(旧)キッカケ
説明回です。
夏休み前日の放課後
「一握りの楽園って」
僕は友人、赤木圭吾に聞き返す。
「そ、新しく出るVRMMOのタイトルな」
VRMMOとはなんぞやと問われたら僕は『電脳世界にアバターという体を作りそこに自分の魂を突っ込んでオンラインRPGをするというゲーム』と答えるだろう。
まぁ本当はこんなオカルトじみた仕組みではなくむしろ科学的な仕組みなのだけどこの説明が一番手っ取り早いと僕は思っている。
そして、VRMMOは人気はすごくビックタイトルからネタタイトルまで多種多様なVRMMOが発売されている。さて、いったい何を言いたいかというと、
「一握りの楽園って名前がすでにすごい地雷臭がするんだけど」
僕は苦笑する。
「タイトルはあれだが、中身はすごかったぞ。さすが大手ゲーム会社4社が共同開発しただけある」
「すごかったってどう言う事だ」
圭吾の発言に疑問を覚え訊ねると、圭吾は笑みをうかべ自慢げに答える。
「何を隠そう俺は五千人限定の『一握りの楽園』のクローズドベータに当選したんだぜ」
「ふーん。そうなのか」
「いやもうちょっと興味持ってくれよ」
その圭吾の表情にイラッと来たので投げやりな態度で返す。
すると圭吾は不貞腐れた。
相変わらず圭吾は打たれ弱い。
さすがに可哀想になったので、ハァとため息を一つ付き話を聞くことにした。
「で、一握りの楽園の話を僕に聞かせてどうしろと、自慢したかっただけか」
「いや、一緒にやろうと思ってな」
圭吾は完全に復活した。
チョロすぎだろ圭吾・・・。
「一緒にって僕は買わないぞ」
「ふふん。実はなクローズドベータの時にちょっとしたイベントがあってな、その時の商品がなんとこれだ」
圭吾はドヤ顔で一枚の紙を見せる。
正直その顔はムカつく。
やっぱり圭吾は少し凹んでいたほうが世界のためになると思う。
「これは一握りの楽園のシリアルコードか」
「そう、これをお前にやる。どうせクラスで、専用ゲート持ってて親しい奴となるとお前ぐらいしかいないからな」
圭吾がいった専用ゲートとは、正式名称を専用ゲートギア言って僕の魂をアバターに入れるための道具といえばどんなものか想像がつくだろう。
そして、専用ゲートはすごいお金がかかる。
購入に新型パソコン並みの値段がするし、一年に一度メンテナンス(有料)をしないといけない義務がある。
それに加えて専用ゲートは、一度認識設定をしてしまうと本人以外使えない。
専用ゲートとは別に共用ゲートというのも存在する。
これは、簡単に言うならVRゲーム専用のネットカフェみたいな物で手ごろの値段で遊べる。
学生の僕達は専用ゲートを普通は買わず、共用ゲートで遊ぶ。
ここまで言えばわかると思うが圭吾は決して友達が僕しかいない寂しい人と言う訳ではない。
むしろ、イケメンのリア充と言ったほうがいいだろう。
爆発してくれませんかね。
それと、ちなみに僕がなぜ専用ゲートを持っているかと言うと、バイトで使うから物理的に吐血しながらも買った。
この話は正直思い出したくない。
「まぁ、貰えるなら貰う」
「おう、ゲーム始めたらメールしてくれ」
ニカッと笑みを浮かべ親指を立てる圭吾。
正直このノリには付いていけない。
「わかった。ゲーム始めたらメールする」
こうして僕は、初のVRMMOをする事を決めた