3話
早く帰りたいのでパソコンに向かい躍起になる。
すると突然キラキラしたものが視界の隅に入った。琉菜さんだ。
琉菜さんが胸元に垂れ下がっていた髪を後背部に流したのだ。
一本一本がまるで生きてるみたいに波打ち甘味色の強い匂いを発する。
まるでリンスのCMを見てるみたい。何度見ても惚れぼれし目を奪われる。
「ん?何かわかんない事あった?」
琉菜さんが視線に気付いたらしく話しかけてきた。
「い・いやぁ、綺麗な髪だなぁって思って見とれてました」
琉菜さんは静かに微笑むと、
「何?いきなり…あっわかった褒めといて手伝って貰う作戦だな」
「あっ、いや…」
そんな事は微塵にも思ってなかったので言葉に詰まる。
本当の事だったんだけどなぁ…。
「いいよ。やっといてあげる」
琉菜さんは右手を差し出す。飴でもねだるような軽い感じだ。
ん~早く帰りたいのは本心なんだけど、琉菜さんに悪いし。
「あの、大丈夫です。自分でやります」
「そう?じゃあ頑張ってね」
右手を下げ自分の仕事に戻る琉菜さん。改めてその寛大で懇切な態度に感動を覚える。
女神というのはこんな感じなのかもしんないと思ってみたり。
いや、もしかしたら神様の領域に達してるのかもしんないと思ってみたり…なんてね。
「はいっ」と静かに返事を返す。
励ましの言葉に機嫌が良くなり自らの仕事に手を付け始める。
よしっ!頑張れっ!ワタシっ!?みたいな。