プロローグ 放出(はなてん)→住道(すみのどう)
高架の上の住道駅のホームから、始発電車が出発してしまう音が響いた。先輩はいない。
3つ隣の駅から歩いてきたのに、無駄だったのかな。ヒロさんは、今日から先輩、例のきっぷで旅行するつもりなんだ、なんて言ってたのに。自然と首が下を向く。うつむいて、ペデストリアンデッキの床の、汚れたコンクリートタイルの目地を見つめたりしてしまう。
ここで始発を捕まえれば、先輩にきっと会えるって、そう思ってたのになぁ・・・。なんだか、力が抜けて膝が崩れそうだ。
諦めに、涙がこぼれそうになった瞬間、ふと足音が聞こえる。はっと顔をあげてきっぷ売り場の券売機の方を見ると、見慣れた後ろ姿が居た。先輩だ。なあんだ、始発に乗る予定じゃなかったんだ。ほっとしたぁ。嬉しさで思わず別の涙が出そうになった。
行こう。駆け寄ろう。そして好きですと伝えて、ぜんぶ告白しなきゃ。
先輩は応えてくれるだろうか。それとも、それはもうかなわない事だろうか。
柔らかに拒絶されるだけの私が、見えるような気もする。告白などしないで、ずっとこのままの関係でいるべきなのかもしれない。いやいや、そんなんじゃダメだってば。私。
先輩が券売機を操作し始めた。迷っている時間なんてない。あのきっぷを買って、先輩はもうどこかへいってしまう。とにかくいかなきゃ。
私は、先輩の背中に向かって駆け出した。




