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第10話 誰が殺した

「……2人とも。下がってて……」


「すごいですねえ。ここにいるものは皆腕に自信があったもの達ばかりなのですが……。「プロテシアンシーフ ミルル・シャーロット」。実力は本物ということですねぇ」


 オズワルドはあたりを見渡した後、ミルルの方に視線を移す。


 「あら。知ってるのね。」


「ええ。「パルマ」では有名人ですから。どうですか? 私専属のボディーガードになると言うのは? あなたでしたら、護衛以外のことも期待できそうだ……」


 オズワルドはミルルの体を足元から、腹部、胸、顔と舐めるように見つめる。


 その視線にミルルは鳥肌が立つ。


「冗談。あんたみたいなクズに誰が雇われてやるかっての!」


 銃口を向け、オズワルドに狙いを定める。


「出力調整! レベル6に上昇!」


 最大威力の弾丸、銃口から大砲のような大きさで射出。

 

 続けざまに二発、高速でオズワルドに突っ込んでいく。

 

 至近距離からの最大威力、避けることは不可能と思われた。


 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 後方の壁に被弾した弾丸は大きな穴を開けそのまま外に飛んでいく。


「はあ!?」


 予想外の事態にミルルは驚きの声を上げる。


 対してオズワルドは腕を組みながらため息をつく。


「はぁ。残念です。あなたなら私に相応しいと思ったのに」


 オズワルドは着ているタキシードの襟を直し、髪型を整える。

 

 余裕の姿勢が崩れない。


「な……なんで!? あんたのギフトは精神操作系の力でしょ!?」


 そう、オズワルドのギフト"血の契約(ディアセーケー)"は相手の精神を操ることはできても、肉体強化や攻撃のギフトではないため、ミルルの弾丸を避けることは不可能のはずだ。


「おや。ちゃんと下調べはされているようですね。しかし、勉強不足です。私のギフトは精神操作の力ですが、その本質は()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 突然、オズワルドの体から奇妙な音が鳴り始める。

 筋肉が急激に振動するようなくぐもった音。


 それと同時に、オズワルドの肌が赤みがかり、全身から蒸気が発生し始める。

 

 「この血液を自由に操れるからこそ相手を洗脳できる。そしてそれを応用することで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。こんなふうにね!」


 オズワルドが地面を蹴り、ミルルの目の前に移動。

 

 2人の距離はおよそ4メートルほど離れていたが、それを一瞬で飛び越える。


 一瞬の出来事に対応できないミルルにの腹部に、オズワルドはボディーブローをかます。


「うごっ……!」


 短い嗚咽と共に、響き渡る内臓が潰れる鈍い音。


 ミルルはそのまま後方に吹き飛ばされる。

 

 「「ミルルお姉ちゃん!」」


 「どうですか? 人類には決して到達できない身体能力でしょ? 」



 なんとか意識を保っているミルルは腹部を抑えうずくまることしかできない。


 その様子を見てオズワルドは冷たく笑う。


「無様ですねぇ。素直に私のオファーに応じていればいいものを……。おや?」


 ふと、オズワルドは地面に視線を向ける。


 そこにはミルルが首から下げていたロケットが落ちていた。


 さっきの衝撃でチェーンが切れ首から落ちてしまったのだ。


「や……やめろ……! 触るな……!」


 ミルルの静止の声も虚しく、オズワルドはロケットに手を伸ばす。


 そして蓋を開き中身を確認する。


「な……に……?」

 

 突然さっきまでの余裕の表情が一変。

 目を見開いて驚愕の表情を浮かべる。


 オズワルドはそのまましばらく静止。

 そしてみるみるうちに……。


「ふ……ふはははははは!!! そうだったんですか! あなた、()()()()()殿()()()だったんですねぇ!?」


 大口を開け、右手で目元を抑えながら大笑いする。


「な……何がおかしい……! 父は立派な()()()だった! あんたと違って!」


「ええ。よーく知っていますよ。ウィリアム・アンドレ。「空絶の勇者」。あなたのように相手から何かを盗むことと、剣術が得意な勇者でしたよ。……そう! そうですシャーロット! 納得ですね! ()()()()()()()()()()()! 彼の妻の本名だ!」


 


 ウィリアム・アンドレ、ダイアナ・シャーロット。

 

 ミルルの実の両親でありどちらもすでに他界している。


 父親のウィリアムは勇者であり、ミルルがまだ5歳の頃遠征に向かった先で魔物との戦闘で命を落とした。


 その後母親の旧姓であるシャーロットを名乗り暮らしていたが、その母も10歳の時に他界。

 

 そこから4年間身寄りもないミルルは盗賊稼業に落ち、以後ずっと一人で暮らしていた。


 



「やめろ! 父さんと母さんの名前をお前が口にするな! お前が何を知っているっていうのよ!」


「当然でしょう。彼を殺したのは()()()()()

 

「……は?」


 ミルルはその言葉にしばらく硬直する。

 

 彼は一体何を言っているのか、しばらく理解ができなかった。

 

「いや……。正確に言えば彼の殺しに協力しただけで私が直接手を下したわけではないんですがね」


「嘘だ……、嘘だ! 父さんが……そんな……。お前なんかに……」


 ミルルは必死に否定する。

 

 受け入れたくないその真実に目から涙をボロボロとこぼし、地面の砂を強く握りしめる。


 そんな姿をオズワルドはゴミを見るような蔑んだ瞳で嘲笑うように笑顔を浮かべる。

 

「残念ながらそれが真実です。あなたの父親は聖騎士に殺されたんですよ」


「黙れ! 教えなさいよ……! なんで……、誰が父さんを殺した!」


「それをあなたに教える必要がありますか?これから死ぬ人に」


 そう言ってオズワルドは懐から拳銃を取り出す。

 

 この世界で主流の魔力で弾を飛ばすものではない。

 

 彼が生前生きていた時代で使われていた火薬で弾を飛ばすタイプの拳銃だ。


「いいでしょ? これ。知り合いにもらったものなんです。どうも私は魔銃が肌に合わなくてね。やはりこちらがいい」


 そう言ってウィリアムは銃をミルルの方に向ける。


「さようなら。ウィリアム殿の娘」


「ちくしょぉおおおお!!!」


 悲しい慟哭があたりにこだまする。

 

 しかし、どれだけ叫ぼうとも体はいうことを聞かず最後の時を受け入れるしかなかった。


 オズワルドがゆっくりと引き金を引く……。



()()()!!」



 だが次の瞬間。

 

 閉鎖されていたドアが勢いよく吹き飛ぶ。

 

 ドアはちょうど対角線上にいたオズワルド目掛けてドア板が飛んできた。


「ぬぐぁあああ!!」


 勝利を確信し、油断していたオズワルドには反応できず、情けない声を上げながらそのまま吹き飛ばしていく。


 一体何が起こっているのか? ミルルは飛んできたドアの方を見た。


 そこには……。


「どーもー。お邪魔しますよ? 勇者様」


 かつて「マルカナ」でカモにしようとした2人。

 

 大それた計画を立て、それを恐れず口にする。

 

 東雲楓と、マーガレット・シンフォニーの姿がそこにはあった。

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