第48話 条件
「ほんとうに……ほんとーに! 申し訳ない!」
魔王を名乗る少年は私たちに頭を下げていた。
ここは集落の中心の大広場。
ジルコアは死に、メイデはどこかに消えた。
残りの聖騎士も片付けて、火災も治ったため、ここを一時的な避難所にした。
怪我を負ったもの、家族と逸れてしまったもの、
……もう死んでしまったもの。
それら全員をここに集めて状況を把握することとしたが、魔王が出てきたおかげで迅速に避難は完了し、一旦落ち着いた。
そこで改めて、マーガレット、楓、ミルルは、ベルゼ、そしてカラミナと話し合うこととした。
「ごめんなさい。カラミナはちょっと話を聞かないところがあって……直情気味というか……考えなしというか……。
本当に申し訳ない!」
すごく腰が低い。彼が魔王だとはとても信じられない。
その言動も、容姿も。
そして何より……、
カラミナの膝の上ですっぽりと治って、頭に彼女の巨大な胸を乗せて座っている姿に威厳も何もあったものではない。
「あー。襲ってきたことは気にしてない……。
というかむしろ……めちゃくちゃでかいお姉さんのおっぱいに押しつぶされそうな子供が魔王って事実が気になってしょうがない」
「……これは気にしないでください……カラミナは僕を離してくれないんです……」
「何を言う。ベルゼはこんなに可愛いのだぞ。
我がこうして抱きしめていないと可愛さのあまり霧散してしまうかもしれん……」
「しないよ!?
魔王舐めんなぁああ!!!」
必死に抗議しようとジタバタ腕を動かすが、彼女の太い腕に抱きしめられ全く身動きができていない。
これが現魔王の姿とは、とても信じられない。
「あー。まあとりあえずいろいろと聞きたいことが……。
カラミナ……さん? あなたは何者なの? どう見たってベルゼよりこっちの方が魔王っぽいけど?」
その質問に対し若干涙目になったベルゼがハッとして、質問に答え始めた。
「あ……そうですね。
じゃあなんでこうなったかの経緯を話しましょう
まず、前提としてあなたたちは僕たち魔王のことをどこまで理解してますか?」
突然の質問に、楓、およびミルルは同時に真ん中に座るマーガレットに目を向ける。
知識については完全に丸投げの視線だ。
「あぁ、はいはい。
えっとー。魔王は私たち人類より遥か昔から存在して、魔物と呼ばれる生物を束ねて人類を支配していた。
けど、人類の抵抗によって討伐できて、以降不定期で復活を繰り返してその度に人類の脅威になり続けた。
でも、最後に復活したのがだいたい30年前。
あなたがその魔王って言うなら……今までで1番スパンの短い復活ってことになるわね」
「ええ。その通り! あなたすごく博識ですね!
では、なぜ僕ら魔王が復活にそこまで必要かわかります?」
「それは……ん?」
マーガレットは推し黙る。
今までなんの疑問もなく、復活の周期を受け入れていたが、そもそもなぜ時間がかかるのかそれはわかっていない。
「なんで……なんだろう……」
「ふふ。それは、魔力を貯める必要があるからです」
ベルゼが言うには、魔王は死に魂だけの状態になった後肉体を再生成するために充分な魔力を貯める。
そして、そのまま100年以上燻り続け、世界を支配するだけの魔力と肉体が作られるとのこと。
「なるほど……ん? じゃあ、今のあなたは……」
「そう。僕が最後に討伐されたのが30年前。
本来こんなことありえないのですが……なぜか未成熟の状態でこの世に顕現してしまいました」
だからこんな少年のような容姿なのか。
「このままではまずいと考えた。これでは魔王領の統治もままならないですし……。
前回勇者に煮え湯を飲まされたばかり。万全な状態で相手をしたかった。
だから僕は裏技を使うことにしました」
「裏技?」
「ええ。魔王が顕現する方法ですが、魔王顕現の魔法陣があるんです。それは世界中にあり、僕たちはそのどこかから復活できる」
「あ……なるほど……だから魔王は色んな場所で発見されるんだ……。
でも、そんな魔法陣発見されたことないけど?」
「それは、あなたたち人間に見られないように隠蔽の魔術が組み込まれているからです。
そしてここ魔王領、もとい魔王城にも同じものがあります。
最初のひとつです。
これらは勇者召喚の魔法陣とよく酷似している。
なので僕はこれで勇者を召喚しようと考えた」
「え? まって……じゃあ……」
「そう。カラミナは僕の呼び出した勇者。
こことは違う異世界、世界全てをその強大な力で支配した魔王。
私はこう名付けた。「魔王の勇者 カラミナ」と」
まさに異端、まさにイレギュラー。
魔王を倒すために存在しているはずの勇者が、魔王とは。
「僕としても初めての試みでしたので半信半疑でしたが……。
結果は大成功。
召喚した僕や、魔法陣の特性からそれにゆかりのあるものが召喚されたんでしょう」
「さぁ! 僕たちの話はこれでおしまいです!
次はあなたたちの話です」
「わ……私たち……?」
それを聞いて、混乱するマーガレットの頭がはっきりした。
「はい。そして何かお礼がしたい。
あなたたちは私の領土の住民だけではなく、私の大切な友人、テュフォンも助けてくれましたからね」
マーガレットは少し考え、そして意を決して発言する。
「それじゃあ改めて……魔王ベルゼ。私たちはあなたたちと協力関係を結びたくて来ました。
私たちが相手にしようとしているのはサンクティア。
……でも現状、彼らと真正面からやり合うのは絶望的。
だから力を貸して欲しい。私たちと協力して奴らを倒す!
あなたたちだってサンクティアは脅威のはずでしょ?」
その発言を聞いて、ベルゼは腕を組みしばらく考え込む。
「うーん。
お礼をすると言った手前申し訳ないのですが……お断りします」
「……理由を聞いても……?」
「単純です。あなたたちと私たちは釣り合っていません。
それはあなたたち自身が十分に理解しているでしょう?」
「そう……ですね……」
「あ……落ち込まないでください。あなたたちの提案事態は気に入っています。
ですが、協力関係は相手と対等でなければ成立しません。このままでは一方的な従属になります」
「ですので、力を示してください」
「……示す?」
「はい。「悪辣の十将」、その1人を倒してください」




