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枠外上部に記載  作者: 吾井 植緒
聖女召還 ダイジェスト
7/8

ダイジェスト1 異世界見聞録編

聖女召還ダイジェスト版・全4話予定。

一人称にした為、主人公がまるで別人のようですが(´∀`|Д・)っ|)<中の人などいない!

朝の通勤ラッシュの行き先は、異世界でした。


なんて笑えない。しかも家は異世界に行きやすい家系だった。ますます笑えない。

紙一重過ぎて記憶に問題がある姉は覚えてないだろうが、私の祖父の家で親戚が集まると、大抵異世界に行きやすい話になり、最後は勇者になって帰ってきた話で盛り上がる。お盆に特に繰り広げられるのは、先祖の話だからだろう。ライトノベルの感想会みたいだけどな。そんな中、たまに参加している姉が言う勇者にはニュアンスだが語尾に(笑)が付いていたように思う。まあ、結局勇者をせずに帰ってきたらしいので、実質勇者ではないからどうでもいいんだが。そんな感じで祖父の家には異世界見聞録的な文書が結構残ってたりする。なぜ異世界へ行ってしまうのかまでは真面目に研究する人もいないので解明されてない。

だから私はまず、とりあえず帰れたら真面目に研究してくれる人を探そうと思った。阻止的な意味で。


「聖女って何ですか?え、あたし?帰れないんですか?」


なんかやたら綺麗ドコロが多いなと思ったら、その中で一等綺麗な子が聖女に指名されました。

帰れないという事を軽い言葉で聞かされたせいか、一部お前のせいかと聖女に怒る人も居てガクブルとなる。武器持った異世界人に囲まれてるのに、異世界待望の聖女様に殴りかかろうとは無謀な人もいるもんだ。案の定そいつは赤毛のマッチョに殴られてた。


「え、女神様が呼んだんですか!?ファンタジーですねぇ。」


聖女とは女神様の思し召しで呼ばれるようです。

じゃあ、我々は?と空気を読んで皆と顔を見合わせていたら、巻き込まれたんじゃないかとの事。適当だな、と隣に居た田中さんが苦笑したが私は聞いてない振りをした。

なぜなら“巻き込み”の理由が曖昧で適当であれば恨みは女神に行き、異世界に行きやすい家系の私が巻き込みの原因だと妙な疑いを持たれずに済むからである。行きやすいからって人を巻き込めるかと反論したいが、極限状態にいる人は何をするか分からない。多対一なら尚更だ。集団ヒステリーで魔女裁判でもされてみろ、行く末はリンチかもしれないぞ。故に私は沈黙し、その他大勢に埋没する。

誰だって自分の身がかわいい。かわいいは正義とはこう言う意味で使われるべきだ。


しかし巻き込まれたにしては。中途半端に大人数だよな。

普通本命ともう1人とかじゃないの?ライトノベルとか家の文献によれば、+1が妥当。それ以上なんて見たことない。だがそうなると自ずと選択肢は異世界行きやすい家系の私か。いやいや、電車からだから大人数になっても仕方ないよね。これで家系関係ないなら私抜きになったんだろうか。

総勢は聖女を抜いて、15名だそうな。高校生が多いのは、聖女が高校生のせいなのだろうか。どうせなら高校生だけにしろよと思わないでもない。酷いと言われても仕方ない。だが私は内弁慶、口には出さないのでセーフだ。

ちなみにこの人数を数えたのは、数少ない大人組にいた外資にお勤めのエリートサラリーマン工藤さんである。実にエリートらしい冷静さだと思う。空気を読み、埋没に勤しんだ私にそんな余裕は無い。


