6話
あっちゃんの顔を伺うとその表情は虚言の類いじゃないのを痛感するものだった。
「ごめんね」私はあっちゃんの両手を握ながら、「怒んないで」
もちろん私もちゃかしたりせず真剣に謝る。
「いいよ、怒ってない」
あっちゃんは少し口角を上げ笑顔を作る。無理に笑顔を作ったのがわかった。
「ごめんね」
再び謝罪の言葉を口にしあっちゃんを抱きしめる。
「璃子ちょっと汗臭いかも」
「えっ?」
突然の発言にあっちゃんから身を離し自分の匂いを確認してみた…ちょい臭うかも。
「お風呂入る」
「んっ」とあっちゃんは短く返事。
「一緒に入ろ」
「いや、私はもう入った」
拒否の言葉に少し落ち込みながら風呂場に向かう。
脱衣場で服を脱ぎ産まれたままの姿…つまり裸身になる。想像したでしょ?いや~んのびさんのエッチぃ…キモいキモい。
蛇口を捻る。温水になるまでちょっと待ってシャワーに切り替えた瞬間、冷たっ!体が跳ね上がる。まだ冷水じゃん。
また少し待ち温水になったのを手で確認し頭頂部から浴びる。お湯が髪に浸透していき満身へと広がり体温を上昇させていく。
瞑目しながらさっきの事を思い出す。あっちゃんが肌を許さない理由は私にある。
それはまだ付き合いたての時だった。
さっきみたいに狂熱を帯びたキスを交わし興奮した私は忘我してしまったのだ。
自分でも何でそんな醜行に及んだのかわからない。獣欲に駆られた私はあろう事かあっちゃんの胸の付け根辺りに噛みついてしまった。肉を噛み切る勢いでガブリと。
きめ細やかで麗しい肌からは流血していて、私の歯形がくっきりと刻印したみたいに付着していた。歯が肉に喰い込む感触は未だに忘却できない。
あまりの激痛だったのか、苦悶に顔を歪めあっちゃんは泣いてしまった。ボロボロと涙を流しながら。
あっちゃんの涙を見るのは初めてだった私は動揺した。謝ったよ精一杯。抱き締めながら何度も何回も。
私も哀傷を感じ泣いた。幼児のように周りなんか気にしないで。その時は許してくれたけど、あっちゃんには傷を作ったしまった。心にも体にも…。
その時の傷は残留してしまっている。だから私には肌を許さない。その傷をいつの日か払拭できる事を悲願している。
湿っぽくなってしまった…まあいいや。