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第36話 円卓会議を始めよう その2

 「ところで後の2人はどこに行っちゃったのかしら?」


 ソフィアは席に着きながら尋ねる。


 後の2人、とは三芒星の最後の2人だ。

 

 2人ともこの円卓会議に真面目に出席するのは珍しい。今回も無断欠席か。そう思われていたが……。


「お、遅れてしまって申し訳ないです!」


 可愛らしい声色と共に扉が勢いよく開く。


 そこから現れたのは10歳程度の少年。


 金髪の髪と赤い瞳が特徴的。眉を顰めた困り顔が愛らしい美少年だ。


 しかし、その美しい容姿は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「あれ? 皆さんもう着いてたんですね!? ちょっと用事を済ませて来てて遅れてしまいましたー!」


 申し訳なさそうに頭をペコペコと下げて謝っているがどこか歪さを感じる。


「……カコ……、血生臭いわよ。

 シャワーくらい済ませてから来なさいよ」


 ソフィアがその姿を見て明らかに不快感を露わにする。


「えー。遅れそうだから急いで来たんですよー。

 あ! それより見てくださいこれ!」


 そう言ってカコと呼ばれる少年は持っていた麻袋を円卓の上に置く。


 ゴトンっと音を立てて置かれたその袋からは赤黒い血が滴り落ちている。


「今朝仕留めて来た()()()()です!」


 カコは恐ろしいことを笑顔で平然と語る。


「三芒星」は個々人がすでに、一軍隊並みの戦力を持つためきほんてきに部隊を持たず、1人で任務をこなす。


 カコもまた1人自由に動き回り王国から依頼された討伐対象を狩ることを主な仕事をしている。


 しかし、その仕事ぶりはあまりに凄惨。


 獲物を痛ぶるだけ痛ぶり、力尽きて生き絶えた死体の首を切断し持ち帰る。


 それが残虐非道で通る、

「三芒星」の1人、「精斧の勇者 カコ・マレフィス」のやり方だった。


「合計六つ! 綺麗な生首ですよ! 特にこっち頭領の男は傑作な死に様で……!」


「おい……」


 嬉々として語るカコの言葉をソフィアが遮る。


 そして、

 先程まで手ぶらだったはずのソフィアの手のひらに突然拳銃が出現。


 ()()()()()()()()()()()()


 カコの頭部は上半分、鼻から上が吹き飛ばされる。


「いい加減にしてよ。こんなところにこんな汚いもの持って来てどういう神経してんの?」


 麻袋から染み出している血が円卓に少しづつ広がり、ソフィアの前まで血が流れていく。


 その光景が不快さにソフィアの我慢が限界を迎えた。

 


 一瞬の出来事で誰も止めることはできなかった。


 顔の上部が消失し、とても生きているとは思えない。

 


「ええ? ソフィアさんこわーい。

 せっかくみんなに見せようと持って来たのにー。

 あんまり怒ると、綺麗なお顔が台無しですよー」


 だがなんと顔の上半分を消失したにも関わらず、カコは流暢に話し始める。


 そしてみるみるうちに無くなった上部が形成されていき、最終的に何事もなかったかのように、カコの頭は綺麗な状態で元通りになっていた。


「その態度にその死なない体……前から癪に触ると思ってたのよねー」


 ソフィアは右腕を前に突き出す。その手にはいつのまにか拳銃が握られていた。


「いったい何発撃ち込んだら死ぬのかしらねぇ! ()()()()()!」


 それに応えるようにカコは不気味な笑みを浮かべて構えを取る。

 

 両手のひらに2本、それは眩い光を放つ金の斧と、銀の斧。


「精斧の勇者 カコ・マレフィス」と呼ばれる所以の武器である。


「いいですねぇ! その綺麗な顔、醜く老ける前に切り落としてあげますよ!」


 聖騎士の最高戦力たる「三芒星」の戦い。


 神聖なる円卓の場でそんな暴挙は許されない。


「やめろ! 2人とも!」


 アーサー、及びサハラはそんな2人の暴挙を止めに入ろうとする。


 メイデも戦闘に加わろうとするがあくまでソフィア側の加勢としての参戦。


 アルト及びバルは我関せずと、ただただ面白そうにその場を眺め、ウォーカーは巻き込まれないようにそーっと部屋の隅に逃げる。


 聖騎士達の殺し合いが始まろうとしていた。


 



「止めないか! 愚か者ども!」


 だが、その殺し合いは一つの怒声によって止められた。


 全員一斉に怒声の方へ目を向ける。


 その者は他の勇者が入出した方とは別の、北側にある扉から入出して来た。


 白銀の鎧を見に纏い、翡翠色に輝く長い髪。格好は大人びているものの、その顔立ちにはまだ幼さが残る女性。


「サンクティア王国」を守護する聖騎士団、その次に君臨する勇者。


「名槍の勇者 薄氷(うすらい)」。


「まったく! ソフィア並びにカコ! 貴様らは「三芒星」としての自覚が無いのか!」


 ガミガミと罵倒を述べる彼女に対して、2人はうんざりしたように、武器をしまう。


「あー。ごめんなさいね。何分副団長様と違って私たちは教養がない者で」


「ごめんなさーい。静かにしまーす」


 口だけの謝罪を述べて2人は席に着く。


「貴様ら……。副団長たる私にその言い草……!

