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第41話 虐殺

 魔王領、とある集落。


「魔王領に住む家畜どもよ! 我が名は聖騎士団3番隊隊長、「激痛の勇者 メイデ」!

 本日は貴様らに尋ねることがあってきた心して聞け!」


 突然現れ、偉そうな物言いをする女に集落に住む魔物たちはざわつき始める。


「せ……聖騎士様……!? なぜこのようなところにわざわざ……」


 メイデに最初に声をかけたのはこの集落でも年長者と思われるツノの生えた魔物の老人。


「ま……まさか……。連れ去られた我らの家族に……()()に何かあったのですか!」


「まあ、待ちなさい。質問するのはこっちだし、何より聞きたいこともその大事な大事な家族の行方についてよ。


 先日、私の部下がマーガレット・シンフォニー、及びその一味に襲撃されたわ。

 で、今私たちはその行方を追ってるってわけ。


 何か知ってることはあるかしら?」


「に……逃げ出した……!? ……いえ……私どもは行方など知らず……」


「……そう。


 じゃあ死んで」


 突然メイデはレイピアから紫のエネルギーを射出。


 禍々しいエネルギーは一瞬で老人の体に染み込んでいき、そのまま老人はその場でのたうち回る。


「ぐぎゃあああ!!! なぜ……なぜこのような……!?」


「うるさいわねぇ。私が求めてるのはただ一言、

「知っている」

 それだけよ。後の言葉は私への侮辱と思いなさい」


「そ……そんな……」


 狼狽する老人の髪を容赦なく掴み取り、ぐっとメイデは顔を近づけ再度問いただす。


「もう一度言うわよ? シンフォニー一向、及び捕まってた家畜ども。

 それはどこへ行ったの?」


「し……知りません……本当に……知らないんです……!」


「あっそ。じゃあもう用はないわ」


 再び打ち込まれるエネルギー。

 老人はなす術なく、しばらく途絶え苦しんだのち、気絶した。


 周囲の人々はその凄惨な光景に動けないでいた。


「わかったかしら? これが私に逆らった者の末路よ。これから、この集落にいる全員に今のと同じ質問をする。

 知らないと答えたら一発、嘘をついても一発、逃げようとしても一発、私のギフトを打ち込む。それが嫌なら肯定だけ述べなさい。

 理解した?」


 狂っている。


 そう頭によぎった魔物たちは蜘蛛の子を散らすように一目散ににげだした。


「はぁ……やれやれ。話の通じない家畜だこと」


「どうされますか?」


「いいわ。鬼ごっこと行きましょう。

 逃げ出した魔物は全員私の前に連れてきて。

 獲物が生きてたら何しても良いわ。家に火を放とうが、四肢をもごうがね」


 その日、ひとつの集落が火と、血飛沫で包まれた。

 




 

 

「この銃すごい! こんな機構見たことない!」


 集落に戻る道中、

 ナギはミルルから手渡された魔銃を食い入るように見ている。


「へぇ。あなた、魔道具に詳しいの?」


「うん! おじいちゃんが魔道具の専門家だから私も作れるよ!」


「そうなんだ! じゃあ私の他の作品も見て欲しいな!」


 ミルルとナギ。2人が楽しそうに会話している。


 元々ミルルはこういう小さい子の扱いに慣れているし、魔道具を愛するものとしてどこか通じ合うところがあるのかもしれない。


 すっかりナギはマーガレットたちと打ち解けていた。


「うん! もう少しすると私たちの集落が……え……?」


 ナギの言葉が途中で止まる。

 彼女の見つめる地平線の先に違和感を覚えたからだ。


「あれ……なに……?」


 ナギの指す方角、


 赤黒い雲に覆われた空が、光に照らされている。


 それは炎の光だった。


「あれ……私たちの集落……!」


「……急ごう……」


 嫌な予感を感じたマーガレットは急いで先へ進む。






「あらぁー? 随分と遅かったじゃない?」


 集落の入り口、そこに待ち構えていたのは、大量の死体の山の上で座り込むメイデの姿。


 あたり一面に血飛沫が飛び散り、家屋は全て燃えている。


「待ってたわよー。シンフォニー御一行様。

 それじゃあ、この惨状について一言貰おうかしら?」


「あんた……メイデ……! これはどういうことよ!」


 マーガレットが怒鳴り散らすのをメイデは小馬鹿にしたように肩をすくめる。


「どうもこうも、あんたらを誘き寄せるためにこんなことしたに決まってんじゃない!

 ここまで派手にやれば、あんたらだって無視できないでしょ?」


「はぁ? 私たちを……誘き寄せる……?

 馬鹿げてる! その人たちは関係ないでしょ!?」


「関係あるわよ。私たちの労働源を逃したのはあんたらなんだから」


「この人たちに会ったのはほんの1日前! そんな人たちの家族を傷つけて私たちが来る確率なんて普通考えてないでしょ!?」


 マーガレットの言動にメイデは心底うんざりしたように舌打ちをする。


「うるさいわねぇ!

 いい!? これは全部あんたたちのせいなの! あんたらがこの家畜共を逃すなんてことしなければ、私はこの村を襲わなかったし、人死も出なかった!

 だから! あんたらが! 全部! 悪いんだよ!」


 あまりの暴論にマーガレットは言葉を失う。


 そんなマーガレットと変わるように今度はナギが前に出る。


「おじいちゃん! 私のおじいちゃんはどうしたのよ!」


「はぁ? あんた誰よ……」


「ナ……ナギ……」


「おじいちゃん!」


 積み上がるしたいの1番上、ちょうどメイデが座り込んでいる場所に、ナギの名前を呼ぶ長老の姿があった。


 体に目立った外傷はないはずなのに、生気をまるで感じない。

 


「あーこいつ? 最初に殺そうとしたんだけど思ってたよりしぶとくてねぇ。

 ちょうどいいわ。ならここで殺してあげる」


 そう言ってメイデは頭を掴み取り、こめかみにレイピアを突きつける。


「あ゙がぁ゙あ゙あ゙あ゙!!!」


「やめてぇええ!!!!」


 こだまする長老の絶叫と、メイデの高笑い、ナギの悲鳴。




 それら全てを吹っ切るように楓がメイデに向かって突っ込み、高笑いを上げるメイデに向かって一撃を加える。


「流石に殺していいよな? マーガレット?」


 楓からの突然の攻撃にメイデは面食らうものの、瞬時に防ぎ後方へ飛び退く。


「ちっ! なに? 正義の味方のつもり? ほんっと、虫唾が走るわ!」


 楓とメイデ。


 2人の勇者の視線がかち合う。


「……ぶっ殺してやる」


「……上等よ……やってみなさいよ!」

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