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極振り好きがテイマーを選んだ場合  作者: ろいらん
第4章「ローツ攻略編」
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第百二十二話「ネズミと同じ原理」

前回までのあらすじ


ユニークモンスター達を抹殺するため運営が起こした突発的な防衛イベント。

テイクは自我を持っているハーピーとフェアリー達を守るため、ローツ北エリアへと再度向かう。

フェアリー達をあと少しのところで救出できるというところで、フェアリーの一人、チンチクリンが友達を探すため別行動を取り始める。

それを追うテイクとラピス(1/2)、チンチクリン達を見付けた時、既にフェアリー達とトパーズ、ラピス(1/2)はモンスターの大群に囲まれてしまっていた。



久しぶりのストーリー更新で、一気に進めるのはちょっと設定矛盾が怖いので、最初はほのぼの回を挟ませてください汗

フェアリー達の知られざる特徴が今、明かされる……!

 木々の隙間からそよぐ風が頬を優しく撫でていく。その感覚に意識を向けると、幾分か楽になった気がする。

 頭上の葉っぱが揺れる。木漏れ日が踊り、チカチカと俺に主張する。

 やめてくれ。今の俺には頭痛の種だ。


『ミドリちゃん! 右から来るよ!』

『あたしのことはいい! 大丈夫だ! ヒメは目の前に集中しろ!』


 座り込んで、後ろの木へと体重を預ける。なんだっけ、“両手のカタリナ”さんだったか。ちょっと、休ませてもらうぞー。

 あ、コブがいいとこにありますねー。背中のツボが押されていい塩梅だわ、これ。


『やっ、ほっ、そこだぁー! って、ヒューマンさん休んでる! ずるーいっ!』

『な、てめぇ、あたし達に働かせて呑気に座ってんじゃねえぞ!』


 うーん、何かが聞こえるような気がする。

 そもそも、俺は何をしてたんだっけ? この頭のダルさは覚えがある。こういう時は大体いつも……。


「そうだ、戦闘中だ! ラピス、いるか!?」

『はい。ご主人様(マスター)、いつもよりご帰還が早かったですね。現在は、タンクマンティスを撃破したところです』

「確か、特攻蜂は任せろって、チンチクリン達が行ったんじゃ。そっちはどうなった!?」

『善戦している、と言えますね。むしろ、手玉に取って完璧な立ち回りをしています』


 MP切れの立ち直りが早かったのは、レベルが上がったからだろうか。【MP自然回復】は最大MPに対する%で回復値が決まる。MPを極振りしている俺は、一度の回復が他のプレイヤーよりも大きいのだ。

 MP切れからの回復をレベルに対する規定値以上とするなら、早くなったのも頷ける。……慣れただけってのもあるが。


 で、チンチクリン達だが、なるほど確かに善戦している。

 何しろ、ほぼ全ての攻撃を避けている(・・・・・)んだから負ける要素はないように見える。実際は、(かす)って微少なダメージを食らっていたり、危なっかしい場面も多々あるんだが……(おおむ)ね善戦していると言っていいだろうな。


 身体が小さく、飛ぶことができ、しかも小回りがきく。フェアリーは回避することに恵まれているようだ。

 しかも、攻撃方法は恐らく【光魔法】系統。攻撃を回避したと同時にカウンターとして叩き込んでいる。威力はそこまで大きくないが、その内特攻蜂はポリゴンと化すはずだ。

 んじゃ、それまでは見張り兼MP回復に努めますかね。


『おい、ヒューマン! 聞こえてんだろ、手伝えぇ!』


 ~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~~~~~~~


『ふい~、疲れたぁ~』

『はぁ、はぁ』

「お、ついに終わったか」

『てめぇ……なんで加勢しに来なかった……』


 なんだかお二人ともお疲れのご様子。

 なんで加勢しなかったって言われてもなぁ。俺のDEX(器用さ)だと、蜂に当てるどころかチンチクリンや友達さんに当てそうだし。

 あと、特攻蜂の攻撃を食らった瞬間死が決定してるってのもいただけない。Lv.2の毒は一度で()()りだ。


 あとは、二人で十分勝てそうだったしな。危なそうなら手を出すが、邪魔になりそうな手は出す意味がない。

 一応、解毒薬は用意してたけどな。


『もー、ちんぷんかんぷんなお話は終わりー! それよりも、わたしずっとお腹ぺこぺこなのー』

「腹減ってんのか」

『もう、お昼に食べてから何も食べてないんだからね!』


 それは……普通なのでは?