あー、ダルイ会社に行きたくない。このままどっかに行きたい、なんて思っていたが、異世界に行きたいとまでは思ってなかった。


「へぇ、ここは神聖王国って言うんですかぁ。」


聖女はノリノリで異世界人と会話している。

なぜなら、言葉が分かるのは聖女だけだからだ。若さなのか、ちょっとバカっぽい喋りにイラつく大人組。かく言う私もイラつき組みだ。しかし、大人ならば寛容な心を持つべきだった。このことが異世界人の大事な聖女様への悪意と見なされ、言葉が分かるようになる希少な魔道具とやらが数の関係上という建前で大人組みには配られなかったのだ。エリート共ならまだしも、しがないOLである私には一大事である。強制言語習得な事態に沈んでいると、めがね男子こと佐々木くんが慰めてくれた。まだ若いが涼やかなイケメンの佐々木くんは更に平均年齢を下げようとしたのか、高校生達のグループでなくこっちに入ると言い出した。

そこで衝撃の事実が判明。年齢で区別されたのではなく、顔面偏差値で差別されていたのだ!奴等ロリショタじゃなかったのか。いや高校生じゃショタじゃないか。高校生で半ズボンはキツイしな。


半ズボン。私はまさかこれが自分のフラグになるとは思ってもいなかったのである。


 ※


顔面偏差値の順で、聖女と高校生と城へ案内されていく。いい職業も、もちろん顔順だ。この世界は人形のように顔が命らしい。正直、侍女や騎士が良い仕事とは思わないんだが、給料は別にして自由にできるとか、特に何もせんでも聖女に侍ってれば金が貰えるとかに働きたくないでござる魂が擽られる。くそう、私も顔が良ければなぁ。ギリギリ。

残った残念な我々は大人しく呼ばれるのを待っていた。私はと言えば、平均年齢だけでなく、顔面偏差値も上げようと志願してくれた佐々木くんが優しくしてくれたので、その頃には気分もかなり浮上していた。日頃虐げられている社会の歯車な私はチョロいと言われようが、優しくされるのに弱いのだ。

そんな風にいい気になっていた私だが、実は顔だけだと思っていた審査基準に年齢も加味されていると気付いてしまった。だが、その哀しい事実はこちらに配属された高校生達の為にも黙っていようと思う。ちょっとした優越感があったのは否めない。私はその程度の矮小で汚い人間なのだ。


甘いマスクの割りに意外とシビアな佐々木くんの推測では、我々は飼い殺しコースらしい。なにそれこわい。最初奴隷とか言ったら騎士団長が慌ててフォローした結果らしいけど、なにそれもっとこわい。薄々分かってたけど、デンジャラスなんだな異世界。まあ地球じゃないから、常識からして違うだろうしな。

そうなるとこの近くで監視してやるぜ、と言わんばかりに立っている190近い赤毛のマッチョことフォローできてない騎士団長も、目と耳が二つあって鼻と口が一個あるが、我らと同じ人型生命体とは限らないと言う事だな。

何せデンジャラスな異世界。世界が異なれば見た目は同じでも、中身も同じ人間とは限らないのだ。団長の顔は洋風な厳ついイケメンで盛り上がった胸筋は大変素晴らしいが、その服の下はどうなっているのやら。乳首の数が違う程度ならいいが、想像もつかない何かが隠れているかもしれない。

そんな事を考えていた為か凝視し過ぎたせいなのか、合わせ技1本取れたからなのか。赤毛のマッチョこと団長がこちらをじっと見ていた。ヤバイ素直におしゃべりできないなんて言ってる場合じゃない。逸らしたら負けだと対猛獣のような心境で、つい薄緑の目を見返してしまった。あ、目尻に笑い皺発見。そういえば、厳つい顔のくせに口角は下がってないんだよな、この異世界人(ひと)。だいたいしかめっ面の人って常に口角下がってるよな、課長みたいに。けど笑い皺もあるし、団長って笑ったらかわいいとかギャップ萌えを周囲に撒き散らしてそうだな。でもこの顔が異世界でイケメンと思われてるとは限らんし。私のタイプでもないし。


