13話
今更ながらQueenを聞きながら執筆。
やはり偉大なバンドである。
女の子の目前まで近寄ると遠目から見ても小柄だった体躯が一層小さく映った。髪は両サイドをゴム留めていて、服装はフリフリで純白のワンピースを着ている。
威圧感を与えない為、床に膝を附き目線を合わせた。
「どうしたの?」
出来る限り柔和な声音で対応する。
女の子はビクッと肩を一度震わし表情が強張ったが、私が女子だと判った瞬間、緩和されたので一安心。
少しの沈黙の後、
「……あ、あのね…」
俯き詰まりながらも言葉を紡ごうと懸命になっているのが判った。涙腺が細い糸一本で繋がれている様な儚さを含むそんな表情を女の子はしている。
「うん」
「ママとね、はぐれたの」か細く喧騒の中では消え入りそうな声量で女の子は状況を説明する。惻隠の情が湧き上がった。
「よし!お姉ちゃんが一緒にママを探してあげる」
今度は明るい声音を意識。「ホントに?」
女の子は俯いていた顔を上げ疑念の籠もった視線を私に送る。
「うん。ホント」
私は肯定し女の子の髪をさらさらと撫でると、ぱぁと嬉しそうな顔へと切り替わった。
「お名前は?」
私は女の子に問い掛ける。
「みう。桐谷未羽」
「みうちゃんか。じゃあみっちゃんだ」
「おねえちゃんは?」
上目使いで気恥ずかしそうにみっちゃんは私に尋ねてきた。その愛らしい仕草にキュンと胸を鷲掴みにされ今すぐ抱擁したくなったが、なんとか自制する。「私は璃子。佐武璃子って言うの」
私が自己紹介をすると、
「りこ…じゃありっちゃんだ」
顔を綻ばせながらみっちゃんは私の真似をしてあだ名を命名してきた。あまりのかぁいい物言いにお持ち帰りぃ~…自重自重。
「みっちゃんはどこでママとはぐれたの?」
「ん~とあっち」
歩いて来た後方を指差す。…なんともアバウトな回答だ。
とりあえず立ち上がりみっちゃんの手を取る。その矮小で華奢な手は女の私でも圧力を加えれば折れてしまいそうな感触だった。