【うらしま太郎2】
玉手箱を空け一瞬にして年齢を重ねてしまった事により、うらしま太郎は今まで自分自信がやって来た事を後悔し、嘆いていた。
ただ1人時代に取り残された男は、一心不乱に夜の町へと繰り出しては、大量の酒を浴び、自分自身を忘れるかの如く、店から店へと歩き渡り、更に大量の酒を浴び続けていったのだった。
そして、この時代、激しいバブルの低迷によって、時代に対応出来ない者達は職種困難というあざとい仕打ちを受け、この日も、うらしま太郎は、とあるIT企業への面接へと足を運んで行った…。
「えーー。うらしまさんねー。学歴は無し。経歴も特にコレといって目立ったものは無く、いじめられていたカメを助けたくらいじゃ話になりませんよねー、実際…。趣味、特技に関しては、釣り…ですか?まぁ、その様な事が書かれてはありますがー、まぁまぁまぁまぁ、うちではどう活かす事も出来ない様なものなのでねー、今回はごめんなさい」
自宅のアパートに帰り付くなり、うらしまは泣いた。
自分がカメを助けたという事への後悔。そして、絶対に開けるなと呼び掛けをされていたにも関わらず、その玉手箱に手を掛けてしまった事に対する自分自身の軽率な行動…。
その全てにうらしまは涙を流していた。
そして、頭に思い浮かぶのはいつも、タイやヒラメの枚躍りや、乙姫様の笑顔であり、ただ、ただ、それを思い出しては涙を流す事しか出来ず、例え時代が進んでしまえど、年齢さえ若いままの、玉手箱に触れる以前の、あの日の若い姿であれば、その若さを利用し、肉体労働をしながら日銭を稼ぐという道だってあったという事や、次から次へと自分自身の頭を過る沢山の後悔に、更に涙は出続けていった。
めでたし。めでたし。
(はい!おしまい)
いぇい☆