第一旅 住道→金蔵寺の旅 2幕
住道から西に走る上りの列車は、そのまま京橋駅で東西線に名を変える。
京橋駅の先から、長い地下区間にもぐり混んでいく東西線は、大阪の中心市街地を地下で潜り抜け、尼崎駅手前でふたたび地上に昇ってくる。
「先輩、尼で乗換ですか?」瀬戸が尋ねた。
「うん、新快速に乗るよ」と伸司。
尼崎駅、降り立つホームの発車案内表示機は、西へ急ぐならば隣のホームへ、と、大きな右矢印をピカピカと主張させていた。
橋上のコンコースを通り、離れた番号のホームへ移ろうと、階段へ足を向けかけながら、伸司がカーキ色の帆布のショルダーバッグから、使い込まれて角の塗装が薄くなったカメラを引っ張り出す。
それを見て瀬戸が言う。
「そういえば、先輩にそのカメラではじめて撮られたのもあの日だったなー」
「矢立が入部した日か? そういえばそうか」
言いながら伸司は愛機の電源を入れ、バッテリーと撮影可能枚数を確認した。満充電、4150枚。問題ない。小さくうなずくと、電源を落とす。
「あれ? 撮ってくれないんです?」
瀬戸が小首を傾げた。
「こんなとこじゃな。お前を撮るなら、もっとマシな光が欲しい」
ぶっきらぼうな口調に隠された褒め言葉の意味を、わかってかわからずか、瀬戸は唇を尖らせる。
「ざーんねん、あの時は、気付いたら撮ってくれてたのに」
「あの時はたしか、『駅の音がワクワクするんだ』って、アツく語りだした嬉しそうな矢立の表情がよくってさ、そこに桜吹雪が舞って、やたら綺麗で、つい、シャッター切っちゃったんだよなぁ」
「やたら綺麗・・って、なんかそんなこと言われたら、どうにも もやもやしちゃうなぁ。・・・・・」
少し青い顔で、瀬戸は駅名標を見やった。駅名標は「青春だな」と言いたげに、いつもより青く光っている。




