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キッカケ

ということでこれが改稿の文章になります。

文章量は結構増えました。

夏休み前日の最後の登校日

終業式も午前中に終わったため多くの生徒は足早に帰っていった。

残っている生徒も皆、高校初の夏休みと言う事もあるためかどこか浮き足立って居るようにも見える。

僕はと言うと、いつもよりゆっくりと帰り支度をしていた。

ここで、忘れ物などしたらある意味致命傷だからな。


(れい)まだいるか」


僕の名を呼び教室へと入ってきたのは、中学の頃からの悪友、赤木圭吾(あかきけいご)だった。

『あの圭吾が教室に入ってきた』と残っていたクラスの女子達がざわざわと騒ぎ出す。

まったくこいつが来るといつもこんな感じだ。


「見ての通り居ないよ」

「何言ってんだよ。居るだろう」


圭吾は僕へと爽やかなスマイルを浮かべ近づいてくる。

周りの女子達の視線が痛い。

こう言う訳で、ほっといて欲しいのだが経験上からこいつに何を言っても無駄だろう。

何度も軽くあしらってもこいつは近づいてくることが解っているからな。


「なぁ、一握りの楽園って知っているか」

「新しいドラマか何かか」


正直あまり興味ないので投げやりに答える。


どうやらクラスの女子達のほうが僕よりも興味があるらしい。

先ほどまでなんとなく聞こえていた話し声がぴたりと止んでいる。

女子達が興味があるのは僕と圭吾の会話の内容だろうけど。

まぁ、よくある光景だ。気にしないでおこう。


「違う違う、ドラマよりもっと良いものだよ」

「知らん。くだらない話なら帰るぞ」

「帰るな。新しく出るVRMMOのタイトルだよ」


またVRMMOの話か。


VRMMOとは

『電脳世界にアバターという体を作ってそこに自分の魂を突っ込んで遊ぶオンラインRPG』

と考えて貰って良い。

実際はそんなオカルトじみたものじゃないわけだが。

科学的な専門用語を交えて語るよりもこっちの説明のほうが早くて簡単だ。


それにしても、あいつが口を開けばゲームの話題しか出てこない。さすが、


「廃人め」


おっと思わず口に出てしまった。


「VRMMOやっただけで廃人呼ばわりはひどくないか」

「その頻度が問題だ。一日何時間やってるんだよ」

「12時間ぐらい。普通だろ」


何当たり前のことを聞いてるんだ見たいな顔してるんだ。

全然普通じゃないだろう。

しかも、一日の半分ってことはこいつ寝てる間もやってるな。


「VRMMO意外に趣味作れよ。それこそドラマ鑑賞とか」

「アレの何処が楽しいんだ」


真顔で返されても困る。

そうだなここは一つ悪戯でも仕掛けるか。


「謝れ。お前が来る前まで教室の後ろで比較的大きな声で新しく始まるドラマの主役がカッコイイと談義をしていた女子達に謝れ」


わざと聞き耳を立てていた女子達にも聞こえるように話す。

突然話題に出たグループが慌てているのが、見なくても手に取るように解る。


「んー。そうする」


圭吾はそう言うと話題に出たグループへと向かう。

さらりとこう言った行動が出来るのがこいつの凄いところだな。


さて、グループの女子達はと言うとガチガチに緊張していて謝られても、まともに反応できていなかった。

チャンスを物にできなかったようだ。


その光景を見てたと思われる他のグループは次々にドラマの話をし始める。

これは、アレだ私達も圭吾と話すチャンスをくれと言う事だろう。

さすが、残念系イケメン。


残念系がついてる理由は、こいつの生活はゲームを中心に回っているからだ。

そのせいで、付き合って1ヶ月も経たない内に別れるなんて経験を数度繰り返していた。

その度に別れた彼女達は皆、何故か僕を敵視してくるのだ。

僕は男だというのに、まったくもっていい迷惑だ。


話がそれたな。

女子から恨まれるのも嫌だし、ここは圭吾には犠牲になってもらおう。


