11話
同じ表現や言葉を出来る限り使用しない事を忌避しながら執筆していると遅筆になる弊害に悩まされる今日この頃。
翌日。昼食を済ませた私達は出掛ける用意に勤しんでいた。もちろんあっちゃんのご要望通り服を見に行く準備だ。
本日のあっちゃんの服装はロッケンローラーな感じで、激戦を繰り広げた後みたいな裂傷が刻まれた七分丈のダメージジーンズに赤いタンクトップ。通気性はかなり良さげで、冬に履こうものなら凍傷は覚悟した方がよさそう。
あっちゃんの服はラフと軽装が重視だ。曰わく動きやすさを考慮してるそう。あっちゃんは基本ボーイッシュな服装が大半を占める。
私は明色な薄緑の膝丈ぐらいのワンピース。お気にの服を身にまとい気分は少し昂揚気味。
「あっちゃん今日もロックな格好だね」
私は率直な感想を述べる。ギターでも掲げようなら黄色い声援が挙がるのは確実だ。主に私が。
「そう?璃子は女の子って感じだね」
あっちゃんが私の服を概評する。
「可愛い?」ワンピースの両裾を少し持ち上げ私が聞くと、
「可愛い可愛い」と可愛いの連語を授かり私は微笑を零す。
他愛ない閑談に花を咲かせた後あっちゃんが「こいこい」と鏡台に私を手招く。追従し椅子に着席。
「今日はどんな感じにしましょう?」と美容師の様に私に問い掛ける。
なにやら髪をセットしてくれる気らしいので私も美容師ごっこに興じる。
「可愛くして下さい」
「了解しました」
そう言うとあっちゃんは私の髪を櫛で梳き始めた。
「はい終わり」あっちゃんがセットし終えた事を告げる。頭頂部に黒いお団子が出来ていた。「おぉ」と出来映えに感嘆を漏らし、ぽふぽふとお団子を触ってみる。自然と表情が破顔していた。
「どうでしょうか?」
私の両肩を掴み覗き込むようあっちゃんが感想を発問。
「満足です」
「それは良かった」
あっちゃんもどこか満足げで一笑。
「じゃあ。次はあっちゃんの番ね」
私も恩返しにと提言すると、
「私はいいよ」
拒否か遠慮なのかは把握できないがあっちゃんは言う。でも多分拒否なんだろうな…あっちゃんはストレートが信念なのだ。
「じゃあアイロンだけしてあげる」
あっちゃんと席替えをしてアイロンに入電。温度が上昇するまでダッカールで細分する。
余談だけどアイロンの適温は160℃だよ。これ以下だと癖っ毛の人は苦戦を強いられるかも。ちなみにダッカールは美容院なんかで使われる髪留めの事だ。名称の由来は知らん。ダッカールさんが発案したのかな?まぁどうでもいいけど…。
アイロンの液晶が160℃になっているのを確認し髪にあてがう。熱を持った部分を櫛で梳いていく。
やっぱり人の頭髪に触れるのはなんか不思議な感情を抱いてしまう。美容師さんとかは何とも思わないのだろうが、普段生活していて他人の髪に接触する機会は希有なのだ。