某月某日 蛇にビアーっすか?
アクジキ系のお話ですので、苦手な方はごめんなさい。
そして案外ニンゲンは残酷。それは分っちゃいるが。
近頃、1つ離れた通りの住宅地に突然救急車がやってきた。
日中のことで、表には数人、様子見の人が出てそちらをみやっている。
後から聞いたが、犬の散歩中、マムシに噛まれたとのこと。
この近辺、今年はマムシの当たり年だとか。現場の草むらにはこの夏に入ってからすでに数匹の個体が確認されていたらしい。
アンタも犬の散歩には気をつけて、草叢に入らないように、と近所のオババ様から諭されて神妙に御礼を述べる。
マムシは、近所の古老たち曰く「卵ではなくて子どもを産むのでよけいに危険だ」なのだと。
調べたら、本当のことらしく、『卵胎生』というらしい。
いくら田舎もののオイラでも、実際にマムシというものをみたのは数える程度。たまたま運がいいだけなのかも知れないが。
マムシによる被害は実際あとを断たず、すでに10年程度前になるが、うちの2件先の家で、夜半にいとまを告げた来客が玄関先の暗がりでマムシに噛まれ、電話で呼ばれたうちの父親が病院まで送って行ったことがあった。
それでも、噛まれて死んだという話は身近では幸い聞いたことがない。
以前、友人とふたり、佐倉市の国立歴史民俗博物館を訪ねた時のこと。
博物館へ向かう、やや長い丘の道をふたりでおしゃべりに夢中になりながら歩いていた時、少し離れて前を歩いていた中年の男性が急に、左にある生垣から大きく飛び退り、ふり向きざまに私らにこう言った。
「その辺にマムシがいるから気をつけて、臭いがした」
後から家に帰った時に母に聞いたら、確かにマムシは近づくと青臭いので判る、と。
稲刈りの時に、出産にあたったマムシが枯れた田に潜んでいることが多く、この時にも青臭い匂いには注意するのだと。ホントかな。
「そりゃそうと、ヘビの炊き込み懐かしいよね」
と母。
昭和初期くらいまでに見たらしいのだが、土鍋で蛇炊き込みご飯専用のものがあったと言い張る。
どんなものか聞くと……
普通の土鍋とほぼ違いはないが、重い蓋のまん中にちいさな穴が空いているのだと。
中に蛇と米と水を入れて炊きこむと、あまりの熱さに蛇がまん中の穴から頭を出す、しかし穴が小さいので外に逃げることはできず、そのままご飯と一緒に調理されてしまう。
炊き上がったところで、上に出た頭をつまんでひっぱると
「骨だけ上がってきて、身は綺麗にはがれてご飯の上に残るんだよー」
想像するだけで恐ろしすぎる。
マムシもお酒にする時には、まず伏せたザルの下で飢えさせて完全に食べたものを排泄させてから、生きたまま酒に漬けこむ人もいるとか。
ザルに手を突っ込んで、気がたった蛇に噛まれたという人は多いらしいが。
やっぱり、いちばん恐ろしいのはニンゲンかと思います。
オイラは蛇が好物でなくてよかった。少し離れたところから温かく涼しく見守りたいと。
三毛猫たまさま、誤字ご指摘まことにありがとうございました!
×国立歴史民族博物館
○国立歴史民俗博物館




