5話
なんか官能小説みたいになってしまいました。
そんなにキツい内容じゃないので、ご安心下さい。
恋愛物を執筆するのは初めてなもんで、なかなか筆が進まない…
自宅の最寄り駅に着き外に出る。
なかなかついてない日だったなぁと天を仰ぐ。陽がまだ完全に沈んでいないので星は身を潜め、積雲が夕陽を浴びどこか物憂げな雰囲気を漂わせていた。雲だけに…つまらん。
等間隔にある街灯は街を頼りなく照らし、虫達が群がりたむろしている。
夏になると虫が増えるけど、冬は何してんの?冬眠?誰か教えてちょ。そんなに気になんないけど…。
閑散とした夕闇通りを歩く足取りは軽く、自宅とは異なる方向に歩みを進める。コツコツと私のヒールの足音だけが虚しく響く。静寂を紛らわせるように小音で歌を唄う。
「く~ちびるとくちびる♪」
自宅へ向かわないのには理由があるのだ。
何を隠そう『あの人』の家に行こうとしてるんだ。うふふっ。
家族暮らしの私とは違い『あの人』は気丈夫な人だから一人暮らしなんだよね。
だから気兼ねなく家に行ける。愛を語らっている愛の巣だ。休日や仕事終わりには殆ど会っていて家にはあんまり帰ってない状態だけど、気にしない気にしない。
私が生まれるもっと前から建造されたのであろう木造建てのアパートは一室一室、大して広くなくどこか哀愁が漂う外観だ。
私達の愛の巣は二階に位置するため階段を上がる。そして鍵を開け入室すると共に、
「あっちゃ~ん!」
と叫び甘えた猫のように近寄りすぐさまぎゅ~と抱きつく。
あまりに強く抱きついてしまったから「ぐっ」とあっちゃんは声を漏らす。
「おぉ璃子遅かったじゃん」
あっちゃんとは私の恋人だ。どこまでも愛しい私の恋人。私の事を受け入れてくれる大切な恋人。
「そう!聞いてよっ、終わりかけに仕事押し付けられちゃて」
愚痴をこぼす私をなだめるように、
「へ~頑張ったんだ。えらいえらい」
抱きしめ返され頭を撫でられる。さらさらと私の髪に触れるあっちゃんの手が気持ち良く顔がにやける。ぐへへへっ。
ブラウンの胸元まである髪が私の鼻をくすぐり、私と同じシャンプーを使ってるから同じ匂いがする。
さらに顔を埋めると小振りだけど柔らかく心地よい乳房が触覚を刺激し、母が子をあやす様を夢想する。
そうあっちゃんは女性だ。
子供に退化したみたいな錯覚に陥り私は唇を重ねる。
「んっ…」
あっちゃんは突然の行為に鼻声を漏らす。
私はそれだけで満足できず舌を侵入させあっちゃんの粘膜に貪りつく。あっちゃんは体を震わせたが直ぐに私の舌を受け入れる。
「ちゅっ、…んっ、ちゅ」
互いの唾液が混同し淫猥な水音が室内を支配していく。
「…ちゅっんちゅ、んっんっ、ちゅっ…」
いつまでもその快感を逃したくない心情に駆られさらに深々と舌を挿入させる。ん~あっちゃん大好きぃ。
「璃子、舌出して」
「うん」
私は恍惚しながら舌を差し出す。
するとあっちゃんは私の舌に吸い付いた。
いやらしく卑猥な音吐は私をさらに興奮に導いていく。
あっちゃんの胸に触れようとした瞬間だ――
「それはダメ」
完全な拒絶の声。私は硬化したように手を止める。
「夕闇通り」という言葉を聞いてピンときた方は友達になれそうです。