超越の勿忘草
教室の机の上で夢をみた。
大量の魔導書のある図書室に篭って魔法陣が踊る様を。
勿忘草をひと束持って銀髪の女の子に差し出す様を。
嬉しそうに受け取っていた気がする。起きた頃には魔導学園の昼休憩間近でレナという幼馴染が俺の目覚めを待っていた、レナはある言語では輝きという意味を持っているらしく良い名前だなぁと思う。
ふと俺の肩に子供のドラゴンが乗る、この国ではドラゴンと共存する文化があり世界中の中では栄えている。方の文明を持つと言える。太古の世界では人間とドラゴンは争っていて各々陣地を奪い合いしのぎあう。しかしある日、人類は争っていても勝てないと知り勉学に励み4000年の時を経て共存関係となった。これが昨日の歴史授業の中身。
というのを寝起きの俺に相棒の頬をつつきながら復習してきた、勉強熱心だね。
昼のチャイムが鳴り響く。いつも通りお互いの弁当と相棒たちの餌を出して雑な昼食が始まる。
「なんか微妙にうなされてたけど夢でもみてたの?」
「またあの夢」
「ふーん、浮気者! けっ」
ついでにレナの相棒猫もけっ。って本も食ってるし……、ペーパーレスが捗るなぁ。
「そうそう、午後の最初の授業は占いについてだよ。五芒星の不死鳥のお兄さんが来るんだって」
「ふーん」
「……もうちょっと真面目に答えてよー」
「楽しそうだね」
何せ夜更かしして上手く応答出来ない、目覚ましに相棒猫に顔を引っ掻かれた。
ある世界線では占いは胡散臭い物と思われ扱われていない、寂しいもんだがそれも1つか。
こんな感じでダラダラと時間が過ぎていく。
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午後の授業が始まる直前、俺だけ職員室に呼ばれる、まあ寝てたしな。違う?
女性の教頭先生がとんがった赤い眼鏡を光らせながら待ち構えていた。
「近頃、異世界のゲートが開きそうなんですがッ」
「がッて言われても」
「魔力を使った探知をした所あなたに反応が強い、知りませんか?」
「まあ、変な夢はみるようになったぐらいですよ。あるとしたら」
「ほう」
細かく説明する、すると神妙な面持ちで椅子に座り込んで何も言わなくなった。
少ししてまた口を開いて夢は本来記憶から生成される生理現象、俺の心当たりがまるで無いなら向こうの世界の女性から呼ばれているのかもしれない、と言い始めた。大人の世界は難しいなぁ。
やがて本当に心当たりがないと思ってくれて途中の授業へ戻る。あー緊張した。
廊下を歩く、主に木製の建物で時々植物っぽい香りがする。だから廊下を歩くのは好きなんだ。ってこんな時間に歩いてる生徒がいるぞ、見覚えがある?
そのまま俺とすれ違う、あんな生徒いなかったよな、っていうか夢のあの人?
気のせいだったら俺が不審者だし、でも気になるし。
「あの!」
「……えっ、ああ、見なかったことに!!」
「逃げちゃった」
彼女の走り去った跡に勿忘草が1つ落ちていた。何となく予感がよぎって校舎外のグラウンドに行く、今日は風が強く吹いて土煙りが舞う。
「あの! やっぱり君は」
彼女は近寄ってきて僕にだけ名前を告げた。