そんな事をつらつら考えてた私は、もう少しデンジャラスな異世界に危機感を持つべきだった。


なんか、血迷った人が逃げようとして殺された。殺されたよ・・・。

大事なので二度言う。いやまて、真剣な話だ。異世界人に刺し殺されたのだ。

犯人は複数犯、神殿騎士らしい。凶器は持っていた槍だった。被害者は荒井くん。

オタク系だった為に、荒井くんは死んだと言ってもいい。自分がチートだと勘違いして判断を誤ったのだから間違ってはいない。死因はオタク。いやまて、ふざけてなどいないぞ。でもふざけないと重苦しい雰囲気に息が詰まるのも確かだ。

そうして身近で人の死に触れた事もない繊細な私は、見事その何とも言えない気分に押しつぶされた。

まさに暗転。


 ※ ※


目が醒めると知らない天井。もう使い古されたネタと言える。


異世界生活二日目の始まり。


気がついたら大部屋に収容されていたらしい。田中さんらの親切な説明を受ける。やはりというか、田中さんもエリートだった。大手商社ですってよ。そういえば家の紙一重の姉も大手商社だったな。同じ会社だったら、色々とマズいから極力個人情報は伏せていく方針に決めた。苗字すら言わないもんね。イケメンに結子ちゃんとか呼ばれるのが嬉しいとかじゃないからね。ツンデレじゃないからね。


「説明もせんとここに押し込められたわ。」


工藤さんはインチキ関西弁の使い手だ。自然なんだが、なんか本場っぽい感じがしない微妙な所がインチキ関西弁の特徴だと思ってる。けどそれで本場の人だったら困るので口には出さない。そんな私は小心者である。


「死亡帰還説か。」


帰れないという異世界的人型生命体の言う事を信じられない、地球産人型生命体であるパンクな吉井くんによりトンデモ説が繰り出された。参照はオタクな故荒井くんが持っていたライトノベル。怖えーな、ライトノベル。人死に出るんかよ。かわいい女の子とキャッキャウフフしてるだけじゃないんだ。

まあ、とにかく吉井くんによると死んだら死体が消えて戻れるかもしれないと言う事だ。尊い犠牲である故荒井くんの死体を調べようと言う事になったが、色々アレだよね。逞しいよね、地球産知的生命体って。


「あれって食事的な事言ってる?」


「場所によってジェスチャーも異なるから気をつけてね。」


田中さんに人を指差すなと窘められた。ちょっと落ち込んだ。


しかし思ったより中世でない文化レベルに安心したのか、昼食を食べる頃にはおさんどんな兵士の言葉をリスニングする事ができるようになった。リスニング、ちょっとかっこいいから使ってみたかったんだ。

とにかく何を指してるのか、単語が何となく分かった気がして気が大きくなった私は翻訳腕輪持ちである佐々木くんに色々聞いた。ウザくなるだろう位熱心に聞いた。そのせいか知らんが、なんか団長が言葉の勉強に付き合ってくれることになった。彼の個性かもしれんが、異世界人というのも存外面倒見のいい生命体らしい。お陰で片言くらいなら話せるようになっていた。食事係りの人も概ね親切だった。


異世界生活3日目は、死亡帰還説の検証だ。

そうだ。異世界人が面倒見がよくて親切な生命体という評価を訂正しておく。異世界人とは残酷な生命体だ。なぜなら自分らで殺した荒井くんの死体を我々に処理しろと言い渡したのだ。意味が分からないと首を傾げながら、死体袋を抱えた男性3名になぜか私をプラスして故荒井くんの元へと歩く。残念組みの他メンバーは他の雑用でこれまた扱き使われるらしい。

色々と見ないようにしながら、荒井くんを共同墓地とやらに埋葬した。城の従業員なら埋葬する権利をもてるそうだ。王家の城の脇に墓が持てるって事は、待遇良いって事なのかもなと思う。ここに骨を埋める気はないがな。

