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第40話 応援

「よし! これで全員の治療終わり!」


 マーガレットはその場にいた奴隷たちを全員治療した。


 みんなひどい状態で外傷を放置され、傷口から細菌に感染してる者もいた。


 それに加えてこの過重労働。息絶える者が多いのも納得だった。


「ありがとうお姉さん!」


 さっき聖騎士に鞭で叩かれていた女の子も元気を取り戻す。


「私はナギ! お姉さんたちお名前は?」


「私はマーガレット。こっちの強そんなのは楓、こっちの猫耳なのがミルルよ」


「ちょっと! ウチらの紹介なんが雑じゃない!?」


 やいのやいのと文句を言うミルルにナギは楽しそうに笑う。


「ふふっ! お姉さんたち面白い!」


「……ねぇ、ナギ、あいつら何者? なんで貴方たちにこんなことを?」


 その問いかけに、笑顔だったナギの表情は曇る。


「わ……わかんない……私たちはこの先の集落で暮らしてたんだけど突然あいつらがやってきて私たちを攫ったの……」


「攫ったって……魔物を……?」


 魔物は基本的に人間より強靭な肉体を持つ。

 その上気性も荒く、知能も低い。

 人に懐柔されることはない。


 それを攫って何の利益があるのかと、マーガレットは疑問を抱く。


 そこに、身の丈3メートルはあろうかと言うオークの男が話しかけてくる。


「おらたちは魔物の中でも弱い種族の集まりだ。そう言う奴らは魔王領の外に出ず、弱い魔物同士で集落を作って暮らしてるんだ。それをあいつらは無理やり押しかけて、ここで働かせたんだ……」


 彼の言う通り、ここにいる人々は魔物というには穏やかで、言葉も通じる。


 見た目こそ違えどまるで人間のようだ。


「……ここで何をされてたの?」


「ここにゃ金鉱脈があってな。それをおらたちで掘り出してたんだ」


 つまり奴らは魔王領に住む魔物たちが無力かつ知性を持つと知り、貴重な労働源として拉致した。


 ここは魔王領。人間にとってほとんど未開拓の未知の場所。そこに目をつけてこっそりと利益を得ていたのだ。


「随分とふざけた真似するじゃない。聖騎士ってそんな守銭奴の集まりだったかしら?」

 

 楓が苛立ちを隠せず毒を吐く。


「……いや、あの団長がそんなこと許すはずない……。聖騎士団の方針に反して、自分の懐を蓄えようとする奴……。

 こんなことをするのはあの女……ソフィアしかいないわね」


「……ソフィア……」


 ミルルはその名前に顔を顰める。


 自分の父を殺したとされる女の一味がこの場所を占拠していた。当然心中は穏やかではないだろう。


「……聖騎士は気になるところだけど……今はひとまず魔王城に行くことが優先ね。

 ねえナギ、魔王城の場所ってわかる?」


「魔王城? ああ! 魔王様のお家のことね! 知ってるよ!」


「ほんと? じゃあ、貴方たちを集落まで送ってあげるから、魔王城に案内してくれない?」


「うん! わかった! 傷を治してくれたお礼!」


 そう言ってマーガレットたちは囚われた魔物たちとまず集落に向かうこととなった。




 


 ソフィアからの連絡後、ジルコアたちは魔王領の外のエリアで待機していた。


 応援として来るものを迎えるために。

 

「お……お待ちしておりました……。メイデ様……、ウォーカー様……」


「ええ」


「……どうも」


 ソフィアがよこした応援、それは「激痛の勇者 メイデ」、「黒牙の勇者 ウォーカー・ブラウン」だった。


「ジルコアー、随分とやられたようね?」


「も……申し訳ございません……」


「ふぅ。まあいいわ。ソフィア様がひとまず許したと言うなら私も許します。

 じゃあ早速、奴隷にしていた魔物共の集落に案内してくれる?」


「え……集落? 採掘場ではなく?」


「ええそうよ。奴隷共が逆らったらどうするか。

 人質として確保したそいつらの家族を見せしめに殺すことでしょ?」


「お……お待ちください! メイデ様!」


「な! おいよせ!」


 メイデの言葉に異議を唱えたのは、ジルコアと共に逃げてきた聖騎士の1人だ。


 ジルコアは彼を止めようとするが、それを聞かず抗議を述べ始める。

 

