこまで不便ではないらしい。繭のように、色んな生産スキルを取って、一つの装備に盛り込むのも強い装備になるしな。
ただ、癒香のように薬師一筋なら、例えば《調合》スキルなんかを鍛え続けるのもアリとも聞く。
とりあえず、俺には関係ない話だな!
「ねえ、アンタ、ほんとに物理攻撃系スキル取らないつもりなの?」
「素材提供の、目処は、立った。それに、《裁縫》は、元々、取るつもりだったし。知り合いに、この服を、作って貰ってから、ずっと」
「そのゴスロリドレスのことだね」
「知り合いって?」
「テイク、浮気はダメ。教えない」
「えー、ケチくせえなー」
「装備は、オッドボール製、のみ。厳守して。それと、テイク、ホーンラビットの角と、マルチスライムの核、粘液も出来たら取ってきて」
角? 核とか粘液ってのも入手方法が分からないぞ。出るのはホーンラビットの素材とかマルチスライムの素材、とかだったはずだ。
「繭。テイクはβでゴブリン倒すことしか考えてなかった馬鹿だから、説明してあげて」
「馬鹿って言うな。何だよ、βでは出てたのか? 角とか粘液」
「……テイク、さっき、私が鑑定したやつ、覚えてる?」
さっきってのは、掃除の前に鑑定結果がどうとかって見せられたやつか。
確かに、丸鷹の羽根とかスパイクドッグの爪とかに混じって角、核、粘液があった気がするな。
さすが、生産職はレアなもん持ってんなーとは思ったけど、違うのか?
「あれは、素材を、鑑定したもの。鑑定結果を、見たなら、同じ種類のを、見分けられる」
「要するに、今、テイクがホーンラビットとかマルチスライムを倒せば角とか核が出てくるってことだね」
「《鑑定》スキルを持ってない人には未鑑定品が全部、〇〇の素材って見えるのよ」
「ほー、そんな仕様があんのか。で、ホーンラビットとマルチスライム関係のものばっかってことは」
「……ラピスと、トパーズの、装備。スキルでは、無理、だけど、手作りなら」
「出来るのか!」
「確証はない。けど、多分、出来る」
「うおおー! ありがとう、繭!」
「は、離れて、くっつかないで、頭を撫でないで……!」
「ほら、テイク! そんなことしてないで早く出発するわよ! 日が暮れちゃうわ!」
「ああ、そうだな。それじゃ、繭、頼むな!」
「ん、任せて」
よし、レベル上げ兼、素材集めへゴーだ!