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枠外上部に記載  作者: 吾井 植緒
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勇者の記録 簡易版

白河家の勇者(笑)の歴史

※ ある勇者の話 ※


「勇者様、どうかこの世界を救ってください!」


跪く一同を前に、白河 (たすく)は堂々と腕を組んだ。


「ほお。」


呟く彼は威風堂々たる体躯に自信満々な表情、少なくとも異世界人たちにはそう見えた。


「だが断る。」


風が吹いたかと思うと、勇者はその場から消えていた。


「祐様、間に合ってよかった。」


「誰だ、お前。」


一緒に転移していた柳瀬 要によって勇者(笑)から脱した祐は、その後地球に戻った。


「何か知らんが、おっさんが戻してくれた。あとコイツは、何つったっけ?」


「貴方の要です。」


え?とドン引く家族を余所に、異世界から戻ったと無表情で家族に告げた祐。

異世界同様気がつくと傍にいる要と会社を設立し、独身のまま一生を終えた。


※ またある勇者の話 ※


「貴様は勇者だ。国の為に働け。」


煌びやかな衣装を纏った男を前に、白河 洋一郎は目を細めた。


「ほお。」


腕を組み、堂々たる態度は男より品格があったようにその場の異世界人には見えた。


「洋一郎様、危ない!」


騎士が洋一郎を威嚇しようと剣を向けるが、洋一郎の後に穴に飛び込んでいた松瀬 忍がその剣を弾いた。素手で。


「ご安心ください、洋一郎様。危険人物はこの松瀬 忍が排除致します。」


そう言うと、忍は細身からは想像もつかない怪力で騎士と多分王様をボコボコにした。

誰か知らんが戦ってくれるならいいかと静観していた洋一郎は帰ってきて


「あいつなら熊も楽勝だろう。」


と忍を絶賛した。忍は恐れ多いと言いつつも、洋一郎の傍から離れなかった。

異世界の話はほとんどせず、というかほぼ忍任せだった洋一郎は独身のまま一生を終えた。


※ またまたある勇者の話 ※


その日、白河 美玖は足元に出現した魔法陣によって異世界へと飛ばされた。


「これが言い伝えにある異世界か。」


召喚の為に集まっていた異世界人を前に、美玖は動揺も見せずに呟いた。


「勇者よ、魔王を「黙れ、誘拐犯」」


最後まで言わせて貰えずに、ローブの異世界人たちはボコボコにされた。

美玖の後に魔方陣に飛び込んでいた君瀬 友によって。


「あれ、君は同じクラスの君瀬さん。偶然だねぇ。君も召喚されたのかい?」


絶賛ボコられ中の異世界人は目にはいらないのか、美玖は友に挨拶した。無表情で。

絶賛ボコり中だった友は恍惚とした笑みを浮かべた。


「ええ、偶然ですわね。白河さん。そうなの、私も拉致されちゃったみたい。」


語尾に☆が付いてそうな勢いで言いながら、友は静かになった貧弱ローブたちを投げ捨てた。制服の埃をパタパタ払うが、拳について血を払うのを忘れていた為部屋には血しぶきが舞う。


「しかし異世界か。困ったな。期末までには帰れるだろうか。」


「大丈夫ですわ。あ、こんなトコロに『異世界ハウトゥ本』が。」


なぜか日本語で書かれた『異世界ハウトゥ本』により、彼女らは期末前に帰還した。


「いや~、何も言わず帰してくれるなんて親切なおっさんだったねー。」


一緒に期末テストの勉強をしながら思い返す美玖を、友は教科書なんて目に入らないとガン見だった。

適当に期末を終えた美玖は友と気ままに海外をうろついて、独身のまま一生を終えた。



※ ある弟とその友人の会話 ※


「なんか、皆一生独身なんだけど。」


「そこ?注目するトコ、そこ?」


「勇者の資質ってモテないって事なのかな。30過ぎると魔法が使える的な。」


「あー。いやいやいや。でもそうだったら切ないなー。他の兄弟結婚してんのに切ないなー。」


「そうなると姉さんは勇者だな、絶対。」


「へ、そう。てか勇者、なの?お姉さん。」


「じゃない?あの人が男と付き合うなんて考えられないよ。結子姉もありえないって言ってたし。」


「そ、そういう意味ね。いや、写真で見る限りではそう見えないけど。」


「モテないのは見た目の問題じゃないぞ。でも姉さんの場合はそういうの超越してるから。ありえないんだよ。恋愛とは無縁というか、考えさせない存在なんだ。」


「へ、へえ。なんかすごいね。あ、もう一人のお姉さんは?」


「結子姉?結子姉は違うよ。絶対勇者じゃない。彼氏いたし。なんで一之瀬さんと別れちゃったのかなぁ。いい人だったのに。」


「あ、また、そっちの意味ね。でも恋愛なら色々あるから、別れたりとかも仕方ないっしょ。」


「まあね。あー、そういえば一之瀬さんどうしたのかなぁ。暫く見ないんだよね。」


「え?」


「別れても友人として付き合ってたらしいんだけど、暫く姿が見えないって結子姉も心配してたんだよ。」


「そう。」


「うん。まあ姉さん達のが心配だし、爺さんが何か張り切ってるからそれどこじゃないんだけど。」


「そっか。大変だな。」


「そうでもないよ。帰ってくる時は帰ってくるって、そう思えるようになったし。」


「そっか。良かった。」


カフェの窓を眺め始めた彼を、中瀬 省は眩しそうに見つめていた。



煮詰まりを発散すべく、番外編。


勇者候補はハイスペックだが、大抵怠け者。

 守護者が異性を排除してるのではなく、恋愛も怠けてるだけ。

ある意味守護者が一番幸せなパターン。


省についてはお察しの通りです。守護者ではないですが。

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