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某月某日 蛙狩令、今日も

 この梅雨は雨が少ない割に天気が安定せず、いつもジメジメじくじくとしている。


 そんな中、生後6か月の柴犬系雑種のわんことお散歩。

 わんこはまっしぐらに道を行く。向かうはそう、あの田んぼ沿いのドロドロ用水路。

 コンクリート部分なんてほんの僅かしか見当たらない、ほとんどが単なるドロ地のくぼみ、草が茫々に生い茂ったそこには季節がらもあって溢れんばかりの水が流れている。


 わんこが今、夢中なのはカエルとり。

 獲る、と言っても食べたい訳ではない。あの、ぴょんと跳んでぴちゃんと泥に落ちる、あるいはすいっと水底に潜水する、そんな彼らをどこまでもしつこく、追いかけて行く。

 仔犬といえども既に成犬並みの大きさと力、カエルに合わせて急にあちこちに跳ぶたびにリードを掴んでいるオイラまで泥流れの中に落とされそうになる。


 カエルって案外単純。逃げるにしても前ジャンプか横ジャンプかUターンジャンプか、とにかくフェイントジャンプで逃げまくる。

 しかし追いかける方のわんこも単純で、ばしゃん、と流れの中まで追いかけては鼻面まで水に突っ込んで水を吸い込み大げさにむせたりする。


 たまに、それでも捕まえることがあるのですよ。たとえ仔犬でも。

 そんな時のわんこの貌ときたら、アンタ。

 シャイアン族の戦いの時のような。泥装束の下の顔は瞳を爛々と光らせしかし生真面目な口もとで。

 そして何が怖いって……咥えたカエルを口から離してから、ぐったり白い腹を晒した遺体(または半死半生)の蛙に口の端から首筋、肩そして脇腹までを何度も擦り付けるのです……うっとりとした表情で。


 カエルも、先祖代々こんなわんこ共と闘っているんだろうに、もう少しジャンプを工夫した方がよいのでは?


 いやはや、のんびり暮らしているようなカエルも、実は酷い戦いの中に生きているのだなあ、と。

 先日も、この用水路の果てが乾いて終わっている場所で、犬が嬉しそうに体をこすりこすりしているなあ、と思ってその下に敷き詰められたような黒いツブツブをよくみたら、それは水場が干からびて半ミイラとなったオタマジャクシどもであったし。


 一番びっくりなのは、田んぼの泥の中にようやく潜り込んで冬眠していたと思ったら、冬の間にそこが造成されちゃって、しっかりアスファルトで固められちゃって、月極駐車場なんかになっていたり、とかね。


 舗装された地面の下に埋もれた様々なものを妄想しつつ、オイラは蛙狩ダンスをいつまでも見守っておりましただよ。



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