祇園
京都のエンターテインメント
京都駅は混雑していた。
「京都へようこそ」
入り口近くでチラシ配りの男が言った。
黒澤と花、楠木と蛍、皆伐と静香は、京都駅を偵察に来ていた。
花と蛍、静香は、今日は着物だった。
それに目を止めた男は、慌てて花の前に立った。
「京都へようこそ。京都劇場には、もう足を止めました?」
花は、チラシを受け取りながら男の顔を見た。
丸坊主に着物姿、その風変わりな格好に皆、足を止めた。
「見たところ、祇園とお見受けしましたが、あっしには、敷居が高く、到底行きつけられないしょばじゃけ」と、男は、頭をかきかき言うのだが、花は、どこか身分の高さを感じていた。
「観劇は、好きじゃけ」
蛍がしゃしゃり出てきて言った。
「そうまっしゃろ。今夜、六時からじゃけ」
男の言葉に、花はチラシを見た。
ー銀河鉄道物語、当日券一万二千円
「お前さんの役は、何じゃけ?」
静香が聞くと、男は、「祇園さんには、かないませんな」と、言い、「京都駅には、着物でも買いに?」と聞いて来た。
「チケット買おうか?」
いきなり、黒澤が言った。
男は、黒澤の言葉に面食らった様子だったが、すぐに陽気に言った。
「おおきに。時に、喫煙室はどこじゃろか?」
それには、楠木が答えた。
「ここから出てすぐじゃけ」
男は、「おおきに」と言ってから、花たち六人を見た。
「直接、京都劇場に来て下され。わっちの名は、結川将暉と申します」
凛とした物言いに花は惹かれた。
黒澤が、結川将暉に札を出していた。
祇園のはずれにある、南座、これは、黒澤の手に落ちず、咲坂の父に任せた経緯があった。
結川は、京都駅を出て、喫煙所に入った。
「税金の関係じゃけ。タバコはすだれるじゃろな」
静香は、さもさも自分は関係ないと言った風だ。
「俺は、どれほど値上がっても吸うじゃけ。これこそが、喫煙者の心じゃが、わては、最近セブンスターをやめて、ピースにしたじゃけ」
皆伐は、素のままである。
「ワンカートン六千円じゃけ」
蛍はそう言ったが、かつては、ピアニッシモなど吸い、郷に浸っていた。
黒澤は、花の肩を抱きながら、「先に行くじゃけ」と、京都駅の階段を上った。
銀河鉄道物語は、結川将暉自身が主役を演じ、迫力のある演技を見せていた。
祇園に欠けていたもう一つのもの、それは、宗教である。
結川将暉は、カソリックの古い教皇の血筋であった。




