君は私の運命だから
かつて見た彼女の顔を思い出すが今よりも幼い可愛らしい顔で、傷もアザもなかったはずだ。先程の式の最中に見惚れた顔にもそんなもの無かった。
「アザなどないだろう」
「嘘です!皆そう言いますが、鏡を見る事は許してくれないのです。きっと受けるショックが大きいと思うほどの醜い顔をしているのだわ!」
「自分の顔を見た事がないのか?」
嘘だろと思いながら尋ねると、顔を隠したままこくりと頷いた。
「そんな訳ないだろ?屋敷に鏡は無いのか?」
「私の見える範囲にはけっして置かれません」
聞けば家族の部屋にはあるが咄嗟にシルヴィアが部屋に入っても姿が映らないように閉ざされているらしい。戸が取り付けられ鍵まで掛かっている徹底ぶり。食卓のシルバーも木製の物を使用していて姿は映らないし、窓も彼女の背丈では届かない高い位置にしか無く姿はこれにも映らない。
「何故それ程まで?」
「ですから、わたくしが醜いから」
「それは違う!」
自分の姿を見た事がないなら仕方がないが、こんなにも美しい彼女が自分を醜いと思っているのが気の毒だった。それに、例え彼女の容姿が優れていなくても関係なく惚れた自信はある。確かに一目惚れではあったが、彼女と一緒にいたいという衝動がとにかく抑えられなかったのだ。自分にとって無くしてはいけない、命と言ってもいいほどに彼女を求める事がやめられない。
「君は美しいよ。でもそうじゃなくても、君が好きだよ」
「…」
「好きになるのに皆ちゃんと理由やきっかけを言うけど、僕はどんな時にどんな君を見てもきっと惹かれたと思う。初めて君を見た時、君に逢うために生まれたんだって思った」
恥ずかしいけど、気持ちはちゃんと言わなくちゃ駄目なんだ。シルヴィアが苦しんでるのなら一緒に苦しみ、嬉しい時には一緒に心から笑いたいから。
「シルヴィアが同じくらい僕を想ってなくてもいい。でも、君を笑顔にするのは僕じゃきゃ嫌だ。でも、顔が見えなきゃそれも出来ない。僕が君の一番じゃなくてもいいから、どうか顔を見せてくれないかな?」
最後は少し不安な気持ちがあったけど、私の気持ちを正直に伝えた。