 そろそろ小腹が空いてくる頃合ではあるが、晩飯には早すぎる。

 さっきの戦闘で動いたから? いくらなんでも、少し運動したくらいで……。


『なっ!? ヒメ、昼から食べてないのか!? 何も!?』

『そうなんだよ、ミドリちゃん! もう、ひもじくて死んじゃいそう!』

「いやいやいや、昼に食ってんなら死ぬ訳が」

『くっ、あたしの手持ちはもう全部食っちまったし、ヒメに少し分けてもらおうと思っていたのに……!』

『ご、ごめんね、ミドリちゃん。わたし、ミドリちゃんのことが心配で』


 あっれ、おかしいな。なんでこんなに切羽詰まってんだ、こいつら?

 俺がおかしいのか? 種族的な問題?

 フェアリーは食べ続けないと死んじゃう感じですか?


 うーん、ネズミとかと同じ原理だと考えてみよう。

 身体が小さいと表面積はその四分の一になる。体重はもっと小さくて八分の一くらいになるんだっけか。

 つまり、身体が小さいほど、体重に対して表面積が大きくなるわけだ。表面積が大きいと、熱の放出量が多い。その分食べてエネルギーを得ないといけないとかそういう……。


『おい、ヒューマン! 聞いてんのか!』

『ミドリさん、ご主人様(マスター)は今、考え事に(ふけ)っているのです。もう少し待って頂けませんか』

『そうも言ってられねえんだよ、おい、頼むよ、ヒューマン!』

「なんだ、どうした」


 気付くと、物凄い剣幕の小人が目の前ドアップで何かを(まく)し立てていた。

 こうなる前に気付かんもんかね、と自分で思うが気付かないものはしょうがない。そういう性分なのだ。


 で、話を聞くと食べ物を分けてくれ、と。

 ヒューマンに頼み事なんざしたくないがな! とか、一言余計だが、癒香から買った“サバイヴミートの串焼き”なら余っている。一発で崖登りが成功するとは思わなかったからな、ある程度仕入れていたのだ。

 タンクマンティスと特攻蜂の群れに出会って無事だったのはチンチクリン達のおかげだし、これぐらいの頼みなら聞いてやろう。

 さあ、キッチリ味わって食いやがれよ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~~~~~~~


『ハグハグチュルンずぞぞぞごくん』

『ぱくごくもぐごくちゅるごくごくごく』

「…………」

ご主人様(マスター)、ワタシは夢を見ているのでしょうか』


 残念ながら現実のようだ、ラピス。

 癒香お手製の串焼きをアイテムボックスから出した時には相当な量だと思ったものだが、この小さな妖精二人には気後れさせるに至らなかったみたいだ。

 信じられるか? この二人から出てる音、串焼きを食ってる……飲んでる? 音なんだぜ……。


『ヒューマンさん、チュルチュル、もっふぉ、あむ、さしにふぁしててうぃいよー』

「何言ってんのかわかんねぇよ。一旦飲み込め」

『おい、ヒューマン! ごく、他には、ごく、食いもんねえのか!? ごくごく』

「お前は噛め! 飲み込みが早すぎんだよ! 串焼きは飲み物じゃねえんだぞ!?」


 しかも、まだ食い足りねえのか、こいつら。他に食べられるものとしたらラピスたちにもバレずにこっそり買ってたコロッケぐらいしかないが……。いや、ダメだ。これだけは渡せない。俺の楽しみを奪われてなるものか……!


『ごっくん。ぷはぁー。ヒューマンさん、次のお願いしまーす!』

「ねえよ! お前らに食わせられるものはもう何もねえ!」

『ふーん、そうだなぁ。例えば対価にあたし達の鱗粉とかあげても』

「こちら、自慢のコロッケなるものでして、ぜひご賞味くださればと」

『マ、ご主人様(マスター)!? そ、それは! 持っていたんですか!?』


 すまん、ラピス! だが、“妖精の鱗粉”はMPを極振りしている身として、是が非でも欲しい素材なんだ……!

 コロッケの一つや二つ、出さずして何が極振りか……!


『わーい、いっただっきまーす! んー、あんまりお腹に溜まんないね』

『他にないのか?』


 どうしよう。フェアリーとの友好関係は難しい気がしてきた。まさか、こんなにも大食らいで、コロッケの味が分からないようなやつだったとは。

 とにかく今はラピスを大人しくさせることに尽力しよう。


 他に渡せるものなんてあっただろうか……?

いきなりですが、26、27日が忙しすぎるので次回更新は29日の予定とさせてください!

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