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某月某日 恐怖の地道な積み重ね作業

※ 以前、自分のブログに似たような考察を載せたことがあったかな。

また近頃強く思ったこと。

 前回に引き続き、『怖いもの。特にスピリチュアリティに関する世界について』。

 『信じていない』という割に、この手の話が好きなのだね、何だろうね。


 これも『甲地街道の家』絡みのお話だが、戦後間もなく、その近所で寄り合いがあった時の話。

 漁師さんが一人一尾ずつ、新鮮なサバを分けてくれたのだと。みな、喜んで家に持ち帰った。

 そんな中、二人の男がサバを持ったまま帰路にある小さな峠を越した時のこと。

 一人はちゃんと新聞紙に包んで手に提げていたのだが、もう一人はなぜかそのまま懐に入れて運んでいた。

 新聞紙の男は実はものすごい怖がりで、峠を歩く時も、つい最近出たと噂される狐に怯えながら、キョロキョロしていたらしい。サバは狐がいかにも好物そう、狙われるのではないか? 化かされるのでは? 大の大人なのに、そんな心配をしつつひたひたと砂利道を行く。

 ふと、脇の男に目をやった時、彼は「ひっ」と叫んで飛び上がった。なんと、連れの胸元からうっすらと燐光が立ち上っているではないか。

「で、で、でた~~~っ」

 怖がり君は、だっと一目散に峠を駈け下って逃げていった、懐にピカピカ光る生のサバを持って、きょとんとした顔で立ちすくむ連れを残して。


 まあ、それから『サバ恐怖な男』と呼ばれたかどうかは知らん。街灯すら満足にない、そんな事は日常茶飯事な暗闇な時代だしね。


 しかし、そんな疑心暗鬼、というか心の闇果てしなく、つうかそういう流れは現在まで脈々と続いているよな。

 前回述べた『心霊スポット』の話然り。


 ところで、ここ田舎でも近頃とんと聞かなくなった言葉に

『ヤミダ』というのがある。

 これは、どこかの耕作地、または元耕作地を指して

「こないだ行き倒れがあったけど、あそこはヤミダだしね」

「車が突っ込んだあそこはヤミダだった」などと言ったり(主に高齢者が)。

 気になって調べてみたらweblio辞書の『歴史民俗用語辞典』に

(1)赤病・黒病・いもちなどの害を生じて稲の生育がよくない田。

(2)耕作することを忌まれる田。

 とあった。つまり『病んでいる田』すなわち病田(やみだ)、なんですね。

 これは、我が地域近辺ではどちらかというと2の意味が濃く使われることが多い。

 どうも、元々は山陰や何かの要因で生育の悪い耕作地、持ち主の努力に見合わずフデキなことが積み重なって、その原因を外部に求めているうちに何故か悪い評判が立っていく、そしてその悪い評判が上塗りされて意外と有名になるというパターンのようで。


 これって、心霊スポットの中にも当てはまるものがあるのかも。


 最初は誰かが(つまず)いた程度の場所、そこに次なる者が躓く。そして対処もされないまま次つぎとひとが躓き、ゴミが吹きだまり、枝が折られ、タチションのメッカとなりそのうちに車が突っ込み……


 油絵を描いていた時にも、先輩から『山が山をよぶ』と言われたことがあった。

 少し盛り上がったところに、次々と絵具が乗って、そこが大きく膨らんでいくって感じだったかな。

 そして会社員時代には、隣の席の先輩がこう言ってたな。

「何かちょっと気になるな~って問題をうっかり放っておくと、後で大問題になってることがあるんだよね、よく」

 この考えでいくと、場所自体にはびっくりするような特異性はないものの、そこに『引っかかる』人間がいて初めて小さな差異が生じ、そこに複数の人間の「あれっ?」が絡み始めて誰かがそこに『負の繋がり』を感じ始めると、そこには更に、負のエネルギーが溜まり始めるのだろうか。


 地球上がどんどんと負のエネルギーで覆われていく、そんな妄想が破滅論者のオイラにはお似合いだなあ。この世の終わり、破局、カタストロフィ……

 日常茶飯事に埋没しながらも、そんな夢をみている自分は確かに『病んでるニンゲン』のひとりかも。


 しかしね、そこから先にちょっと踏みこんでみると。

 全ての人類が死に絶えたこの地球上、砂漠とか、ジャングルとか、一面の荒れ地とか、まあ何でもいいんだけど、骨とかゴロゴロ転がってね。

 そこにさんさんと降り注ぐ太陽、青い空に白い雲。そよぐ風。


 人間誰ひとりとして感知しないそんな世界を、今から想像してみてうっとり。

 なんとのどかな光景なのだろう。

 少なくとも、ヤミダや心霊スポットを心配する人間は一人もいない健全なる地だね。

……なんか悔しいなあ。


 やっぱりドロドロでも、みんなで生き続けましょうぞ。このヤミの時代を朗らかに。

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