 だいたい()()はどうした! 「三芒星」の1人が足りないではないか!」


 薄氷が言う海原とは「三芒星」最後の1人。


 カコが入室して以来誰も入って来てないない。


 しかし、


「何言ってるの? 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう言ってソフィアは自分の対面の席を指さす。


 そこは先程まで空席だった。


 にもかかわらず、今は誰かが座っている。


 真っ青なコートを羽織り、フードを深くかぶっていて顔がよく見えない。


 唯一目を引くのはそのフードからはみ出しているのは黒いガスマスク。


 こんな目立つ格好のものが今の今までそこにいたことに気づかなかった。


「おひさー。海原」


「……さっさと済ませろこんなくだらない会議……」


「大海の勇者 海原水陰(うなばらみかげ)

「三芒星」の最後の1人だ。


 副団長は突然現れた海原に面食らう。


「い……いつからそこに……」


「あれぇ? 気づかなかった? 副団長様ともあろうお方が、そんな気配もきづかないんですかぁ?」


「止めましょうよ! ソフィアさん! 副団長様が可哀想ですよ!」


 ソフィア並びにカコは副団長を煽る。


「……調子に乗るなよ! 「三芒星」共!」


 薄氷は怒りのまま、腕を天井に向けて掲げる。


 さっきまで何もなかった手のひらに光が集まり、少しづつ形を成していく。


 それは美しい槍。


 宝石などのわかりやすい装飾はあしらわれていないものの、光に照らされ青く輝くその姿はまるで水面に張った氷のような美しさだ。


「そこになおれ! 切り捨ててやる!」


 怒りを露わにした表情のまま、槍を向ける。


 対して「三芒星」はやれやれと言ったら表情で嘲笑う。


 本日3度目の一触即発。


 聖騎士団隊長などといっても、彼らは生前わがままの限りに生き抜いた無法者たちの集まり。


 その中でも特に我のついよ者たちが集まればこうなることは必然だった。



 その時、


 


「騒がしいな……」


 


 再び、奥の扉から声が響く。


 その声を聞いた瞬間。この場にいるもの全員が萎縮する。副団長の時と違い、「三芒星」全員も身を強張らせる。


 純白の鎧と兜を見に纏い、紺碧に染まるマントを身に付ける。

 精悍な顔立ちをしていて、黄金に輝く瞳と髪色、雪のように白い肌はまるで彫刻のように美しい。


 彼女こそ、曲者揃いの聖騎士団を束ねる聖騎士団長にして、「サンクティア王国」現国王。

「正義の勇者 プロテア・クラウディアス」


「き、騎士団長様……!」


「副団長……、貴様はもう少し辛抱というものを覚えろ……」


「も……申し訳ございません……」


 副団長は跪き平伏する。


「それはそうと……」


 聖騎士団長は円卓の上の麻袋を指す。


「あれはなんだ?」


「騎士団長様! それは僕が持って来た罪人の首です! 陛下にも見ていただきたく持ってまいりました! どうですか? どれも綺麗な……」


 カコの言葉が最後まで言い終わることはなかった。


 何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 カコは後方の壁にあっという間に吹き飛ばされそのまま磔になる。


「ぐがぁ……!」


「ここは神聖なる円卓の間だ……。そんな場所にかようなものを持ってくるとは……。貴様、少々度がすぎるぞ「精斧の勇者」……」


「も……申し訳……ごふっ! ございません……」


 肺が潰れてうまく喋ることができない。カコはくぐもった声でなんとか謝罪の言葉を口にする。


「……今すぐ片付けろ……。血の一滴も余すことなく綺麗に拭き取れ」


 その言葉と共に巨大な剣は綺麗に消失。磔にされたカコの体は解放され、床に転がり落ちる。


「はぁ……はぁ……。はい……かしこまり……ました……」


 右腕で抑えた大きく開いた傷口は頭が吹き飛んだ時と同じように少しづつ修復されていく。


 しかし先程と違い、その表情には先ほどの余裕の表情はなく、ただただ平伏の色しか浮かべていなかった。


 それはこの場にいる勇者全員がそうだ。


 何者にも縛られず、前世ではわがままに生きた勇者たち。


 その無法者たちを力と権威で従える存在。


 それこそが聖騎士団長である。


「これで全員揃ったな……。

 それでは円卓会議を始めよう」

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