ちなみに検証の結果は言わずもがなだ。我々は団長に臭いと言われる位作業をした。つまり、死体は消えてなかった。そういうことだ。まあ、死んで帰還出来たとしても、私は死ぬ気はないが。


我々が収容されている大部屋にはシャワーもトイレも付いている。軟禁には持って来いという縁起でもない部屋だ。臭いと罵倒されたが実際臭いので、フェミニストな男性陣に譲ってもらったシャワーを浴びる。男性陣がシャワーを浴びてる間に着替えていたら、災厄と遭遇した。


「こんにちは、ユイ。着替え手伝うよ。」


王子様チックなキラキラした男が前に立って言った。私、ブラとパンツのみ。ちょっおまっ。

おまわりさんこいつです。とにかくこいつです。

なんか着替えを手伝われた。異世界人として地球産知的生命体に興味あったのかもしれんと思おうかと思ったが無理だった。あれは検証って手つきじゃなかった。エロ恐ろしい。団長が助けてくれなかったら大変な目に合ったかもしれん。今の私の異世界人好感度はダントツで団長。ワーストはもちろん奴、セクハラ王子こと副団長だ。


そんなこんなで私の職業が決まった。従者だそうな。騎士団所属だって。

更になんでか副団長付き。団長の従者が良かったのにと思ったら、忙しくて大変だからダメだと言われてしまった。副団長はこれでも出来る男だとフォローされたけど、団長のフォローってフォローになってないからなぁ。しかも少年ユイとして働けだってよ。おいおい、いい年して少年って。そんな誤魔化しが効くのは二次元だけだぞと抗議しようとしたが、大丈夫だからと押し切られてしまった。


そして優しげなエリート、田中さんは文官。インチキ関西弁エリート、工藤さんは庭師。間山さん、あの団長に殴られた無謀なサラリーマンはパンクな高校生吉井くんと一緒の門番。更にぽっちゃり系で意外と鋭い舌を持つ女子高生苗山さんは食堂。眼鏡イケメン高校生、佐々木くんは騎士。以上が、チーム残念の就職先。

ちなみに佐々木くんの騎士とは王家の騎士団の事で団長の部下と言うことになる。他の高校生達は侍るだけのお仕事な神殿騎士。所属が異なるそうだが、荒井くん殺害犯と一緒に働く事にならなくて良かったと思う。


 ※ ※ ※


異世界人の生態は色々意味不明で、そういう設定なんだと無理くり自分を納得させるしかない。

まず魔法。魔法が存在したんだよ。ファンタジーの醍醐味。そんで神聖王国民の記憶から、聖女と一緒にオマケが来たのを消したらしい。洗脳・・・ゴクリ。けど大技過ぎて使うと、ダウンコースだそうな。案の定、魔法使いの人は全滅。当分、休むらしい。そんでもって魔法使いは、攻撃魔法的なのは使えないようだ。出来て魔道具作成。魔法が出る武器スゲーと思いきや、ココでは剣が最強だった。魔法いらない子。切ないが電気とか魔道具らしいから、生活密着型なのかなぁ。

あと当事者としても苦しい設定、少年ユイ。なんか半端丈ズボンとか恥ずかしいカッコさせられたんだがそうと決まったら、異世界人達には少年としか見えないらしい。団長とか上層部と一部事情を知る人を除いて。田中さんが言ってたけど、そういう無茶な事でも命令書みたいのに書くとそういうモンだってなっちゃうらしい。恐ろしい。独裁し放題じゃんって思うけど、その辺は上層部の人間に耐性があってバレちゃうから悪い事はできないとか。


「だからね。たとえば、このリンゴをミカンと名付けようと命令書に書くとする。大多数の国民にはそっからこれはミカンとなるのだけど、上層部である団長には前からリンゴだと分かってる。団長がミカンになったと我慢できればいいけど『これリンゴじゃねーかよ。今更ミカンって言えって言われても違和感あって納得出来ねー。』ってなると、他に違和感があった上層部の誰かが賛同すれば、取消しって訳。」