「前言撤回だ。ここにいる女子全員に謝って来い」


謝って帰ってきたあいつを再び送り出す。

結果から言おう、与えたチャンスを物に出来たものは居なかった。


「全員に謝ってきたぞ」

「お疲れさま。で、名前がアレなVRMMOがどうしたって」

「名前がアレってな。まぁ確かにタイトルは地雷臭漂ってたが、中身はすごかったぞ」

「すごかったって事は。もうプレイ済みか」


素直な返答に、何故か圭吾は胸を張りドヤ顔を浮かべる。

正直殴りたい。


「なんと、俺は五千人限定のクローズドベータに当選したんだぜ」

「自慢したいだけなら、後で電話でもして来い」


本当に電話をしてきたとしたら出ないけど。

後、女子達は『電話』と言う単語に反応しないで。


「いや、本題はここからだ」

「本題だと」

「そ、これを見てくれ」


圭吾は一枚のチケットをみせてくる。

チケットには、デフォルメされているキャラクターの絵と15桁の文字列が書かれてある。


「シリアルコードか」

「そう、これはクローズドベータの時イベントがあってな、そのときの賞品なんだ」

「それで、どうしろと」

「お前にやる。俺はクローズドベータの時使っていたアカウントがあるから、これは不要なシロモノだ」


『プレゼント』と女子達がまた反応したようだが気にしない方がいいだろう。


「そうか、メモ用紙として有効に使わしてもらう」


ちょうどメモ帳が無くなった所だ。

ありがたく遣わしてもらおう。


「いや、ちゃんと本来の役割で使えよ」

「なら転売か」

「するな」


さすがに圭吾は怒ったようだ。


「でも、何で僕なんだ」

「そりゃ知り合いに専用ゲート持ってて、『一握りの楽園』持ってないの探してみたらお前ぐらいしか居なかったし」


専用ゲートとは正式名称を専用ゲートギアと言う。

アバターに魂を突っ込むために使用する装置(家庭用版)と考えてくれれば良い。


家庭用版があるなら業務用版ももちろんある。

それを共有ゲートと言う。


専用ゲートはセキュリティの関係上、登録した本人以外使えない仕組みになっている。

そのくせ値段も新型パソコン並みに高い。

さらには、安全上の理由で年に一度は有料のメンテナンスを受けなければならない。


それに引き換え共有ゲートは誰でも使える。

なので、今ではネットカフェならぬVRカフェと言うものが出来ており値段もリーズナブル。

だから学生の主流は共有ゲートだろう。


ちなみに、専用ゲートを僕がもっている理由だがバイトに必要だったから頑張って買ったのだ。


まぁそれはさておき。

要するに、シリアルコードを貰ったいいが渡す相手が居なかったからやるということか。


「わざわざ探さなくても。パッと思いつく相手が居ないなら転売すればよかっただろ」

「転売なんかよりも、知り合いにやってもらったほうが何倍も良いんだよ」

「そういうもんかね。まぁそう言うことなら貰う」


個人的な意見としては、転売してその利益を新しいゲームを買う費用に当てたほうが圭吾のためになると思うのだが。


「転売なんかしないでちゃんとゲームしろよ」


圭吾はチケットを渡してくるのであり難く受け取った。


「お前はちゃんと宿題しろよ」


ちょっとした冗談のつもりだったのだが、圭吾の顔が曇る。

相変わらずゲーム以外には力を注がない奴だ。

それなのに成績はいいんだよなこいつ。


「まぁゲーム始めたらメールで教えてくれ」

「あぁ解った」

「じゃあ、そう言うことで」


圭吾はそそくさと退散していく。

それとほぼ同時に『あぁ』という女子たちの嘆きも聞こえた気がしたが、

気のせいだろう。

それにしてもあいつ、追求されるのが嫌で逃げたな。


VRMMOか。

興味がない訳では無いからな。

これは、いい物を貰ったな。


人生初のVRMMOにワクワクしている。


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