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彼女の兄の言葉は良く響き重みが違う


 立ち止まる私に殿下?と不思議そうにリューイは声を掛けていた。


「シルヴィアは相手が私でいいのだろうか?」


 グレイ夫妻はシルヴィアが私を嫌ってなどはないと言ってくれたが実際のところは分からない。シルヴィアに会って今度こそ明確な拒絶を受けたらと思うと怖かった。


「殿下、それは本人に会って直接聞いてやって下さい」

「拒絶されるかもしれない。シルヴィアは私について屋敷では何か言ってなかったか」


 これまでも城にリューイが来ている時には何度もシルヴィアについての話をせがんだ。そんな時リューイは彼女の生活の様子は聞かせてくれても肝心の俺に対する気持ちに関してははぐらかし教えてくれた事はなかった。照れて直接的な質問を出来なかったせいと思っていたが、気を遣って言えなかったのだと今なら考えられる。


「両親はシルヴィアの様子についてなにも言いませんでしたか?」


 リューイは私の質問に別の質問で返す。やはりシルヴィアの本心を言いづらいのだ。


「婚約は喜んでいたと。今日に向けて励んでいたが自信をなくしてついには逃げたと言われた」

「シルヴィアが殿下を嫌がっているなんて言ってないのに、なぜ殿下が自信を無くしているのです?」

「それは、、。誰も本人に向けて嫌われているぞなどと言わないだろう」


 ふっ、とため息のように軽い息遣いが聞こえると、リューイは私の前に来て汚れるのも気にせず片膝を着くと姿勢を低くして私に視線を合わせた。


「人の言葉をそのまま鵜呑みにしないのは王太子として必要な事です。そう言う癖がついてしまっているのは仕方ないでしょう。ですから、きちんとその者と会話する事が大事なのです。私が今、シルヴィアの気持ちをお伝えしても殿下は信じないでしょう?それでいて嫌っていますなんて言われれば今の自信を無くしてる殿下は簡単に信じてしまうのでは?本当のシルヴィアの言葉かも分からないのに」


 グレイ夫妻に言われた嫌われてなどないと言う言葉もどんどん疑ってしまった自分が、リューイからも同じ様に言われても結局は疑ったろう。でもきっと、嫌われていると言われればシルヴィアの本心を彼女から聞く事無くそれを信じて逃げてしまう気がする。


「人は聞かずに済む辛い話に耳を塞ぎたくなるものです。今のシルヴィアもそうなのです。私達家族が何を言っても信じられず逃げています。ですが、そうしてしまった事にいつか必ず後悔する時が来ます。直接聞いてみれば良かったと」


 リューイの表情は少し辛そうに見えた。でもいつも通りの優しい表情にも見えて何も言えなかった。


「シルヴィアを見つけてやって下さい。そして話を聴いて、殿下も素直なお気持ちを伝えてやって下さい。二人は将来夫婦になるのですから、話もせずに相手の思いを推察し決めつけないで」


 リューイには敵わない。こんな格好良い大人の男になりたいといつも思う。


 優しく目を細めるリューイに私はしっかりと頷いた。リューイも満足そうに頷くとよし!と言って立ち上がる。




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