12話
久々の投稿です。
人を好きになるのに理屈なんていらない。好きになった人がすきなのだ。性別なんか関係ないし、同性を好きな自分を卑下するつもりもない。フレディだって同性が好きだったのだ。公言もしていた。今の時代同性愛なんて普通の事だ。私はそう思う。
ということで街中で手を結合させながら悠々と歩く。もちろん恋人繋ぎで指を妖艶に絡ませている。周りからは奇異で怪訝な視線を浴びるが、もう慣れっこだ。今更秘匿する気もない。
夏の太陽は人間の事情など知る由もなく、今日も30℃を超え猛火が大地を熱しゆらゆらと陽炎を発生させている。周りに威圧するように建っている高層ビルの窓に日光が反射しさらに温度を昇華させていた。肌を焦がす様な陽光が突き刺さり発汗を促し双眸が全開できない。実は握っている手も汗でにゅるにゅるだが握力は弛緩させないでいた。あっちゃんも手を離す素振りは見せないので感触と視線は心中の奥底へ沈下させる。なんだか同じ境遇の中あっちゃんが手を離さない事に心強さと嬉しさを感じて頬が緩み「へへへ」と笑みが零れる。
「なに?思い出し笑い?」
私の漏出してしまった笑い声に気付きあっちゃんが話しかけてくる。
「ん~ん。なんでもない」
今日は日曜日で夏休みという事もあり雑踏と喧騒の奔流が入り乱れ人でごった返している。
「暑い!」
あっちゃんが不満を言い捨て汗を拭う。
「同感です」賛同して歩く速さを上昇させる。
15分程歩き行きつけのデパートにたどり着く。服を買う時はお決まりになっているデパートで、メンズの店は少数でレディースが大多数である。
入店すると冷風と共に人々の喧々囂々が出迎える。汗で肌に張り付いているワンピースに空気を送り込み「ふぅ」と一息付き、黒のトートバッグからハンカチを取り出し額と胸元を拭う。
人の波間を遊泳し二階へと繋がるエスカレーターへと乗る。あっちゃんがお気に召している服屋の前に着きあっちゃんを見送る。なんでかって言うとやっぱりあっちゃんとは服の趣味が違うからなんだなぁ。だから私はお外で待機なのです。
「じゃあここで待ってるから」私は近場の椅子に腰掛ける。
「ちゃんと待ってるんだよ」
子供に言い聞かすようあっちゃんが言い私の髪を温和に撫で店内へと入っていった。
暇だな…。バッグからスマホを取りモバゲーを開始。パズルを揃えてドラゴン退治に勤しむ。
一通り遊んだ後、飽きてスマホをバッグに返却してお客さん達を眼球を右往左往させながら観察。
人々で氾濫している通路はいつにも増して賑やかで雑然としている。
ふと左側へと視線を向けると小さな女の子がいるのが見えた。首をせわしなく左右に巡らしている。
多分、小学校低学年ぐらいの女の子。その表情は悲愁に染まり今にも泣き出しそう。迷子なのは明確だった。
私も小さい頃、迷子になった時の事がある。母親が傍にいないだけで不安と困惑が押し寄せ視界を濁らせた。見知ったデパートが異国に思え、ただ彷徨う事しかできなかった。
私は腰を上げ女の子に向かい歩み始める。