第9話 救出劇
「ごめん! 遅くなった!」
「ミルルお姉ちゃん!」
倉庫の天井付近の窓を蹴り破り、両手に拳銃型の魔道具を握りしめてミルルは颯爽と登場する。
その姿を見たカナは歓喜の声を漏らす。
(3、4、5……。敵の数は5人。そして魔物が1匹)
ミルルは瞬時に状況を把握、敵を倒す優先順位を決める。
まず最初に狙いを定めたのはカナとハンスの前に立っている魔物だ。
着地を決め、魔物に照準を合わせる。
魔物もまた二人から突然現れた侵入者に標的を変更する。
「出力調整。 レベル5に上昇」
その言葉と共にミルルは発砲。
正確に頭部に命中する。
本来、弾丸一発では魔物の硬い頭蓋骨を貫通することはできない。
しかし、ミルルの弾は頭蓋骨を貫通し、即死させた。
「な……なんなんだこいつ!」
焦った細身の男が、魔術を放とうとする。
周囲の男たちも同じく武器を取り攻撃の体制に入る。
「出力調整……。 レベル3に低下」
しかしミルルは瞬時に対応。
男たちが攻撃を仕掛けるより早く、その眉間に向かって弾丸を一発喰らわせる。
魔物に放った時とは違い、弾が頭蓋骨を貫通することはなかったがその衝撃は脳を激しく揺らす。
男たち次々とはその場に力無く倒れる。
「よし……。調整は完璧ね」
ミルルの扱っている銃は一般的に流通している、火薬の代わりに魔力を込めることで弾丸を放つ魔道具、「魔銃」を改造したもの。
名前を「WM25」、「DM27」。
その特徴のひとつは発射される弾丸の威力調整。
この世界の銃も弾丸は鉛を素材としたものを使用し、込める弾丸によって銃の威力や貫通力が決まる。
しかしミルルの魔銃は弾を魔力で代用させる改造を施した。
これにより弾丸の大きさと威力をその場で調整することが可能となる。
レベル調整は1から6。調整次第で敵を無傷で制圧することも、一撃で粉砕することもできる。
「2人とも! 大丈夫!」
「ミルルお姉ちゃん! ハンスが……!」
ミルルはカナとハンスに駆け寄ろうとするが、二人の様子を見て硬直する。
カナは顔を涙でぐしゃぐしゃにし、ハンスに至ってはお腹を抑えてうずくまるばかり。
「おい! 調子乗ってんじゃねえぞクソガキがぁああ!」
そんな様子のミルルの後ろから大柄の男が怒声を上げながら近づいてくる。
その声に二人は体を震わせる。
ミルルは理解した。
2人のこの様子に、だれが二人をこんな目に合わせたのか。
「お前が……やったのか……!」
ミルルは振り返り、二丁の銃を同時に向ける。
その声には有らんばかりの憎しみと怒りが込められていた。
「出力調整! レベル2に低下!」
ミルルは銃弾を乱射。
しかし、男は何発喰らおうとも倒れない。
当然だ。
レベル3でも人の体に傷をつけることはできない。
それがレベル2ともなれば人を殺傷することは不可能。
だが、ミルルの魔銃にはもうひとつ特殊な性能が施されている。
通常の魔銃は、現代で使われる銃と同様一定の弾丸を打てば弾切れを起こす。
その都度リロードを行い、弾の補充をしなくてはならない。
しかし、ミルルの銃は弾丸が魔力で作られる。
つまり使用者の魔力が尽きない限り、弾切れを起こすことがなくなったと言うこと。
「ぎゃああああ!!!!」
男は悲痛な叫び声を上げる。
一発一発の威力が弱くとも高速で、しかも止むことのない無限の弾丸が永遠に降り注ぐとなればそれは想像を絶する拷問となる。
威力が弱い分ひとおもいに気絶することもできない。
ミルルはこの永遠の痛みを味合わせるべくあえて威力を抑えた。
「ふぅ……」
ミルルがようやく引き金を引くことをやめ、一息つく。
すでに男は涙を流しながら白目を剥き、失禁して気絶している。
痛みが頂点に達して意識がなくなったのだろう。
男はそのまま頭から倒れ込む。
「すっげぇ……」
「ミルルお姉ちゃんすごい!」
その姿を見た2人は賞賛し、安堵の表情を見せる。
だがミルルの表情にはまだ安堵の色は見えない。
むしろ、より緊張感が増しているようにも見える。
そう。まだ彼がいるからだ。
「いやー見事見事。凄まじい強さですね」
さらにミルルを賞賛する声と拍手が聞こえる。
オズワルド・クロード。
常人とは一線を画す勇者の一人。
ミルルはオズワルドに向き直り改めて銃を構え直す。
最大の敵を倒すために。




