某月某日 骨折りな損得な話
たいした怪我ではなかったんですが、骨は一度だけ折りましたね。
これもかなり以前、アルバイトで某有名企業に勤めていた頃。
夜もまだ早い時間、疲れて寝ていたところに、急に会社の同僚から電話が。
あわてて二階の部屋から階下へ向かう時、寝ぼけていて最後の一段をみごとに踏み外し
「……」つう感じで電話に出ると相手は
「あーかっちゃーん(当時そう呼ばれていた)、休日出勤行ったら、表に停めといたチャリ盗られちゃったーーーー(泣)」
うんうん、とさんざん愚痴をきいて電話を切る。
翌朝起き出したまでは良かったが、どうも昨夜ひねった右足の小指から五センチくらい中の方が痛む。
よく見ると、腫れてはいないもののやや黒ずんでいる。
特に気にせず会社へGO! 車で20分、電車で20分、歩いて10分。
朝のラジオ体操中、どうにも痛いなあ、と思い会社の隣にある外科医に出かけてみる。
すぐレントゲンを撮った。
そして言われたのは「しっかり折れてるねー」そしていきなりスネから下のギプスと松葉づえ。
ものすごい格好で帰った会社で大笑いされる。
それから毎日の通勤は、車(アクセルとブレーキはなんとかカカトで使いこなせた、ギプスには一応ゴムでカカトもついていたが「できるだけ使わないように」と念を押された)
そして電車、そして徒歩。
荷物は全て、リュックで背負って。
有る朝、タイムレコーダを押している所に他課の課長から
「おっ、東京ぼん太だね」
と言われる。知らんわそんなの。
営業同行にもその姿でついて行く。話の弾まない顧客であっても、さすが両杖ついてギプスの姿をみると「どうしたんですかー」と聞いてくれるんで、営業にはたいそう重宝がられた。
街角で新興宗教に掴まった時も
「アナタの幸せをお祈りさせてください」って言われても
「だったら駅までそのチャリの後ろに乗せてって下さい」
と、平気で言えるようになったし。
電車内の地位は微妙。
すぐに席を譲ってくれる人もいれば
「とりあえず杖あれば立ってられっしょ」
みたいな目もあるし。でもねー、実際松葉づえ使ってわかったのは、
「メチャクチャ、脇いてーーーー」でしたね。
骨折から一ヶ月半後。再び外科医を訪ねました。
ギプスを見たお医者、まず一言目に
「カカトがすり減ってますね……」
だった。
だってその頃社会人生活の中で一番忙しかったからね~
接待の席もギプス。もう営業ネタにするっきゃ、使い道はないでしょ。
治りが早いわけはなし。それでもどうにか2ヶ月たったころにようやくギプスは取れました。
無理して歩きまわったせいで、今でも寒くなるとその部分がしくしくと痛むし。
まあ、骨折ってみて見えるものも色々あるっつうことで……お粗末さまでした。




