17話
またしても何ヶ月も放置してしまい、申し訳ございません。これからは、定期的な更新を目指します。
なんとか保たれていた涙腺は最愛の人の登場によって脆くも崩れ去り、僅かな熱量を帯びた滴が頬を滑り落ちる。
「あっちゃん!」
恥も外聞も体裁さえも捨て去り、私はあっちゃんを抱き締めた。強く強く。
「ちょっ、ちょっと離れていたぐらいで、泣くことなかろう」
あっちゃんの口調に、困惑と狼狽の色が滲む。
「違うの。なんか悲しくて」
あっちゃんの胸元に顔を埋めながら、自分の泣いている理由を考察してみる。みっちゃんとお別れした悲哀からなのか、あっちゃんに会えた安堵かなのか。多分どちらにも該当する。
「はいはい」抱き返されて、頭をポンポンされる。
その後、何分間か泣き続け、少しずつ平静を取り戻す。
「落ち着いた?」
依然と泣き止むまで私を抱き締めてくれていたあっちゃんが、私のご機嫌を窺う。
「うん」頷くと、あっちゃんは私との抱擁を解く。
「化粧とか涙が混ざって、酷い有様だな」
顔を覗き込まれ、現状を報告される。酷い有様ってなんか非道い!
「どうする?化粧直す?」と選択を迫られたので、「直す」と答える。
急いでトイレに駆け込むと、鏡に顔を映す。
「確かに酷い…」
鏡に映った自分を見て、あっちゃんの言葉に納得する。せっかく施した化粧が見事に剥がれ落ち、化粧の意味を成していない。クレンジングで剥離させることも考えたけど、せっかくのデートなので修復させることに努めた。
化粧を直してトイレから出ると、あっちゃんがスマホを操作しながら壁にもたれかかっているのを見つける。なんか様になっててカッコいいぜ。
「先程は申し訳ござらんかったな。衆人環視の中で醜態を晒してしまって」
私の中の武士像を意識して、声音を低くしてみた。
「…全く誠意、というか、ふざけた感じしかしないんだけど」呆れ顔であっちゃんはポツリ。
「まぁいいや。で、これからどうする?」スマホをポケットにしまい込みつつ、あっちゃんが尋ねる。
「お腹空いたから、アイス食べたい」
「そういや、そんなこと言ってたな」じゃあ行くか、とあっちゃんが歩き出したので、私も後を追った。
目的地に指定したアイス専門店は、二階に位置している。休日ということもあり、店内は混雑を極め、賑わっていた。年齢層に統一性はなく、お年寄りからお子さんと幅広い。
早く食べたかったけど、順番待ちしているお客さんの間に割り込むなんて無粋な行為は避け、とりあえず最後尾を陣取る。
「……」無言のまま、あっちゃんの手を握る。家からここまでずっと手を結合させていた筈なのに、あっちゃんの手の感触に懐かしさが込み上げた。あっちゃんの手は平均的で女性らしい細っこい華奢なものだけど、私にとっては唯一無二の誰にも触れさせたくない代物だ。
本音を言うと、腕組みをしてもっと密着したかったけど、そこはグッと耐え忍ぶ。あんまり人前でイチャこらしてたら、衆目が集って目立つから。イチャイチャしたいが、好奇の目に晒されるのはイヤなのだ。
私達の番まで後、五分くらいかなぁ、なんて推察していると、
「椎名」
聞き慣れない声色が、聞き慣れた名を呼んだ。




