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某月某日 『額に穴』の猫を偲んで

犬猫の扱いについて、やや残酷な表現がありますが過去の事実ということでご容赦ください。

 出先から帰ってみると、ちょうど電話が。

「ぴーちゃんのうちだけん……」方言丸出しで、しかもぴーちゃん? 誰やアンタ。

 しかしすぐ思いつく。近所のおばちゃん、茶トラのピーコ(♂推定7歳半)の飼い主。

「ぴーちゃん、今朝死んじゃっただよー、悪いけん、エサの残ったの貰ってくれる?」

 ぴーちゃんは、うちの飼い猫|(♀、この五月で7歳)と柄がそっくり、歳も近いということもあり、よくうちの猫のところに遊びにきており、まるで恋人どうしのように仲がよかったのです。

……まあ、うちのコは早く避妊手術しちまったので、実らぬ恋ではありましたが。


 と、まあそれはともかく、早速お悔やみ兼頂けるものを頂きに伺う。


 オスなのになぜかピーコ、

 彼はなかなかにハンサムなヤツでありましたが、やはり(おとこ)でありまして、旅に生き、喧嘩上等を信条としていたおかげで生傷が絶えず。

 ついには数年前、かなりの深手を負いました。

 なんと、額に大きな傷が。


 不幸にも、猫を獣医に連れて行くという習慣のあまりない田舎家ゆえ、彼はそのまま放置され、とうとう傷は塞がりきらずに直径1センチ程度の穴となってしまった。

 見かけるたびに、黒くただれていたり赤くドロドロしていたり、急に茶色く乾いていたり、その時の状況で傷は色々な様相をみせ、そのおばちゃんが

「あのね、その穴から呼吸もしてるし。息ん漏れてるだよ」

 としみじみ言うまでに。それでも出歩いていた猫、そして放置していたお宅はかなり、ワイルドでした。


 つい先ほど、ワンコの散歩ついでに訪ねていく。

 病院には、かからなかったんですね、とようやくおずおずと尋ねてみたら、うん、ぴーちゃん病院が嫌いだったもんでね、としごく当然の返答。恐れ入りました。

 それでも最期まで、野趣あふれる大好きな家の近辺で過ごせたのは、ある意味幸せだったのかなあ。

 うちだったらさっさと病院には連れて行くだろうが、それでも、おばちゃんの一途にピーコをおもう気持ちが、「食べやすいエサを色々選んだんだけん、最期はなかなか食べなかった」と言って渡してくれたエサの豊富さにも、それとなく表れていて。


 そのままわんこの散歩に近所を歩く。

 河原の脇を通った時、ずいぶん昔に、土手の草むらに大きな犬が捨てられていたのを思い出した。

 これも近所で飼っていた立派な猟犬だったが、ある日、そこのおじさんが敷地で軽トラックをバックさせた時、誤って轢いてしまったのだと。

 腹部に大きなケガをして、脚をつぶされた犬は「もう助からないから」とそのまま、土手に捨てられてしまった。

 ずっと切なげに泣いていた犬の声が、我が家のあたりにまで時おり響き、子ども心になんとかならないものかと胸を痛めたのを、つい昨日のことのように思い出してしまったですよ。


 当時はそれこそ、獣医なぞ牛や馬の病院でしょう、というくらいペットに対する認識は低かった。

 ゆえに、一概にその家も責められるものではないが、それでも幾らなんでもあれは非道いだろう、という会話は家庭でも出たような気はする。

 翌日には、もう泣き声は聴こえてこなかった。草むらをおそるおそる覗きに行ったが、犬の姿もなかった。

 夜には、捨てたおじさんも何かしら感じるものがあって連れ帰ったのだろう、とその時思うことにした。確認はしなかったけどね。



 避妊についても、実際は犬猫はどう感じているのか……

 どこまでがペットとして動物を尊重する態度なのか非常に難しいと思うが、今日はピーコの冥福を祈りながら、動物たちについて、ちょっと深く考えてしまったのでした。


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