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Like I Loved You  作者: 昇歌
15/20

14話

曖昧な情報を元にみっちゃんと手を繋ぎ寸歩不離を保つ。みっちゃんの歩幅に合わせながら歩くと自然、速度は落ちた。

子供が生まれたみたいで、少し感慨深くなってしまう。

同性愛者の私には無縁な世界だ。どこか延々と続き寂寥感にまみれ暗闇に彩色された決して追いつかないそんな世界。私にとって出産なんて言葉はつかず離れずで、でも手を伸ばせば掴める異世界の言語…みたいな。

しかし自分で語っといてなんだけど意味不明だなぁと自嘲。そんな事を思考していると、

「ここだよ」みっちゃんが足を止め、ある店を指差す。

そこは子供服屋だった。店先にはセールワゴンがあり小さな服が粗雑に放り込まれいて、店内にも私では着用不能なサイズの服が綺麗に陳列されていた。いや、ちょっと大きいサイズだったら着れない事はないかも。と見栄を張ってみる。

折節、幼少期が脳裏に浮かんだ。母に手を引かれ可愛い服を一緒に選ぶ姿。買ってもらった服を自慢するために外に着ていったら汚して泣いてしまった。

懐かしさの温水が身体に染み渡っていくような錯覚は目頭を少し潤した。

あっそういえばみっちゃんのママがどんな容姿なのか聞くのを忘れていた事に気づく。質疑するべく再度しゃがみ込み目線を合わせて両手を優しく握る。くりくりっとした黒眼が私を捉えた。

「ママってどんな人?」

「ん~キレイっ!」嬉々とみっちゃんは答える。…質問を間違えたみたいだ。苦笑気味に質問変更。

「じゃなくて、どんな服着てた?」

「えっと…カワイイふく!」容量を得ない返答に辟易と落胆。でも可愛いので許す!まぁみっちゃんが発見すれば分かるだろう。入店すると「いらっしゃいませ~」と恰幅の良い女性店員が辞儀をする。適当に会釈を返し、みっちゃんママ探しを始める。

親子連れで賑っている店内に溢れるのは子供達の蛮声だ。

私もはぐれてしまっては元も子もないので、握力を少し強め店内を徘徊する。


ぐるりと店内を一周したがみっちゃんママを見つけ出す事ができず、みっちゃんは露骨に肩を落とし目を伏せ気鬱な面持ちへと変容。一縷の望みに賭け店員に聞いたが判らないとの事だった。

「大丈夫だよみっちゃん。まだこれからこれから」

元気付けようとみっちゃんの頭を撫でたが、小さく「うん」と返した首肯は憂いていた。

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