幕間 いざ! 魔王領!
「ほんっとうに! お世話になりました!」
マーガレットは深々と村長に頭を下げる。
村に滞在して3日間、ずっと意識混濁で幼児退行していたマーガレット。申し訳なさと恥ずかしさで居た堪れなくなっていた。
「いやいや、気にせんでください! ミルルさんや楓がよく働いてくださいましたから。
……ところであんたたちは魔王領に行くのかい……?」
「ええ。私たちの旅の目的のひとつなので」
「……そうかい。訳は……まあ聞かんでおくよ。
だが、気おつけていくんじゃぞ。あそこは得体がしれん……」
「魔物が出るってことですか?」
「……いや、魔物の被害は実際のところここ最近極端に少ないんじゃ。以前は村にも魔物が襲撃することも多かったが、最近はぱったりと姿を見せん。不気味なほどに。
そして、そんな魔物がいなくなった魔王領に足を踏み入れて、生きて帰ってきたものは……いない……」
「……それでも、私たちは行かないと」
そのまっすぐな言葉に、村長は静かに目を閉じマーガレットの覚悟の重さを理解する。
「……そうですか……。では止めることはできませんな。
では、フォルトゥナ様のご加護があらんことを……」
「ん? フォルトゥナ様?」
「わしらが信仰する幸運を司る神様の名前ですじゃ。ほら。あそこに石像もあります」
そう言って指を刺すのは村の中心。
高さ2メートルはあろうかという巨大な石の彫像。
慈愛に満ちた表情を浮かべ、巨大な翼を広げるその姿はとても神々しいものを感じる。
「へぇー。あれ、そういう謂れの神様だったんだー」
「……あんた、この村で働いてたんなら少しは興味もちなさいよ」
「私信仰とか興味ないしー」
「はぁ……。フォルトゥナ神はこの世界唯一の神様。ほとんどの人が彼の女神を信仰してる。
聖騎士団も、あの神様を信仰しているわ」
最も、神にすら唾を吐きかけるような連中の集まりにどこまで信仰心があるのか考えものだが。
「……ミコトとかは違うの?」
「ああいう外から来た神様は基本的に信仰対象にはならないわ。
フォルトゥナ神の戒律で、他の神を信仰してはいけないって教えもあるし」
「きっとフォルトゥナ神があなた方の旅路に幸福を与えてくださるでしょう」
その言葉を最後に、3人は村長と別れた。
「……あの村長、ウチたちがその神を信仰してる聖騎士と争ってるって知ったらどんな顔するかしらねぇ」
ニヤニヤと答えるミルルに対し、2人は苦笑いする。
「さて! いよいよ魔王領よ! こっから先は神様なんかに頼ってられないわ!
自分たちの力で、自分たちの知恵で乗り切るの! 準備はいい?」
「「ええ!」」
こうして3人はいよいよ魔王領に足を踏み入れる。
そこは人類の生活圏の外に存在する未開域。
魔物の王が君臨する人外たちの領地。
そこにいるのは魔王か、怪物か、それとも……。




