第42話 2人の来訪者
集落に火の手が上がり、悲鳴や怒号が響き渡る。
聖騎士とマーガレットたちの戦闘が始まろうとする中。
その外。この騒ぎに誘われるものたちがいた。
1人は……魔王領の外から。
「……さてと。昴の野郎の情報だと、シンフォニーは魔王領に入ったっていう話だが……。
例の生意気な勇者がいるってのは……どこかな?」
燃えるような赤髪と、小柄ながら筋骨隆々としたその体格。
「悪辣の十将」の中で最も好戦的な武闘派の勇者。
「貪欲の勇者」本多景晴
彼が魔王領に降り立った。
「お? あっちの方騒がしいな。 よし、とりあえずあそこいってみっか!」
もう1人は魔王領の奥地。誰も足を踏み入れない谷底の最深部。
そこに静かに聳え立つ巨大な城。
漆黒に染まるその姿は深淵の闇に溶け込んでいるようだった。
そんな城に1人……否、1匹の魔物が入城する。
「テュー! テュー!」
マーガレットたちに助けられた後、姿を消した魔物、テュテュ。
厳かな扉を括り、大広間まで必死に鳴き声を上げる。
その声に奥の暗闇から軽快な足音が聞こえてくる。
「テュフォン! 今までどこに行ってたんですか!? 心配したんですよ!」
銀髪の髪に、頭に2本のツノが生えた少年。
身につけている服装は軍服のような厳かなものだが、その愛らしい面立ちと声色によってどこか愛らしく見える。
「テュー! テュー!」
テュテュは少年を見るや否や、袖にかみつき必死に引っ張る。
「ど……どうしたんですかいったい……」
「……騒がしいな」
テュテュと少年のやりとりに誘われ、城の奥から声が聞こえてくる。
腰のあたりまで伸びた黒髪。頭部に生えた山羊のような大きな角。
美しいドレスが、2メートル以上ある体格の凹凸の激しい体のボディラインと、引き締まった体を強調し、佇まいには気品さと優美さを放っている女性。
「カラミナ……。テュフォンが何かを伝えたいようで」
「テュテュー!」
その女性の姿を見るや否やテュテュは女性の胸に飛び込む。
女性もテュテュを豊かな胸と手のひらで優しく抱き寄せる。
「どうした……? テュフォン?」
「テュー! テュテュ!」
目に涙を浮かべ鳴き声をあげるテュテュに、女性は頷きながら答える。
「……なるほど……侵入者が……わかった……」
それだけ答えると、女性はテュテュを空中に離し、
指を鳴らす。
すると、黒い光に包まれた女性の服装がみるみるうちに変化していく。
ドレスは黒い鎧に変化し、肩からマントを身に纏っている。
そしてその手には、自分の身の丈と同じくらいの巨大な大剣が握られている。
彼女はそれを肩に担ぎ外へ歩き始める。
「ま……待ってください! 僕も行きます!」
「……おまえはここにいろ。 こういう荒事は我が行く。この魔王カラミナがな……」
それだけ言い残し、玄関の扉を勢いよく開け放ち、地面を思いっきり蹴り跳躍する。
ひと蹴りで数十メートルはあろう谷底の外に飛び出し、あっという間にその姿は見えなくなってしまった。
「あ……! まったく……辛抱がない人だ……」
「テュー! テュー!」
「ん? 何? ……え? 助けてくれた人間がいる?」




