第一旅 住道->金蔵寺の旅 6幕
私の「好き」は、はっきりと伝えた。はずだけれど、結局、先輩の答えはよくわからないままだった。
いや、そうじゃない。わからないままにしておきたくて、はぐらかしてしまった。
でも、先輩の腕にしばらく体を埋めていたおかげで、随分と気持ちは落ち着いた気がする。
やっぱりもう、いいんじゃないか。こうして、先輩と一緒に旅さえできるのなら、それだけで。
そんな考えが沸いてきてしまう。何もかも有耶無耶のまま、先輩の腕の中にずっといられたらいいのに。
でも、多分それはいけないことなんだろう。
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播磨から備前へ、兵庫から岡山へ。列車は、県境を越えて西へと走っていく。また一駅。
「瀬戸です。先輩」
「ん? そりゃ、お前は矢立瀬戸だけど、どうした?」
「そういうんじゃなくて、ほら、もう瀬戸駅ですよ」
「あ、そうか、そういえば」
「私の駅です!」
私は得意げに胸を張ってみせる。
「私物化するんじゃありません。矢立さん」
「いいじゃないですか。あそこに立ってる128キロポストくんとかも、みんなわたしのもの」
「違います」
それにしても、と私は思う。周囲はけっこう山がちな地形になのに、ここはなぜ「瀬戸」なんていう駅名なんだろうか。
そんな疑問を頭の片隅に浮かべているうちにも、さらに列車は進む。走る山陽本線は、別れた新幹線とふたたび出会い、やがて、岡山の市街地が近付いてきた。




