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某月某日 ビョウキな人たち

 自分のことですが。

 いつとは言わない、オイラその時23歳だったという記憶が。

 7ヶ月という契約的なお仕事を済ませてさて、次なる仕事を探さねばならない、という時でした。

 その7ヶ月がけっこうハードでした。残業というものこそないのですが、とにかく気を使う職種で。そして体力も。

 終わった時には度重なるメガトン級プレッシャーから一気に解き放たれ、身も心も軽々、もう後はどんなシゴトでもがんばっちゃうからねーって気分だったねえ。

 そんな折、短期バイトでつなぐ日々の中、なぜかしつこい腰痛が襲ってきた。

 すごく酷くはないのだが、シクシクと左腰がいつまでも痛む。湿布を貼ろうが、温めようが冷やそうが、揉んでもらおうが痛みは減らず。

 そのうちに、微熱に気づく。それも、左側だけ何となくずきずきと熱を持っているという感覚が。手足指の節々までうずくように痛んできた。

 そして気づくと、湿布をはがした後の左腰に、気味の悪い水膨れが5、6個できており……日を追うごとにそれが3つ位ずつ増えてきたではないか。

 気がついたら、腰に手を当て、足をひきずるようにでないと歩けていない自分を発見。

 あまりにも痛い、ということで総合病院の整形外科にかかってみようと思ったのだがその前に水膨れが気になったのでまず皮膚科に行ってみた。

 医者は軽く一言。「帯状疱疹ですね」

 そしてすぐ点滴を、と言われて奥の処置室に寝かされる。

 人生初の点滴。心臓バクバクではあったが、腰の痛みと微熱の辛さであんがい嬉しかったりもして。

 その時にはすでにかなり症状は酷くなっていたためか、フラッシュのような光や急な騒音に出あうとビリビリっと電気が走るような激痛が患部に走り、とにもかくにも早く楽になりたい、という思いしかなくて。


 うつらうつらしながら約1時間の点滴をこなしている最中のこと。

 処置室のカーテンの向こう、何人目かの患者さんがお医者さまのところに訪ねてきた声が届いてきた。

「先生、いつもお世話になってますう」

 おばあさんらしい声が響いてくる。

「主人もずっとお世話になりましたしぃ」

 どうも、夫婦そろってこのお医者さまにかかっていたらしい。お医者も鷹揚にうなずいている様子。

「そうそう、旦那さま、帯状疱疹でしたよね」

 オイラ、むっくりと半身を起こした。なんと、同じビョウキとは。

 そしてカーテン越しに耳ダンボ。

「はい、あの節はホントウにお世話になりました」

「いかがです、旦那さまはお元気ですか」

「それが」次のことばにオイラは凍りつく。「あれからすぐ、亡くなりまして」

「えっっっ!?」医者も驚いている。

「何ですか? 帯状疱疹で?」

「はあ……最初は左だけだったんですが」

「ああ……全身に回っちゃったんですね」

「はい、結局処置が遅くて全身に」

「それは、お気の毒さまでした」

 全身に……そう言えばどこかで聞いたことがある。帯状疱疹はまず神経組織のどこか一部分を侵す。それから左か右半身のどちらかに、そしてついには全身の神経にまわる、と。

 そのおばあさんが帰ってから少し間ができたのか、医者がやってきた。

「どうですか? 少しは楽になりました?」

 オイラ、無言のままうんうんとうなずく。

「どうする? 明日も点滴に来られるかな? それともいっそのこと」

「入院させて下さいっっ!!」

 即答でしたね。そして入院決定。

 最初の4日は点滴三昧でした、そして腰の水ぶくれがすべて潰れて膿みも乾いてパリパリになった10日後にようやく退院と相成る。


 水ぼうそうのウィルスが少しオトナになって入った時に発症の可能性あり、と。そして、大きなストレスから開放されて気が緩んだ時に症状が出やすい、と。

 皆さまもお気をつけて。


 


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