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某月某日 「死ぬには良い日だ」というと大安とか?

 作品のテーマによく使うものに『死』がありますが、これはある程度年齢がいってくると、どうしても向き合わざるを得ない内容かなあ、と思ってしまうわけで。

 これは、ジブンが暗いとか湿ってるとか問題多いとか言うより、書いて何か遺したいという人間には在りがちなことかとも思えるんですが。

 

 オイラがこうしてオンラインによる投稿を始めたのは、実は案外日が浅く昨年の今頃からでした。

 それまでは2003年頃から自作サイトやブログやらで徒然なるままを綴ってはいましたが、完全創作というのは、妄想こそすれ、決して外に出すものではないのでは、とずっと思いこんでいたんですね。

 その前までずっと一人でコツコツと創作ものを書き溜めていたのです。しかし何か、悶々としたものを抱えていたのは確かでして。


 公募や投稿など、何が発表のきっかけになるかは人それぞれかと思うんですが、自分の場合、ン十年前にみたある秋の景色がスイッチとなっていて。


 急に冷え込んだ朝早い時間、一人で遠い街角を歩いておりました。

 ひとりきり、何のあてもなく、何のアイディアも望みもなく。

 そんな時、歩道の端に並木から外れた樹が一本。あまり大きな木ではないのですが黄色い大きめの葉がそれぞれの枝にしがみつくようについておりました。

 一枚いちまいの大きさは、手のひらくらい、柏か何かのような、はっきりした形の美しい葉が、ゆらぎもせずにじいっととりついていたのです。

 風もなかったんですよ。

 それが、歩いて近づいた時、急に何かが合図をしたかのように、はらはらと散り始めたのです。

 ぱち、と枝からもげて、ゆらめきながら地を目指し、白く冷たい歩道にかさ、と音をたてて落ちる、一枚、そしてまた一枚、次から次へと黄色い葉は枝から離れ、落下という最後の旅を経て、その樹の周りを覆って行きました。

 都市部だったというのに、早朝ということもあり周りの音はほとんど耳に入らず、なぜか、葉が樹からもげる時のぷち、というような音、散っていく時の冷気を軽く切っていく音、地面に当たった時のかそけき擦過音など、すべてのそれにまつわる音が耳の中にくっきりとした陰影を刻みこんでいって。


 その場に立ち尽くしたまま、葉の散る様子を見守るわずかな時の間に、樹は丸裸になってしまいました、先ほどまで普通に黄葉を蓄えた広葉樹であったはずなのに。

 

 この景色は、今でも夢に出てくるほど強烈でしたね。

 この樹の映像とともに、以前聞いたインディアンの科白「死ぬには良い日だ」ということばが、ずっと頭の中で鳴るんですよ。


 しかしそれを見た時には特に何もアクションは起こさず、他にやりたいことをさっさと始めてしまったんですがね。


 なぜでしょうか。

 去年の秋、なぜか「今、投稿せねばならない」そう思ってしまった時に、自分の目の前にその樹が再び、鮮やかな黄色と共に姿を現したんですわ。


「死ぬには良い日だ」とつぶやいてね。


 自分の「生み出す」動機がカラっとしている割に何故かほの暗いのには、多分そんな事情があるのかも知れませんです。


 いい事、悪い事なんて判断基準ではなしに。単なる季節の変わり目という感じで。

 それはそれで、自然なことなんでしょうかね。よく分からんのですが。

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