うーん。せっかく田中さんが噛み砕いてくれたんだけど、分かり易いような、分かりにくいような。


あとは名前について。

異世界人は役付きになると名前を伏せるらしい。それが一種のステータスのようだ。

たとえば、騎士団でも正騎士は何隊の何番と序列で呼ばれたがる。佐々木くんはまだ見習いだが、正騎士になって序列が一桁になればもう名前では呼べない。せっかく異世界流で皆名前呼びになって、リア充っぽいとか思ってたのに。

ついでに従者も序列がある。一桁台になると名前が封印されるのは共通。1位はウノグラウ。団長の従者だ。私のセンパイにあたる副団長の従者はフィンフグラウ。5位だそうだ。


センパイことフィンフグラウは中々に鬼畜だ。敬語キャラなのだが、とにかく人使いが荒い。副団長も顎で扱き使う勢いだ。副団長もセンパイには頭が上がらないらしく、指示された仕事を黙々とこなしている。元々団長の従者だったってのもあるのかもしれない。上に繋がってると思ったら強気に出れないのが縦社会の辛い所だと思う。あくまで地球的解釈だが。

正騎士になれば私費でフリーの従者を雇えるらしいが、フリーの従者より城所属の方が地位は上なので雇う者は貴族位だそうだ。私もセンパイも城所属。お給料は王家から出る。日本に従者ってのが居ないからよく分からんのだが、この異世界ではなかなか権限のある職業なんだそうな。なんでも従者に主を選ぶ権利があり、気に食わないと逆に騎士がクビになるとか。各城に所属している正従者の数で有能な騎士が多いか少ないか分かるとか。上位にいる従者は戦闘特化型が多く、彼らは騎士と一緒に戦場を駆け回るらしい。それもう騎士でいいんじゃないかと思うんだけど、あくまで従者と言い張る。んで、当然と言うべきかセンパイもウノグラウも戦闘特化型従者だった。細マッチョなのになぁ。


 ※ ※ ※ ※


苗山さんが副団長に惚れたらしい。奇特な事だ。

あの災厄のドコがいいのか知らんが、語る苗山さんは恋する乙女だ。

食堂のおっさん達はメシマズしか作れんのにいっちょ前に偉そうなんだが、奴らにいびられた時にたまたま副団長が優しくしてくれたとかで、コロっと行ったらしい。

確かに見た目はバツグンだけど、アレ色々と酷いよ?女好きでとっかえひっかえ、異世界人にも歩く猥褻物扱いされてんだよ?きっとDVするよ?なぜ分かるかって?それは私が殴られてるからである。

アイツは酷いパワハラ上司だった。災厄の名に相応しい暴君だ。センパイの目を盗んでやる辺りがとっても姑息だと思う。チクらないがな、チクらないが!それでも腹が立つ。意味が分からんよ。人がこないように見張ってろという意味なのか、城の小部屋で女達とチチクリ合うのを見せたり。信仰についてどう思うとか、聖女ってヤリマンなんだぜとか言ってきたり。意味不な質問に答えさせて、気に食わないと殴ったり。色々。

提示された給料が良いから我慢してっけど、そろそろ限界かもしれん。マゾじゃないから、痛いの嫌いなんだよ。AV大好きな男子でもないから、本番なんて見たくないし。苛められてるなんて、カッコ悪いから皆にも言えないし。

でもなんか王子がさー。あ、リアル王子ね。神聖王国の王様の息子。本物の王子はミルクティーみたいな薄茶の髪に紫色の目をした、ドイツ人みたいなイケメンだ。そんな王子にはある日騎士団の詰め所の廊下で遭遇したんだが、王子って聖女に惚れて追っかけまわしてるだけの残念なイケメンじゃないんだね。召還のオマケ処分計画とか不穏な事言う怖い人だったんだね。


