9話
少々修正しました。
眉根一つ動かさずこちらをずっと見ている。私も負けじとあっちゃんを凝視してみる。あっちゃんの眼球に矮小な私が映っていた。何か眼球に幽閉されてるようで、無実だ~って感じ。
まぁあっちゃんに監禁されるならされたで…なぁんて。もしかして何か顔に付着しているのだろうか?だったら恥ずかしい。
私は顔に手を這わしながら、
「何か顔に付いてる?」
「いや、なんか璃子が食べてんのかわいいなぁって思って」
あっちゃんは口をパンパンにして、もぐもぐと何かを食べる素振りを見せる。その仕草はハムスターを彷彿とさせた。
「褒めても笑顔しか差し上げられませんけど」その言葉に頬が緩み精一杯の笑顔を譲渡。マックの店員みたいに媚びへつらう感じではなく素直に笑ってみる。
「はいはい」軽くあしらわれた。
「璃子明日休みでしょ?どっか行く?」
そう言えば明日は休日だ。普通に忘れていた。「ん~」と答えは決まっていたが、どうしようかと悩むように思案顔を作り首を傾げ腕を組み困った困ったのポーズ。演技力は皆無と言っていい。例えるならあれだアイドルが声優を片手間に行っている様なお粗末なものだ
「あっちゃんと一日中家でゴロゴロに一票」
「じゃあ、せっかく休みなんだしアウトドアしようぜに一票で」そう言うとあっちゃんが人差し指を突き出す。票が別れてしまった。どうしようか…いやこれは譲れない。朝から晩まで寄り添ってスリスリが私の熱望なのだ。
「じゃあこれで勝負!」
両手で拳を握り親指だけを立てる。多分皆が知ってるけど名称は謎な指遊び?でいいんだろうか…。誰でも一度はやった事あるよね。全校集会なんかで暇を持て余した時にやった記憶がある。熱中し過ぎて最後には先生の怒号が飛来するみたいな。
「いいだろう。受けてたつ」
あっちゃんは口角を上げ不敵に笑む。
「いっせーのーで――」
「で、なんだっけ?負けたら何でも言うこと聞くってルールだったよね?どうしよっかな」
あっちゃんは不穏当な笑顔を浮かべ私と目線を合わせる。いじめっ子の目だ。あぁその目つきゾクゾク…はしない。
「違う!明日どこ行くかの勝負!」
机に身を乗り出し必死に訂正。言わずもがな負けたのは私だ。
一回目に両手が残って惨敗して『待って三回勝負だから!』と提案したら『しょうがねぇな』みたいなどこか腑に落ちない顔をしたけど乗ってくれた。二回目は私が勝利したのも束の間。三回目はいいところまでいったんだけど惜敗してしまった。
「あっ、そうそう。じゃあ明日はどっか行こう」