「彼らは基本的に従順です。

 真に排除するべきなのは乱入してきたマーガレットで……」


「"人の身をつねって人の痛さを(シュメルツ)知れ"」


 突然、レイピアを抜き、聖騎士の1人に向ける。


 その剣先からは濃い紫色の球体のようなエネルギーの塊を生成。

 ジルコアの体に向かって飛び、肉体に染み込む。


 その瞬間……。



「あぐぎゃああああ!!!!!」



 この世のものとは思えない断末魔をあげてその場でのたうち回る。何が起きているのかわからず、周囲の聖騎士はただ混乱するばかり。


 唯一の冷静なのは能力を使ったメイデと、能力の詳細を知るウォーカーだけだった。



「ピーピーうるさいのよ。私がやるって言ったらやるの。口答えする奴は……!」


 再びレイピアを振るい、再び球体を聖騎士に飛ばす。



「あ゙があ゙あ゙あ゙あ゙!!!! あ゙……」


 再び上がる絶叫はしばらくして止んだ。


 涙と鼻水を垂れ流しながら、苦痛の表情を浮かべ聖騎士はこときれていた。

 


「全員処刑。他にこうなりたい奴はいるかしら?」


 全員青ざめた表情で首を横に振る。


 しかし、それでも臆せずウォーカーは意を唱える。


「なぁよ。メイデ殿? 俺たちの最優先事項は金鉱山の安定運用だったよな? もちろん、シンフォニー撃破は俺たちの任務に元々含まれてなかったが、この状況なら、そっちを倒すのが1番早いんじゃねえか?」


 その意見にメイデは鬱陶しそうにため息をつく。


「いちいちうるさいわね。私だってそのくらいわかってるわ。

 けど、ソフィア様はこうおっしゃった。

 

 ――任務遂行はできるだけ派手にやりなさい。


 ってね。シンフォニーを捕まえて、金鉱山を制圧するのは簡単。

 けどそれじゃ派手さが足りないわ。だったら、奴隷の家族を皆殺しにして、シンフォニー共を誘き寄せる。

 その方がわざわざ探さなくていいし。

 何より……」


 メイデは残忍に笑う。


「私たちの支配から勝手に抜け出して、勝手に夢見てるあの魔物(かちく)共に痛い目にを見せたいからね」


 あまりに傲慢で非道な言葉。


 ウォーカーは話にならないと、これ以上意見を述べることを諦めた。


「あっそ……。じゃご勝手に。

 こっちはこっちの仕事をやるだけだ」


「……ソフィア様の命令って言うんなら、別行動も許してあげるけど、アーサーの監視はちゃっとやってるんでしょうね?

 そっちもソフィア様からの命令。どちらも完璧にこなしてこそ、あの人の下に着く資格があるってものよ」


 その理不尽な物言いには腹が立つが、この女と口論しても時間の無駄だと悟り、適当に流す。


「ご心配なく。あの2人には()()()1人付けてる。

 何か妙な動きがあればすぐに報告が来るよ」


 

「あっそ……。じゃあいいわ。

 私は私のやるべきことをやる。絶対に、私の足は引っ張らないでね」


 そう言って残った聖騎士を連れて魔物たちの集落へ足を運ぶ。


「……派手にやる……ねぇ……」


 ウォーカーはここに来る前、ソフィアの言葉を思い出していた。


 ――いい? メイデちゃんには、できるだけ目立つような行動をしろって言ってあるわ。

 あの子は私に心酔してるから、これ以上ないくらいに、派手に立ち回る。


 貴方はその隙に()()()()を果たしなさい


「激痛の勇者 メイデ」。傲慢で非人道的な彼女。

 その末路をウォーカーは想像し哀れに思いつつ、目的の場所へ歩みを進める。


「さて……こちらはこちらで仕事を始めますかねぇ」

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