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第49話 予兆

「はぁ〜」


 集落の外れ、焚き火を囲みながらマーガレットは深いため息をついていた。


 あたりはすっかり暗くなり、住民たちはあらかた手当てを終え、各々のテントやある程度無事な家屋で休んでいた。

 

 ベルゼ及び、カラミナ、テュテュは話し合いが終わった後用事があるからと言って集落を出ていた。

 


「お疲れ〜。マーガレット? 大丈夫?」


「あー、まあね。

 なんだか大きな課題ができたこと以外は……」


 ベルゼが出した条件。

 それは「悪辣の十将」の1人を倒すこと。


 その相手は……。

綺語(きご)の勇者 花綵茉莉」


「まさかここで十将と戦うことになるなんて……」


「まあ、ウチたちすでに二回も接敵しちゃったわけだし? いつかはこうなると思ってたじゃん?」


「だとしても! 流石に早すぎる! 魔王との協力は一旦保留になっちゃったし、サンクティアの問題も解決してない! こんな時に十将も相手するなんて……」


 はぁー、っと心底困ったようにマーガレットは深いため息をつく。


「あーあ。よくないモードに入っちゃってるわね……。

 ねぇ楓? あなたからもなんか言ってあげてよ」


 マーガレットを切り替えさせるため、ミルルは楓に話を振る。

 

 しかし、楓は俯いたまま何も答えない。


「ちょっと楓?」


「……」


「楓ったら!」


「わぁ! え? な、何?」


「ちょっとどうしたの? いつもならこういう話色めきだって聞くくせに」


「あー。ごめん、ちょっと考え事してて聞いてなかった……」


 笑って誤魔化そうとする楓。

 しかし、その表情はどこか歪だった。


 そんな様子に違和感を感じたマーガレットは顔を覗き込む。


「ねぇ、楓? 本当に大丈夫?

 もしかして、傷がまだ治ってないとか?」


「いやいや! ほんと! 全然大したことないから!

 私ちょっと散歩に行ってくるね!」


 そう言って楓はまるで逃げるようにその場を離れる。


「……どうしたのかしら……」


「……なんか落ち込んでるみたいね?

 どうしたんだろう……」


 あの楓が落ち込んでいる

 その事実にマーガレットは驚く。


「楓……」


「……なんか声かけてあげたら? こういう時こそあなたの出番でしょ?」


「……え? 私は……」


 と、否定の言葉を口にしそうになったが、改めて自分の役割を思い出す。


 楓はマーガレットの大事な相棒。これから先の戦いで頼りになる存在。

 そして自分は召喚士として彼女のサポートをすることが仕事。彼女のメンタルが不調ということなら、自分が気にかけなければならない。


 ただ、いったいなんと声をかければいいのだろう。

 普段は楓の明るさに助けられている。だからこそいざ励まそうとなるとどんな言葉が必要なのかわからない。


「……そうだね、何か言ってあげたいな……」


「そうそう、あの子を支えてあげなくっちゃ!

 ()()として」


「そうね……っては!?」


 一瞬聞き流しそうになったが、流石に無視できない言葉が耳を抜け、マーガレットは顔を真っ赤にしながら聞き返してしまう。


「だ……だれがなんだって!?」

 

「え? あなたたち付き合ってるのよね?」


「はぁあああ!!!????

 どこからどうしてそうなったわけ!?」


「え……? いや、今までめっちゃ仲良いし、ウチと会う前からてっきり……」


「いやいやいやいやいや! 違うから!

 た……確かに、私は楓のことを信頼してるし? それなりに一緒にいるけど……けど! 戦闘バカだし!? 結構常識無いし!? なんか時々逞しいし……子供相手に優しいところとかちょっとかっこいいかなって思うけど……けど! 全然! まったく! そんな恋愛感情とか無いからぁ!」


 後半は罵倒していると見せかけて、褒めている。


 そのことにニヤニヤしながらミルルは見つめる。



「な……なによぉお! その顔!」


「いやぁー? べーつにぃー?」


「と、とにかく!今はそっとしてあげましょう!

 どうしても立ち直れないのなら、私が、相棒! として、相談に乗ります!」


 マーガレットはぶっきらぼうに、視線を逸らし、話を打ち切る。

 ミルルはその様子につまんないと思いつつ、これはこれでいいかとそれ以上の追及は勘弁した。

 

 そんな2人の元に。


「ミルルお姉ちゃん! マーガレットお姉ちゃん!」


 元気な声でナギが駆け寄ってきた。


「ナギ! どうしたの?」


「うん! おじいちゃんがね! ミルルお姉ちゃんに会いたいって!」


「え? ウチ?」


 なんだかよくわからないという風のミルルをよそにナギは袖を引っ張る。


「あー。わかったわかった。じゃあマーガレット、ウチちょっと行ってくる」


「うん。いってらっしゃい」


 気づけば1人になってしまったマーガレット。


 ゆらゆらと揺れる焚き火の炎を見つめながら、これからのことについて思い浮かべ、再びため息をつく。


「はぁ……。どうしようかなぁ」


「……お困りですか?」


 突然、マーガレットの背後から声が聞こえる。


 驚き振り返ると、夜の光の中に溶け込み、佇む男が1人。


「だ……だれ!?」


「……初めまして、マーガレット・シンフォニーさん。

 私は「悪辣の十将」の1人、「妄語(もうご)の勇者 朽野虚」です……」

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