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某月某日 地下水脈の龍

今回は案外地味でまともな内容かと。


昨日、古い友人が訪ねてきてしばし楽しいひと時を過ごしました。

この人は以前、旧水窪町(現在浜松市天竜区水窪地区)に数年居をかまえていたのだが、転勤に伴いそこを離れ、以来、時おり同地区を訪ねては四季の移り変わりを楽しんだり旧交をあたためたりしているらしい。


「そういえば」以前から気になっていたことを聞く。

「水窪の山の中に、七年に一度しか現れない池があるんだって?」

 そうそうそう、とすぐに友は話に乗ってきた。

 車を置いて山道を約1時間半上ったあたり、標高百mに近い、尾根すぐ脇の杉ばえの中のややくぼんだ場所に、なぜなのか7年に一度だけしみしみと水を増やしながら池となる場所が存在するのですと。

 池の規模は最大時には縦横が70×40メートル程度、深さ1.2メートルに達するという。

 山の上にですよ、それも川などがないような杉やヒノキの林の中。ロマンだ。

 

 数日のうちには水はまた自然にひいてしまうとのこと。


 もちろん、「池の平」という名称で遠州七不思議のひとつに堂々と入っているので、不思議大好きな方には案外メジャーなお話かも知れません。


 自分、実は以前相方とここを訪ねたことがあって。

 つうか、「7年に一度、山の中に池ができるらしいから行って見てみよう」

 というノリだけで相手を誘い、かなりな山の中へと車で出かけていったのでしたが、

 たどり着いた時にはもう辺りはすっかり夕暮れ。しかも、開いていた(多分)酒屋の人に教えて頂いたところ、池は山道を歩いて1時間以上もかかる場所の上、今年は池が出現しない年で……と申し訳なさそうに告げられ、おめおめと引き下がってきた記憶が。

 それからずっと相方からは

「マボロシ、どころか無い池見に行ったよね~昔」と、いまだに責められるネタとなってしまいまして。


 それから少し、池のことを研究したのですわ。

 過去の出現年は、

1954年(昭和29年)、1961年(昭和36年)……と1989年(平成元年)まではきっちりと7年周期、それから何故か9年後の1998年、それからまた遅くなって12年後の2010年。2011年にも一瞬だけ確認できたという話も聞いたが、すぐ水は引いてしまい、本当に湧きだした水だったかは不確かだったようで。

 

 ただ単に雨水が溜まった訳ではない、この「池の平」。高根城から逃げた婦女子の無念の涙である、とか現御前崎市佐倉にある「桜ヶ池」から諏訪湖に渡る龍が途中で休むために湧き出した池である、などとまことしやかに語られたりもしている。


 友人と、しみじみ

「龍が地下を通って諏訪湖まで行くんだって、なんかすごいよね~」

 と茶を飲みつつ語っておりました。


 想像するだけで楽しいな、地下水脈をぐんぐんと辿る龍とかさ。まだまだ日本にはもののけの生息できる場所が残っているのかも、と。

……リニアのルートとぶつからねばいいがね。


 あとさ、地下ばかりではないが水の流れに乗ってどうしようもないバケモノが拡がり行こうとしているのが、なぜか連想の中で繋がってしまってさ。


"Let me assure you, the situation is under control."

(保障させて頂きたい、状況はコントロール下にある、と)

この言い回しも頭の中でぐるぐるしている。

 地下だけでなくこの森羅万象が絡みあう世界、我々ニンゲンに本当に制御できるのか、何かと疑問は多いのだが。


 7年にいっぺんの謎すら(微妙に周期がずれたことも含めて)解明されているわけではないのにね。


 ああ結局思考はほのぐろく染まる。ニンゲンはもっと良くなる可能性がある、そう信じているはずなのにね。

 いかんいかんと秋のひと時……反省です。

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