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サードガールシリーズ

学園一のモテ男のサードガールと噂されてますが、知り合いですらありません!

作者: 白波美夜

初投稿です。よろしくお願いします!

リリィは今日も噂の的だった。「学園一のモテ男、レオンのサードガールになったらしい」という根も葉もない噂が、学園中を駆け巡っている。誰もがレオンに憧れを抱く中、リリィはというと、彼とは一言も交わしたことがない。


「サードガールなんて、どうして私なのよ……」リリィは深いため息をつきながら呟いた。


友人たちもこの噂を耳にして、リリィへの態度を決めかねているようだ。特にファーストガールとは微妙な関係になっている。

今までは、レオンの女、と言われていたのはファーストガールのエリカとセカンドガールのマリア。

エリカは華のある雰囲気で立ち振る舞いも上品。学園でも一目置かれる存在で、レオンの幼なじみである。リリィとはクラスメイトなものの、リリィがエリカに萎縮してしまい、いわゆる「クラスメイト」止まりだ。

マリアはその明るく快活な性格により、エリカともリリィとも仲が良く、男女問わずみんなに愛される人気者だ。


リリィのサードガールの噂の影響で、エリカは最近、少し様子がおかしく、感情的な振る舞いが見られるようになった。マリアは相変わらず朗らかで、レオンとリリィの関係を気にしている素振りはなく、むしろエリカのメンタル面を気にしていた。


ある日、エリカが突然、リリィに話しかけてきた。


「リリィ……あなた、本当にレオンと何かあるの?」


リリィは驚いて目を見開いた。「え?全然ないよ!どうしてそんなこと聞くの?」


「だって、レオン……あなたのこと、気にしてるみたいだし……。最近、様子が変なのよ。昔から彼を知ってる私が言うんだから間違いないわ」


リリィはエリカの鋭い視線にたじろぎつつも、冷静に否定した。「本当に何もないんだよ、エリカ。私はレオンとは一言も話したことがないし、興味もない」


エリカは不安げな表情を浮かべながらも、「そう……」と呟き、どこか信じ切れないような雰囲気を残した。リリィはそんなエリカを見て、心の奥で妙な親近感を抱いた。エリカもまた、自分と同じようにこの噂に翻弄されているようだった。


そのやり取りを偶然目撃していたマリアが、にこやかに二人に近づいてきた。「お二人さん、何の話?」


エリカがやや不機嫌そうに顔を背けると、マリアはその態度に少し驚いたようだったが、すぐに状況を察し、リリィに視線を向けた。「リリィ、大丈夫?最近、噂がちょっと行き過ぎてるから、もし困ってたら言ってね」


リリィは小さく頷き返し、こんな噂が流れても普段通りに接してくれるマリアに感謝した。噂のせいで距離ができそうな友人関係が、マリアのおかげでかろうじて保たれていることが、ありがたかった...


それから数日が過ぎ、リリィとエリカは以前よりも少しずつ話をするようになった。エリカの厳格な雰囲気は変わらず、たまに鋭い目線や心無い言葉をうけることもあったが、それ以上に様々な場面でリリィに気遣いを見せてくれ、その優しさがエリカの本質なのだと感じられた。


ある日、リリィはエリカと二人で校庭を歩いていた。


「リリィ、あなたにこんなこと言うのはズルいかもしれない。でも私……レオンのことが好きなの」


リリィは少し驚いたが、すぐに微笑んだ。

「うん、わかってたよ」

エリカは少し照れたように頬を赤らめながら続けた。「知っていたのね?でも、幼なじみとしてずっと傍にいるだけで、それ以上の関係にはなれないと思っていたの。それに、今の噂もあって、あなたに取られてしまうんじゃないかって、不安だった」


リリィは少し驚きながらも、真剣にエリカの話を聞いていた。そして、エリカが長年、気持ちを秘めていたことに心を打たれた。エリカはリリィと正直に話すことで、その胸の内を少しでも軽くしたかったのだ。


リリィはやわらかい声で言った。「エリカ、もし良ければ、私がサポートするよ。エリカとレオンがちゃんと気持ちを伝え合えるように」


「えっ、いいの?」エリカは目を丸くした。


「もちろん!私たち、私のサードガールの噂をきっかけに話すようになったし...エリカはそう思ってないかもしれないけど...でも私は、エリカのこと友達だって思ってる!それに、こんな噂に振り回されるのはもう懲り懲りだからさ」リリィは明るく笑った。


エリカはその言葉に胸打たれ、涙を流した。「ありがとう、リリィ……あなたは私の大切な友人よ...今まで嫉妬して辛い態度を取ることもあってごめんなさい...」


リリィの協力のもと、エリカは少しずつレオンと自然な形で話せるようになった。リリィはレオンとの接触を避けながらも、さりげなくエリカの背中を押し、二人が近づく機会を作っていた。


やがて、放課後の教室でエリカがレオンに自分の気持ちを伝える日がやってきた。リリィとマリアは教室の外でエリカを見守りながら、そっとエールを送った。


「エリカがうまくいくといいね」とリリィが呟くと、マリアはにっこりと笑って頷いた。「大丈夫、エリカは強い子だから」


その後、エリカは緊張しながらもレオンに想いを伝え、レオンもエリカの告白に対して応えてくれた。二人が互いの気持ちを確かめ合ったことで、ようやくエリカは長年の想いに決着をつけることができた。


リリィとマリアは、エリカの報告を聞いて一緒に喜んだ。


「本当に、リリィがいなかったらこんな展開にならなかったかもね」とマリアが感謝の気持ちを込めてリリィに微笑むと、リリィは照れくさそうに笑った。


「私も、エリカと友達になれてよかった。マリアも色々ありがとう、これからもよろしくね!」



その様子を陰から見ていたレオンの元に、少ししてマリアが静かに歩み寄った。彼女はレオンをじっと見つめてから、ため息をつくように言った。


「ねえ、レオン。あなたが、噂を流したんじゃないの?」


レオンはその問いにふっと口元を緩め、どこか影のある笑みを浮かべた。「ああ、気づいてたんだ。まあ、エリカがちっとも自分から動かないんじゃ、こっちは立場上気持ち伝えられないし、手を貸してやるしかないと思ってさ」


「それにしても、噂にリリィまで巻き込む必要があった?」とマリアが少し苛立ち気味に問うと、レオンは肩をすくめ、飄々とした口調で返した。


「エリカが嫉妬する相手として、丁度いい子がいたからね。それに、リリィなら適度にかわしてくれると思ってたし、二人の仲も深まっただろう?」


レオンの言葉には、少しも悪びれた様子がなかった。むしろ、すべてを計算済みで楽しんでいるかのような余裕が漂っている。


マリアは普段の明るい言動から一変、軽蔑した目でレオンを見つめた。「私、あなたのそういう、人は自分の思い通りになって当然って考え大っ嫌い。でも、今回はエリカが幸せそうだから、許してあげる」


レオンは満足そうにエリカの方を見つめ、冷静かつ淡々とした口調で応じた。「マリア、エリカの友人であり続けたいなら、これからもエリカに他の男がつかないよう目を光らせておいてね。でないと、オレ、どうなるかわかんないよ?」


その言葉の裏にある独占欲を感じ取ったマリアは、寒気がしたが、愛する友人たちのもとへ走って行った。

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