「副団長はお前に優しくしているか?」


だってさ。これは奴のパワハラが王子の耳にも入ってるとみた。更に王子によると、副団長は元神官らしい。余計な事だが、王子には私の半端丈ズボンを笑われた。女にしか見えないのにオカシイってさ。


「俺が聖女に優しくする分、お前は彼女に優しくしてやれ。」


そんな感じで、副団長に注意してくれた王子を私はこれから応援しようと思う。

実は聖女には神殿からこれまたイタリア系なイケメンが派遣されてて、コイツがまた聖女に惚れて王子と争奪戦してんの。流石に王子VS神官のトトカルチョに無駄金は使えないから、機会があれば神官より王子のがマシだよーって聖女に耳打ちでもしてあげようと思う。


しかし、佐々木くんの優しさは染みる。これ私が高校生だったら惚れてるね。だって佐々木くん、初めて城からの外出を許された時、案内を買ってでてくれたんだよ。やっと外出できる私の為にって、女性向けの店選んでくれてさ。お陰で災厄に、綺麗に文字が書けるようになるまでダメ、とか言って申請書類何度も着き返され、ささくれ立ってた心が癒されたわ。泣けたわ。マジで泣いた。


「城下町で暮らすのが、この神聖王国では一番安全なんだ。」


皆はこれからの事を色々考えてたらしい。私は自分の事で精一杯だからそんな余裕は無かったというのに。主に災厄のせいで。我々は今、城で暮らしてる。従業員達は城で暮らせるようになってるから、食堂とかも無料で都合はいいんだけど、やっぱり城は出たい。主に災厄のせいで。

とにかく佐々木くんが言うには、この神聖王国を出るにしても先ずは先立つモノが必要。つまり金。あと異世界情勢も知らないといけない。だから、暫く城で働くのは継続して、城下で家買って暮らそうと言うことだった。見習い騎士になって城下巡回するついでに調べたらしいが、賃貸がバカ高く買った方が安いらしい。私はベソベソしながら、このビックウェーブに乗ることにした。金なら心配いらねぇ、見習いとは言え従者は一番給料が高いからな!


 ※ ※ ※ ※ ※


ちなみになんで聖女を呼び出す【召喚】じゃないのか。

ああ、【召還】って戻すって意味ね。聖女の場合、召還(こっち)が正しい。なぜなら代々の聖女は前世が異世界人だから。魂が聖女に相応しいと女神が呼び戻すんだってさ。だから【召還】なんだと。

実は聖女の召還については、異世界人達もよく分かってないらしくてさ。情報が錯綜と言うか、秘匿されてんだよね。文官としてもエリート発揮してる田中さんが色々調べてくれてるけど、神殿が隠してるみたいで難しいとか。何しろ時期も様々。突然お告げがあったとかって神殿が言い出して、聖女が神殿に召還されたーって、また神殿が言って、軽くお披露目した後は神殿に篭ったまま。

まあ、聖女が神殿で祈ってれば神聖王国を守ってる結界が安定するらしいから、王家側もあんまり突っ込む気がなかったんじゃないかなとは思う。今回は城に召還されちゃったけどね。事前のお告げもないらしいけどね。そんな、なぜか城に召還されちゃった今代の聖女とそのオマケ。知らせを聞いた神殿もすぐに―聖女だけだけど―預かるってなったらしいんだけど、城に現れたんだからお披露目までは預かるって、王家が突っぱねたらしい。お陰で通常は神殿騎士でやるお披露目行列が、王家の騎士団でやる事になって大変忙しくなりましたわ。正装とか見るのは楽しいけどね。仕舞うのがね。

代々の聖女は神殿でその一生を終えるらしいんだけど。誰も帰ってないなら、オマケも帰れないよなぁ。帰る方法探すって田中さん頑張ってるけど、異世界で一生終える事も考えないといけないのかなぁ。

嫌だな、帰りたいな。


本編と入れ替えようと思いましたが、がんばって続ける為に番外へ。

内容は大体合ってる筈。


次回は、横内さん誘拐事件の辺りになります。

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